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灰色の境界  作者: 宵時
第四章「……ええ。時を経て、俺は殺人者になった」 「〝英雄(ヒーロー)〟とは言わないのだな」
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4-38 銀の代攻者

 鈍色の刃が小百合の体を走り抜けていく。傷口から鮮血が溢れ、裂かれた勢いで倒れ俺の体にもたれかかる。反射的に受け止めて、触れる手には熱さ。

 肉体の体温を感じ取ったのではなく、止め処なく溢れ出す血の熱さだった。

 小百合を抱き留めたまま、俺は前を見ている。俺ではなく小百合を斬った啓志もまた、何が起こったか理解できないという驚愕の表情で固まっていた。

 が、それも一瞬だけですぐに悪鬼の笑みを取り戻した。

 今まで見たことも、見せるはずもない悪の顔で振り切った凶刃に付着した血糊を払い、両手持ちに握り直す。

「ふっ……くく、おかしな感覚はあったが斬る順番が変わるだけだったな」

「小百合……どう、して」

「どうもこうもない。腑抜けの役立たずを愚か者が(かば)っただけに過ぎない。数秒寿命が延びるだけだというのに……無駄死にだな」

 守りたい、守り切るはずの存在に守られた。

 何故俺を守ったのか、自身を盾にしたのか。

 抱える手が薄い胸板に触れる。

 鮮血を噴出する胸部には、あったものがなくなっていた。

 羞恥も遠慮も振り払って以前見た傷口を探す。黒血を流しては引き戻す、大渦のような傷口はいくら赤い血の海をかき分けても見つからなかった。

「傷……一体、どこ、に」

「とうとう壊れたか。私が斬ってやった痕があるだろうが」

「違う。嘘だ。小百合、こんな傷はなんともないよな? 大丈夫だよな」

「どうしようもなく愚かだな。刃で切り裂かれての大量出血、

医者もいなければ治療器具も薬も、それどころか介抱する時間すら

与えられない。すぐに死ぬさ。そしてお前も後を追うのだよ」

 啓志の吐く言葉が耳から侵入し、脳に染み込まず理解することを拒んで逆側から排出され周囲の歓声に混じって()き消える。小百合の体にあるはずの傷を探し続ける。胸から腹辺りまでまさぐるも、どこにも痕は見つからない。ワンピースが血液を吸い、広がる紅が死へ向かう速度を伝える。

 小百合は言っていた。自分は死ねなかったのだ、と。未成熟に生まれ必要とされなくとも体は維持され成長するにつれて、自分という存在そのものを疑問視し、答えを探し続けていた。

 死にたかったのに、死ねなかった死に損ない。バグやエラーの類だと自称していたが、俺にとってはただ一人、俺という存在を見つけてくれた大切な人だ。

 どれだけ探しても傷どころか突き刺さっていた短剣も見当たらない。

「やれやれ……もう、殺してもいいのか?」

 声に導かれて視線をあげる。刃を手に俺を見下ろす啓志の目は、まるで地に這う虫を見下ろす冷徹さを宿していた。正義でもなんでもなく、殺人者の瞳だ。

 分からない。啓志が、正義に殉じる男が何故真逆の態度を取ったのか。

「ひひっ……くくくく、あははは、あはははははははっ!」

 周囲の歓声を切り裂く哄笑(こうしょう)が響き渡る。

 俺も、啓志も同じように声の方へ視線を向けていた。

 観客席から一心に注目を集める和久が勝者の笑みで出迎える。

 両手を翼のように左右に伸ばし、広げて飛び交う催促の声を受け止めていた。

 目の前で繰り広げられた殺人劇に続く〝何か〟を下卑た観客達は期待している。

「かっ……はははは、最高の面だよ!

そうだ、俺様は絶望色に満ち溢れた顔が見たかったんだよぉっ!」

 叫んで、和久の右手の拳が握られ、見えない壁へ叩きつけるように振られる。

 否、その動作は周りに付き従う黒服への指示だった。リング上での殺人現場を映していた大画面が切り替わり、薄暗い部屋で小型照明が点灯していく。

 美術品をお披露目するようにライトアップされたのは、全身に紋様を彫り込んだ男だった。顔は確認できないが、股の間にある赤黒い肉が男を誇示している。

 椅子に深く腰を沈め、足は軽く開いた状態でやや前屈みの姿勢となっている。

 観客席から口笛が鳴り、(わず)かに悲鳴も混じって誰もが異様さを察知した。

 体に刺青を彫っているのではなく、淡い光に照らされ浮き上がって見えるのは全て傷跡だった。右腕には縦横に走り回る蚯蚓腫れ、左腕は重度の火傷により皮膚が焼け爛れていた。捲れ上がった皮膚に赤黒い塊がこびりついている。

