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私はビルの中のお店というお店を見て回ったけど、やっぱり同じ物はなくて、ショッピングモールにも足を伸ばしてみたものの、結果は空振りだった。
インターネットショッピングでなら、同じ傘を見付けられるかも知れないけど、あのお兄さんは外国人だったし、もしかしたら外国のお店で買った物かも知れない。
まだクレジットカードを持っていない高校生が買うのは難しそうな気がしたから、私はショッピングモールのお店の一つで、お兄さんの日傘に一番似ている折り畳みの日傘を買った。
黒地に、デフォルメされた赤い薔薇のワンポイントが描かれている日傘だ。
黒い無地の傘を買おうかとも思ったけど、あのお兄さんのファッションからして、味気ない無地の傘よりは可愛い柄が入っていた方が気に入ってくれそうな気がする。
私は日傘の入った小さなビニール袋を手にショッピングモールを出ると、駅前のビルへ戻ることにした。
図書館で、少し調べたいことがあるのだ。
ショッピングモールから駅隣のビルに行くには、駅を通り抜けるのが一番の近道で、私は真っ直ぐ駅に向かった。
南口の階段を上がると、レンタルビデオ店や改札の横を素通りして歩いて行く。
日曜日だからそれなりに人は多いけど、電車が来た直後でもなければ、真っ直ぐ歩けない程混雑することはなかった。
券売機と駅ビルの入り口に挟まれた通路を歩いて北口に出ると、急に目の前が開ける。
淡い茶色を基調にしたペデストリアンデッキの向こうに、いくつもの高層マンションやビルが見えた。
ペデストリアンデッキは私が目指すビルだけでなく、衣料品や雑貨も扱う大きなスーパーマーケットにも直結していたけど、品揃えがあまり中高生向けではない感じだから、そちらにはあまり足が向かない。
私が向かう駅隣のビルは、出入り口の上にいろいろなテナントの看板が並んでいて、せり出した上階にはこの商業ビルの大きな看板が掛かっていた。
その上は一面ガラス張りになっていて、ビルの向かって左端にあるシースルーエレベーターの部分が丸く膨らんでいる。




