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二話 嘘 ①

 

「おい中西、てめーどういう了見だ? このやろーっ」


 俺は学校に着くなり、中西の席の真ん前に立ち、着席しているアホ面の中西を問いただした。


「な、何のことかな?」


 中西は唇をヒューヒュー言わせながら俺と目をあわさず、あさっての方を向く。


「とぼけんじゃねえ!」


 俺は勢いあまり、中西の机をバンっと叩く。すると、黒板の前で談笑していたクラスメイト達は何事かと俺と中西を交互に見、ひそひそと噂の畑を広げ始めた。

 俺はその様子を見、少し声のボリュームを落とす。


「俺がいないのをいいことにあることないこと散々言いふらしやがって」


 拳を握り、歯噛みしながら俺は中西を睨んだ。すると中西は、待て、とでも言いたげに右手で俺を制した。


「それについては謝る、だがオレにも言い分はある」


「何だよ?」


「だってそうだろ? お前ヨウコ先生とどういう関係だ?」


「はあ?」


「ヨウコ先生と何か示し合わせたんだろ?」


「何の話だ?」


「じゃなきゃ、ヨウコ先生がお前を殴る振りまでして連れ出した意味が分からねえ」


「ふ、振り!?」


 ははーん、中西の中じゃそういうことになってんのか。意味深に深く頷き考え込んでいる中西に、俺は本来聞きたかったことを問いただした。


「じゃあ、何で浅羽死亡説とか周りに言いふらしたんだよ?」


「だから悪かったって。ちょっと悪のりしただけだ」


「悪のりってお前は……」


「でもおめぇも悪りぃんだぞ? 何度電話かけても電源が入ってねえし。充電くらいしとけ」


「ああ、それについては悪かったな」


 仏頂面を崩さずも、そこは素直に謝った。充電って何でか、し忘れちまうんだよな。

 心の中で静かに反省していると、中西が机から身を乗り出してきた。


「で? 実際どうなんだ?」


「何がだ?」


「だからお前とヨウコ先生と幸宮さんの関係だよ」


「な、何でそこに幸宮さんが出てくるんだ?」


 俺は内心ギクリとした。何で中西が知ってるんだ? 俺は逃げるように自分の窓際の席へ着席した。が、そんなことで中西からの追及を逃れられるはずもなく、案の定中西は、俺の後ろをついてきやがった。あわや立場が逆転となり、俺は中西に尋問でもされているかのような格好になった。

 中西は俺の机に手を置き、ニヤニヤと自分の情報通に、誇らしげに鼻を高くした。


「聞いたんだよ。オレは顔が広いからな。隣のクラスの幸宮さんもヨウコ先生に呼ばれて帰ったって」


「そ、そんなの隣のクラスのことだろ? たまたまそういうこともあったって不思議なことじゃ……」


「じゃあ、その横の木刀は何なんだよ?」


 中西は、俺が机の横に置いた紫色の細長い袋を指差した。


「よく木刀って分かったな」


「幸宮さんも同じ袋持ってたじゃねえか。忘れたのか?」


「ああ、そういやそうか……」


「もしかして幸宮さんと同じ道場に通い始めたのか?」


「違うけど、ちょっと体鍛えようと思って……」


「そういやお前、昔剣道やってたとか言ってたよな? 確か三日で辞めたとか」


「四年だ四年! 人聞き悪いこと言うな」


 中西にそう突っ込んだとこで、森野の影がドア越しに見えた。


「ほら、もう席つけよ。HR始まるぞ」


 中西は少し渋面になりながらも、自分の席へと座る。


「おーい、席につけー」


 がらがらとドアを開け、担任の森野が結んだ髪を揺らしながら、出席簿を片手に入ってくる。


「えー、出席を取る──」


 森野が教卓の上で出席簿を広げると同時に、後ろの方のドアが開いた。


「遅れて……すいません……」


 入って来たのは優希だった。


 優希の奴、いつもの時間に来ないから、先に来てるとばかり思ったけど……。どうしたんだ? 何か落ち込んだ様子でうつ向いて……。


「珍しいな、お前が。まあ、取り敢えず席につけ」


 森野がドアの前で立ち尽くしている優希に声を掛けると、優希はトボトボと自分の席へと着席した。

 俺がじっと優希の方を凝視していると、視線に気付いたのか、優希と一瞬目が合う。が、すぐにそっぽを向かれてしまう。


 あれ? 俺、何かしたか?






 一時間目の休み時間。俺は優希に声を掛けた。


「あ、あのさー優希!」


「おい、鈴原! 先生が職員室まで来いってさ!」


 声をかけた瞬間、ドアの外から同じクラスの男子生徒が優希を呼ぶ。

 優希は素早くドアに駆け寄っていった。


 まあ、次の休み時間でもいっか……。






 二時間目の休み時間。俺は再び優希に声を掛ける。


「おい、優希……」


「! ねぇねぇ、この間のさぁ──」


 しかし、優希は気付かなかったのか、友達に話かけ、そのまま3時間目に突入してしまう。


 まあ、三時間目の後でもいっか……。






 そして三時間目の終わりを鳴らすチャイムが響いた時、俺はまた優希に声を掛けた。

 が、優希は席からすくっと立ち上がると、何処かへと行ってしまった。

 戻って来たのは四時間目が始まる矢先。


 何か、おかしくないか?

 ええい、次の昼休みが勝負(?)だ!


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