 右足には無数の切り傷、左足には穴が穿(うが)たれ原型を留めていない。

 椅子の周りには光に照らされ暗い赤の水面が見える。波紋を生み出し、二人の黒服が映像に入ってきた。椅子に座ったままの男を手袋に包まれた手で抱え、砂袋を扱うように乱雑に投げる。水音を響かせて男は床に倒れ伏した。手足どころか指先一つ動かす気配を見せない。

 露わになった背中には無数の打撲痕があり、また火傷の痕が散見された。内出血で青黒く変色した箇所と炭化した皮膚から垣間見える薄桃の肉が生々しい。

 黒服が捲れ上がった皮膚を掴み、ゆっくりと剥がしていく。生きていれば悲鳴の一つも聞こえてきそうだが、倒れた男は呻くことさえしない。

「へけっ……ははははははっ。よし、連れて来い!」

 目線を送られ、黒服が走り出す。部屋の一角にある階段を一目散に駆け上がっていく。映像の中からは連続して金属を叩く音が聞こえている。

 俺の目の前に晒されている光景は、どこか離れた別室ではなく、すぐ近くで行われているのだ。どこまでも性根が腐っている。

 和久が俺を見下ろす。

 絶対的な支配者と、蹂躙され這い(つくば)る民の構図だった。

 大画面の中で複数の水をはねさせる音が響く。駆け込み、画面を埋め尽くす黒服達は揃って手袋を()めており、今も動かない男の体を担ぎ上げる。

 再びの鉄板を叩く金属音。画面の中だけでなく、肌を突き刺し全身を震わせる感覚があった。自らに訪れる結末、和久の思惑と向けられる敵意、逆らった者の末路。

 散らばった欠片を拾い集め、繋ぎ合わせれば結果は出る。

 違う。最初から分かっていたはずだ。堀川が理不尽に家族を奪われた時から覚悟していたし、小百合に意志を問われた時にも襲い来る最悪の結末を予感していた。

「ははっ……恐れ(おのの)け、泣き叫べっ!

俺様に逆らった罰を今、ここで下してやるっ!」

 和久がオーケストラを奏で操る指揮者のごとく両手を振るう。

 合図に導かれ、黒服達に運び込まれたモノがリングの上に投げ出された。

 無抵抗に、意識なく転がってく体が既に作られた若い男の遺体にぶつかって止まる。止まったモノが光なき瞳で俺を見ていた。

 俺は、瞳に映り込む自らの泣き出しそうな顔を見つめた。

 唇を噛む。吐き出したい感情を抑え込む。

「まぁ、そういうこった」

 何かが剥がれ落ちる音。

 視界の隅にぐしゃぐしゃになった啓志の顔の皮が舞い落ちた。

 本当の顔は目の前にある。物言わぬ、家族だから通じる瞳だけの意志疎通。

 鼻は削ぎ落とされ、赤黒い断面に鼻腔を晒している。唇は血に濡れ、両端が刃物によって切断され頬を通り耳まで切り裂かれていた。怪談に出る口裂け女のようだった。

 口内に歯は一本も残されておらず、舌も根本から消失している。

 耳も削ぎ落とされている。頭皮が焼け焦げ、白い骨が見えていた。

 破壊されすぎて何一つ面影は残っていない。喉元に空いた穴に突っ込まれた身分証明賞に微塵も笑顔を見せない強張(こわば)った表情の父親が映っていた。

 父親だった遺体から視線をあげると、見知らぬ男が立っていた。

 手には日本刀、服装は豹変した啓志が着ていたもの。

 顔には悪辣な笑みがあった。

「悪いな、と形だけでも言っておこう。これも久音様の命令でな」

「じゃあ、父さんは……」

「見たまま晒したまんまだ。どうにも理解の遅い餓鬼だなぁ」

「ひゃははははっ! 生かすわけねぇだろうがぁっ!

自分だけ特別扱いか? ええオイ。ばっかか、てめーはよぉ!」

 悪罵を吐く和久を見ることはない。俺は見知らぬ男を見ていた。

 映像から音声が流れ出す。啓志の声が聞こえる。

 責め苦に対して屈さず、常倉一派を捕まえると宣言しようとし、激痛に叫ぶ。

 再度の誘いも拒絶し、火に炙られる音が響く。

 掻き消すように嘲笑が鳴り渡り、自らを嘲る音に負けぬよう啓志が大声で叫ぶ。

『何をされようが、どんな条件を出そうが、絶対に負けぬっ!』

 宣言は直後に苦鳴に代わり、また嘲笑に混じって拷問が繰り返される。

 炎に焼かれる痛みに叫び、電気ショックに全身を震わせ、肉体を切り裂かれる凄絶な苦しみに耐える。数々の残虐行為を気張った精神力だけで拮抗させていた。

 やがて叫ぶ声が変化し、意味をなさぬ絶叫へと変わった。この辺りで頬を切り裂かれ、舌を取り除かれ、抜歯されていったのだろう。

 自宅に残されていた(おびただ)しい量の血と、挑戦的な文字から予想できた。

 容赦ない拷問にかけられ、流れ出た血で書き殴った。その張本人は小百合を抱きかかえたままの俺を見て高らかに哄笑を響かせ、全ての元凶たる久音は少し離れた位置で口元を扇子で隠し漏れ出そうな笑いを堪えている。冷徹さを宿した瞳が歪んでいる。

