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【連載版】冷酷宰相の娘ですが、父の悪政を理由に婚約破棄されました ~全部論破したら皇太子に気に入られたようです~  作者: 織子


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番外編ーエルヴィスの訪問

「ジーナ・クリシス!そなたとの婚約は破棄させてもらう!宰相たるそなたの父、グレイアム・クリシスの悪政、もう見て見ぬ振りは出来ぬ!」


(――ん?何だ?)


アカデミーの卒業パーティーにて、突如始まった断罪劇。


ジーナ・クリシス嬢が優秀なのはアカデミーでも有名な事だったので知っていた。しかし科も違うのでアカデミー内ですれ違ったこともなく、話したこともない。――だから知らなかったのだ。こんなにも美しく、魅力的な女性だったとは。




◇



「まさに帝国の皇太子妃にふさわしい令嬢だとは思わないか?」


エルヴィスは付き人であるニコラスに言った。


ニコラスは呆れた視線を主人に送る。


「ええ。それはもう。クリシス侯爵が、お許しくださりさえすれば」


「何故だ?許しがいると思うか?我が帝国の属国であるドラグレアの、侯爵に?」


エルヴィスが振り返って言うと、ニコラスはため息をつきながら言った。


「殿下もご存知でしょう?他の貴族ならまだしも、クリシス侯爵は別です。文武両道とはこれまさに。政治、軍部、財政、どこに置かれても力を発揮するお方です。皇帝陛下も幾度となく勧誘していらしたのですよ。帝国に来れば公爵位を用意するとまで言って。しかし侯爵が帝国に来ることはありませんでした。……理由が」


「「ドラグレア王国が妻の母国だから」」


エルヴィスとニコラスは口を揃えて言った。そしてエルヴィスは深くため息を吐く。


「はああ……分かっている。父上から何度も聞かされていたからな。言ってみただけだ」


ニコラスは嫌な予感がしつつ、確認した。


「殿下、ジーナ嬢は障害がありすぎです。国内にも、殿下にふさわしい令嬢はたくさんおります」


じろりとニコラスを一瞥して、エルヴィスは言った。


「たくさんはいないだろう。いたとしても、ジーナ嬢より魅力的な令嬢はまずいない」


ニコラスが諦めたように首を振る。


「はぁ。そのようなお顔で言われては、幼馴染、兼、護衛としては協力しない訳にはいきませんね」


(どのようなお顔だ?)


ニコラスの言葉にエルヴィスは眉を顰めたが、何も言わなかった。協力してくれる者がいるのはありがたいので、余計な事は言わないでおく。


卒業パーティー後、一度帝国に戻り、皇帝にそれとなく話題を振ってみた。するとなんとも言えない表情(かお)をされた。


(諦めろという表情にも見えたが、そうはいかない)


帝国の第1皇子として産まれてから、伴侶として迎える女性のことは常に考えて来た。皇太子になってからは特に。将来自分と共に帝国を率いていく者だ。愛はなくとも、それに相応しい女性をずっと探していた。


「愛があれば、なお素晴らしい」


あの魅惑的な紫の瞳に自分を映してほしい。


(このような欲望は初めてうまれたな)




「しかし……遅いですね」


エルヴィスとニコラスの二人は、大きな泉の前で待っていた。かれこれ小一時間経とうか。


「まさか、侯爵は来られないのでは?」


泉の湖畔に仰向けになり、エルヴィスは同じ事を思った。


「それは困るな。馬車ももう帰してしまったし、ここは夜が更けると魔獣が出そうじゃないか?」


ニコラスがため息を吐く。


「はぁ。殿下の邪な感情が伝わったのでは。協力するのを迷ってきました」

「迷うな。あと邪ではない」


真剣で純粋な好意である。




「――皇太子殿下!」


ようやく来た迎えに、文句の一つでも言おうかとエルヴィスは身体を起こした。しかし迎えに来た人物が誰か気付くと、その気持ちは瞬時に消えた。


「ジーナ嬢?貴方が直接来てくれたのですか」


驚いた。侯爵が彼女を迎えに寄越すとは。

 

「父が来れないというので、私が迎えに来るのは当然の事です」


ジーナは肩で息をしながら、手を胸にあて呼吸を整えている。


(急いで来てくれたのか)


息が整うと、ジーナが聞きにくそうに口を開いた。


「あの、情報伝達が出来ておらず大変申し訳ないのですけれど、殿下は今回はどのようなご用でクリシス領へ?お父さまは理由をきちんと説明せず出掛けられたものですから」


「ん?」


初っ端から答えにくい質問をされ、エルヴィスは言葉に詰まった。


(君にアピールしに来たとはまだ言えないな)


「そうだな。休暇……をかねた視察というか。クリシスはこの大きな泉を使った観光事業をしてるだろう?」


ジーナの顔が輝いた。


「そうなのですね!ええ。この泉はミレーヌ湖と言って、聖女ミレーヌが降り立った地という伝承があるのですよ。後日ご案内いたします。」


馬を引いた従者がようやく追いついたようだ。


「お嬢様‥‥!先に走って行かれるなんて‥!」

「あら。湖のどこにいらっしゃるか分からず、二手に別れたのです。さぁ屋敷にご案内しますね。まさかと思いますが、護衛の方はお一人で?」

「ああ」

「‥‥帝国の皇太子殿下が、不用心なのでは?」


呆れ顔をするジーナを見て、エルヴィスは微笑って言った。


「人のことは言えないだろう」 


 

 







エルヴィスが自分をアピールしにクリシス領を訪れたお話でした。

この続きも少し考えているので、また最後まで書けたら追加で投稿致します。

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