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 私はお兄さんに言った。


「お兄さん、物知りですね。いろいろ勉強になりました。おかげで妖怪とかお化けとかを克服できそうな気がします」

「それは何よりだ」


 瞳の端で少しだけ笑ったお兄さんをやっぱり綺麗だなと思いつつ、私は言う。


「お兄さん、ちょっと変わってますね。妖怪だったら人が怖がってくれた方がいいと思うんですけど……って言うか、本当に妖怪なんですか?」

「ああ。基本的に人間に人でないことを明かすような真似はしないのだがな、この時代のこの国であれば、通りすがりの者に正体を明かしたところで騒ぎになることもないだろう」


 SNSで誰でも世界中に情報を発信できる時代になったとはいえ、そういう物を使っている人で尚且つ妖怪の類を真剣に信じている人なんて、かなりの少数派だろう。


 SNSに「妖怪に会った」なんて書き込みをしたところで、きっと只の冗談だと思われるだけだし、悪くすると正気を疑われかねない。


 確かにこのお兄さんの話はもっともらしかったけど、だからと言って妖怪であることの証明にはならない訳で、やっぱり手放しで信じる気にはなれなかった。


 親切にしてもらったのだから、信じてあげたいとは思うのだけど、信じるというのはどうしてこうも難しいのだろう。

 

 私がほんの少し悲しい気分になっていると、お兄さんはコーヒーの缶を手に立ち上がった。






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