 観客達は喝采し、歓声を響かせ口笛を吹き鳴らす。

 狂い、腐り、異常で異質でどうしようもなく世界は断ち切られていた。

 啓志に化けていた男が、手にした凶器の切っ先を天へ向け狂喜に顔を歪ませる。

「ってなわけで、茶番は終わりだ。真っ二つになれや、小僧っ!」

 小百合の体を切り裂いた刃が迫る。抱きかかえた俺ごと両断しようとしている。

 小百合は言っていた。死を望む体は生かされ、死ぬはずの体は維持されている。

 不死に近い存在である、と。だからこそ自らを盾にしたのだろう。

 斬られても死ぬことはない。

 そうだ。異能があるんだ。人の(ことわり)が通用しない異界において、特異な力こそが条理となる。止まらない鮮血も、見当たらない傷跡も、黒血が命の流出を示す紅なのも相手を油断させるためのフェイク。ここから、反撃が――。

 生命を刈り取る刃に自らが晒される刹那、抱いていたものはただの夢想だった。

「そうだな。くだらん狂宴に幕を引いてやろう」

 異界を破壊する鋭さをもって、冷然とした言葉が響いた。

 重い音が落ちる。死を前にした俺の目の前に紅の光景が広がっていた。

「はっ……なんで、俺の、手が……あきゃ、あきゃきゃきゃきゃぁっ」

 誰ともなく問う男の両腕は肘で肉色と骨の白を晒し、鮮血を吹き出している。溢れ出る血がリングを朱色に染めていく中、男がふらつきバランスを崩す。

 自らが広げた血の海に沈み、奇声をあげながら痛みに悶える。

 何が起きたのか全く分からない。視覚で認知できる事実として、俺を殺すはずだった男の両腕が千切れ飛び、日本刀を握ったままの手がロープに引っかかっていた。歓声が鳴り止み、高笑いしていた和久も硬直している。

 久音の手が素早く扇子を畳み、先端で指し示す。

 俺が、恐らくこの場にいる全員が示される地点へと振り向いた。

 一身に視線を受けた若い女が艶然と笑う。

「なんだ。そんなに注目してくれなくてもいいぞ。

熱い視線を送らずとも、この場にいるゴミは順番に掃除してやる」

「…………何のつもりですか、九龍院 千影」

「貴様の顔の左右についてるそれは飾りか? それとも分かりやすい

言葉で言い直さないと飲み込めないほど理解力が低いのか?」

「そっくりそのまま返しましょうか」

「簡単なことだ。貴様達は(ゆる)されざる領域に踏み込んだ。故に、死ぬ」

 真っ直ぐ久音と対峙する若い女、千影が右手で腰に差した藍色の鞘から獲物を引き抜く。世界に晒された日本刀は全てを吸い込む漆黒を宿し、切っ先が久音へと向けられる。

 刃が刺し貫く先に定められた久音はゆるりとした動作で扇子を拾い、再び広げて口元を隠した。垣間見える瞳には笑み。優位に立つ者が見せる余裕の色合い。

「この場で、その世迷言が何を意味するか、理解しているのかねぇ」

「陳腐な脅し文句だな。時代遅れのごろつき共に相応しい低俗さだが」

「おやりなさいな」

 轟音が響き渡る。射線上にいる観客を無視して、集う黒服達が手にした銃器を操って死をばら撒いていく。悲鳴と怒号が飛び交い、さらに重なる銃撃音で掻き消され、床に落ちた薬莢が不揃いに金属音を奏でていく。

 ただ一人に向けて放たれるにしては過剰な武力だった。

「おやめなさい」

 制止の声によって折り重なる爆音が止んでいく。

 濛々(もうもう)と煙が立ち込め、床には無数の弾痕が刻まれている。巻き添えになった観客が怨嗟の声をあげ、付き人が救いを求める。自ら振りまいた罪過を気にする様子もなく、粛々と黒服達が応対して世界が異常さを取り戻していく。

 歓声があがることはなかった。世界に飽いた観客が求める鉄の臭いは硝煙の中にはなく、また床に命の川が流れ広がることもない。

 晴れていく視界の中で、千影は傷一つなく不敵な笑みを湛えていた。

「そんな、馬鹿な……」

 余裕なき声色で漏らした久音が、連なる構成員全ての心情を代弁していた。

 千影の立つ場所を中心に、一メートルほどが隔絶されたかのように綺麗な姿を保っている。囲むように弾痕が刻まれており、巻き込まれた者達が流した血も千影を避けるように流れを変えていた。

