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花柳村の猫は啼く  作者: 瑞月風花


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13/14

結び

 靴下会社の夏は今年も暑い。

 今年は、開発部からの冷感ソックスに期待、というところだろう。去年発売したうちのシースルーソックスと冷感タイツは、転けてしまっていたので、本当に期待している。


 そして、綺麗に片付けられてしまったデスクを眺める。

 もう、あのかわいい付箋も、写真立てもなにもない。

 長野さんは、失踪者として登録されたらしい。会社としてもそういう扱いになるのだろう。だから、そのデスクは、真っ新のように何もなくなっていた。

 段ボールに詰めたのは私。

 実家の叔母さんに送り届けたのは梁坂係長だ。

 ただ、人員欠のまま2年が経っていることは、納得いかない。

 

「おぉ、広崎」

「なんですか?」


 相変わらず、変な距離感の梁坂係長の声に答えると、なんだか苦笑いを浮かべている。

 こういう時は、頼まれ事だ。


「なんかな、この秋に新人さんが入ってくるそうでな、その教育係お願いしたいねん」

「……えっ、私ですか?」

「あぁ、そろそろお前も下を育てなあかんやろ……といっても第二新卒みたいやから、多少社会経験あるし、大丈夫や」


 ……その多少がややこしいんじゃ……。

 そんな心の声が聞こえてしまったのか、梁坂係長が空笑いをしながら、その新人さんの履歴書と経歴書を私に手渡す。

 年齢は私より10個ほど若い。

 仲良く出来ると良いのだけど……と、今は空席のデスクに座るだろう新人を思い浮かべる。


 ――にゃぁ


 「えっ」


 長野さんのデスクから猫の声が聞こえたような気がして、慌てて視線を係長に戻した。


「まぁ、よろしくな」

 係長が私の肩をぽんと叩いた。

「係長、それセクハラで訴えられますよ、今時」

「なんでや?」


 もう、猫の声などどこにもなかったように、いつもの光景が流れ始めていた。


 ※ ※ ※ 


 小学生の間、花柳市だけで流行る都市伝説がある。それは『猫は不吉』というもの。ベースには『花柳化け猫伝説』があるようで、猫に魅入られるとその猫に喰われるという結末である。

 この伝説を聞いた後、もし、通り道、猫の視線を感じて、その猫と目が合ってしまったら発生する呪いであり、子ども達は好奇心いっぱいで、恐怖を楽しむのだ。


 回避方法は一週間の間、猫に呼びかけられても決して振り返らないこと。最近ではブームに則り、飼い猫は含まないなんてご都合主義も加えられ、素性の分からない猫限定になっている。


 そして、諦めずに続けること。小学生の中には振り返ってしまってからも、諦めずに続け、呪いを回避している者も多くいる。猫は好奇心旺盛なもの。面白そうな獲物がいれば、動かなくなったそれよりもそちらに移る。


 だから、決して諦めないで欲しい。



1週間後に花柳村伝説の全文を載せて完結とします。

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― 新着の感想 ―
先日にまとめて再読させていただきました! 改めて拝読するとまた違った感想もでてきますね。 ホラーなので「猫」のせい、という先入観はもちろんあるのですが、実はそうとも言いきれない……。長野さんの問題だっ…
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