―70―
きちんと正座をすると、携帯電話を充電器から外して手に取る。
黒い二つ折りの携帯電話は長く使われていたみたいで、所々塗装が剥げてプラスチックが剥き出しになっていた。
私が使っているスマートフォンの三〜四倍くらいは分厚くて重いし、かなり使い難そうだけど、これでも発売された時には最先端の機種だったなんて、ジェネレーションギャップを感じずにはいられない。
携帯電話を開いた私は、早速電話やメールの履歴を開こうとしたけど、スマートフォンと携帯電話は操作方法が違うから、なかなか履歴の出し方がわからなかった。
適当にボタンをあれこれ押していると、お兄ちゃんが携帯電話を覗き込んでくる。
「ちょっと貸して」
お兄ちゃんは私から携帯電話を取り上げると、特に悩む素振りもなく操作し始めた。
「何か慣れてるね。ケータイ使ってたことあるの?」
私がそう言うと、お兄ちゃんは軽く首を横に振った。
「別に持たせてもらってた訳じゃねえよ。オモチャ代わりにいろいろ弄ってたから」
「ああ、それで」
私が納得したところで、お兄ちゃんは電話の通話履歴を開いた小さなディスプレイを私に見せてきた。
その一番上に書かれていた名前は「結城一穂」。
女の人みたいだし、お父さんが事件の時一緒にいたのはきっとこの人だろう。
十年も経っているから、携帯電話の番号も変わっているかも知れないけど、もし同じ番号を使い続けてくれていたら、簡単にお父さんとの関係を確かめられる。
そうじゃなくても、この中にはお父さんの友達や知り合いの連絡先が一通り入っている筈だし、これは役に立ちそうだった。