 千影の手が下がり、黒刀を床に突き刺す。

 柄頭に両手を乗せて瞑目し、疲れたように溜息を吐いた。

「それで、終わりか?」

「……総員、弾倉を交換。一斉砲撃」

 命令に従って黒服達が動く。

 今度の巻き添えは御免だと千影の周囲から人々が逃げ出す。

 銃器だけでなく重火器まで持ち出したことで観客席に居座っていた富豪達も退路を探して席を離れ地面を這い蹲る。惑う者達などお構いなしに準備を整えたものが次々と並べられ、砲撃を始める。

 銃の乱射に飛来する砲弾、大挙して押し寄せる死の波を前に千影は黙したまま動かない。爆音が轟き、弾丸の雨が一個人に向けて降り注ぐ。部屋中に火薬と先に流れ出た血臭が満ち溢れ、巻き起こる煙で視界が確保できない。

 それでも、白煙の先には悠然と立つ人影があった。

「無意味だな。そんなもの、いくら撃ち込もうが銀の守りは破れんよ」

 黒い軌跡が生まれる。煙を切り払い、露わになった黒刀は視界を(ひら)くと同時に駆け抜けて次弾を装填しようと動く黒服を切り裂いた。

 黒服の間で閃光が瞬く。断末魔が折り重なり、横に縦に斜めに走る斬閃を追うごとに新たな死体が積み上げられていく。

「うあああああぁぁぁぁっ」「ば、化け物だぁっ」「このっ、このっ!」「馬鹿、こっちは味方が……ぎゃひっ」「な、なんだってんだこいつはよぉっ」「おい、銃じゃあてらんねぇよ!」

 果敢にも立ち向かう者に混じって悲鳴や弱音が混じる。恐怖は伝染していき、一部の黒服は階下の同胞が辿った末路も忘れ、武器を捨てて逃げ出した。

 観客は銃撃や砲弾の余波を浴びて散り散りになり、また負傷して呻いている。

 誰も彼も区別なく千影らしき閃光は逃げ惑う黒服と観客の間を駆け抜けて死体を量産していく。

「何、だというの。私達が何をしたと、」

「何をしたか、だって?」

 震える声で問う久音に、十何人目かを斬った千影が立ち止まった。

 左上方から右下へと黒刀を振り、こびりついた血を飛ばす。何人もの鮮血と脂を削ぎ取ったはずの刃は全てを飲み込む闇を宿している。

 久音を見る千影の赤黒い瞳が不愉快そうに歪む。

「罪状をあげるなら、そうだな。殺人に監禁、違法麻薬の製造及び使用、

恐喝に放火、この調子だと腐れマフィアとの密輸と密売もありそうだな?

賭博はどうでもいいとして、まぁ公開処刑に殺人遊戯は外道の極みだな」

「どの口が……金で飼われた卑しい走狗の分際でっ!

私が聞いてるのは、傭兵の分際で何故今頃叛旗を翻したのかだ!

そこの哀れで愚図で夢想喰らいの餓鬼を救って何になるってんだい?」

「救う? 阿呆が。私はただ見届けただけだ。愚かしき善性の信奉者の戦を、な」

「見届けた、だって?」

 久音が俺を見る。千影も俺を見る。前者の視線には憤怒と憎悪、後者には悲哀と憐憫が乗せられていた。俺を見たまま千影が口を開く。

「そこの小僧は正しいさ。ただ、足りないだけだ。圧倒的にね」

「何が、言いたいのかねぇ……っ!」

「無駄だと言ってるだろう、虚けが」

 久音が応答すると同時、扇子を捨てて着物の裾から取り出した拳銃が火を噴く。

 が、銃弾は千影を捉えることなく、掲げた左手の前で静止していた。

 見えない壁を抉ろうと回転する弾丸が摩り下ろされるように削れていき、自壊して塵となり世界に溶け消えた。

 千影の左手が動き、左側の虚空を叩く。

「咎人に相応しき罪科を示せ、〈死滅与えし珀武(シルヴェスク・レイ)〉」

 空間が歪んでいく。上空に黒い渦が生まれ、捩じれて世界を変質させる。

 ぎゅるり、と回転する景色から現れたのは銀色の球体だった。

「正義の遵法者たる小僧には足りなかった。

悪逆たる存在を滅ぼす単純明快な武力が、な」

 浮遊する球体に波紋が生まれ、四方八方に棘を放ち変化していく。

 一瞬だけ捉えた変化の先と千影の言葉は、俺の心臓を魂ごと刺し貫く槍だった。

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