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「どうしてまたお父さんのお金の使い方に興味を持ったりしたの? もしかして、事件の後に怖い人達がお家に来たりした?」
おばあちゃんは私とお兄ちゃんを心配そうに交互に見て、そう訊いてきた。
紛れもない誤解だけど、孫がいきなり実の父親のお金の使い方について尋ねてきたら、きっと誰でもおばあちゃんと同じような反応をするだろう。
私はおばあちゃんを安心させようと、慌てて言った。
「違うの! そういうことじゃなくて、お父さんがお母さんに隠れて女の人に会ってた理由って何なのかなって思って。ごめんね、変なこと訊いて」
私の言葉に、おばあちゃんはほっとした様子で瞳を笑ませた。
「いいのよ。他に何か訊きたいことはある?」
「じゃあ、お父さんって、女友達とお母さんの誕生日プレゼントを買いに行ったりするようなタイプだった?」
「女友達ねえ……お父さんは昔から奥手で、初めて家に連れて来た女の人がお母さんだったし、女の子の友達はいなかったんじゃないかしら? だからお父さんが事件の時に余所の女の人といたって聞いた時には、あんまりらしくなくて、びっくりしたのよ。状況としては不倫にしか見えないけど、でもあのお父さんがそんなことをするなんて思えなかったし……」
おばあちゃんの話を聞く限り、女の人の扱いがあまり上手くなさそうなお父さんが、簡単に余所の女の人を引っ掛けられるとは考え難い。
お父さんとあの『毛倡妓』が親しかった可能性は低そうだし、知り合い程度の浅い関係だったのかも知れなかった。
本当に只の知り合いだったとしたら、どうしてお父さんがわざわざ時間を作って会う気になったのか、とても不思議だけれど。
私がいつの間にか止まっていた手を再び動かし始めると、お兄ちゃんがダンボールの中を漁りながらおばあちゃんに問いかけた。
「そう言えばさ、警察はあの女の人がどこの誰か知ってるの?」
「多分ね。私達も気になって、捜査の進捗状況を尋ねがてら訊いてみたことがあるんだけど、『教えられない』って言われたわ。事件に関わることは話せないそうだし、個人情報だしね」




