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穴から落ちたソコは異世界でした  作者: 森都 めい
第5章 再び 王宮 リーガル城で
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91. オーブが寝ている間

ブクマ登録をありがとうございます。

おかげさまで、90話を越えました!

今後ともよろしくお願いします。


 私がオーブを完成させてから半月あまり経った日、5個全てのオーブが揃った。



 私の次に終わったのはアル様。やはり細かい魔力操作は女性の方が上手みたい。そしてジーク、リュカの順で完成し、一番長くかかったのがフランだった。彼は派手な魔法が得意と言っていたから、地道な作業は大変だったよう。


 完成したオーブは色が鮮やかに輝きとても綺麗。まるで大きな球体の宝石が並んでいるようだ。

 土属性のオーブはブラウントパーズ。水属性はラピスラズリ。火属性はルビー。風属性はペリドット。そして光属性はムーンストーン。よく見ると球体の中で魔力が少しずつ動いている。とても神秘的なオーブ。精霊と私たち選ばれし者で作った産物だ。

 これを私が作ったの? と不思議に思う反面、1ヶ月も掛けてコツコツと魔力を溜めた日々を思い返すと、確かに私が作ったものだと胸を張って言える。


 これから半年間5個のオーブを一緒に置いて、力も絆も強固なものにする。

 オーブが寝ている間、私は何をして過ごせばいいのかとても不安だったが、ベイグ宰相から王宮の魔法管理庁で働いて欲しいという要請があったので、『私でよければもちろんです』と二つ返事で引き受けた。

 住むところもどうしようと思っていたけど、さすがは王宮。というか、毎度のこと住むところに悩む選ばれし者さんがいるようで、王宮の従業員用の部屋を1室借りることができた。

 アパートというよりは長屋のような感じ。1LDKで家具付き。王宮の敷地内なので、徒歩20秒とはいかないけど(王宮はとても広いのです)、魔法管理庁までは徒歩5分。こっちの世界では通勤に恵まれているね。


 魔法管理庁の仕事は主に薬の調合と、病院や施設への出張だ。

 薬の調合は、いつもは休みの日にやっていたことだったので半分趣味のような感じ。好きなことをやらせてもらえるのは嬉しい。薬草は王宮の庭園の一画に育てられていたので、そのお世話もさせてもらった。土いじりも雑草取りも無心になってできるから気に入っている。

 施設への出張は、私の黒髪は珍しいので一般的な髪色のウィッグを着用し、身分を隠して治療へ出向いた。変装するなんて最初はドキドキしたけど、それよりも治療をして笑顔になって帰っていく人たちと触れ合うことは貴重な経験になった。ただ、他の治癒をしている人たちとペースを合わせてくださいと言われ、のんびりとやらせてもらっている。



 仕事以外のことといえば、まず、月の初めには選ばれし者5人で集まり、無事を確認した。まぁ精霊たちはみんなつながっているから何かあれば連絡が入るけどね。アル様とジークは時々王宮内で会うことはあったけど、フランとリュカは家に帰ってしまっていたので、この集まりが貴重な時間だ。顔を見ながら一緒に食事をして近況報告を聞けることは嬉しかった。


 あとは、お茶会に参加した。なぜか月に1,2回ほど招待された。そしてなぜか、ジークのお母様のカテリーナ様のお茶会も2回ほど招待され、最初はアル様と一緒に、次は私1人で参加した。ジークのお宅でもあるのよね、と違う意味で緊張した。



 そんな充実した日々を過ごし、半年はあっという間に過ぎて行った。


 6回目の顔合わせの時に、結界対策庁のレイデモン長官が来て私たちに話をした。

「皆さん、半年のお時間を頂きありがとうございました。オーブの力が整いましたので、いよいよ皆さんには納めに行っていただきます」

「もうそんなに経つのね」

「すぐに行くのか?」

「いえ、次の顔合わせの時が出発の時となりますので、この1ヶ月でその準備をしてください」

「最初はどこから行くの?」

「今は春から夏になる季節ですので、北にある水属性の祠から行っていただきます」


 みんなが、バッとジークの方を見る。何事も最初というのは緊張するものです! みんなの目が集まったジークはちょっとびっくりしていた。


「お、おう、了解した」

「転移の魔法陣を利用して行っていただく街はウォーターフォードになります。そこからは精霊たちの指示に従ってください」

「祠を回る順番というのは決まっているの?」

「順番は決まっていません。最後が、この王宮に納める光属性のオーブということだけです。通常は季節を考えながら行き先を決めることになります。北の地域は、冬は雪が降る日も多く移動しにくいので、なるべく暖かい季節に行くのが今までの傾向です」

「なるほどね。わかったわ」

「それと、こちらが最低限持って行っていただくものになります」


 レイデモン長官から一人ずつに渡されたものは、魔道具の常に水が満たされる水筒と着火器。あと毛布と転移の魔法陣のスクロールを2枚。回復薬のビンを2本。それと6日分の夕ご飯を用意してくれるらしい。


 とりあえず食べるものに困らなければ大丈夫かな。私のリュックに入れてしまえばみんなの荷物は最低限の物を持っていればいいし、6日ごとに戻ってこられるというのが不安を少なくしてくれている。

 次に会う時には出発、という言葉で私たちは解散した。



 祠というものは、毎回違うところに出現するそう。毎回違うということに驚いてウェンティアに聞いてみた。


「なぜ毎回違う祠なの?」

「なぜって、今結界を張っているオーブと新しいオーブを入れ替えてしまうと結界がなくなってしまうからですわ」

「新しいオーブでは結界が張れないの?」

「今回新しく作ったオーブは、今回のオーブ同士で影響し合うため、以前のオーブでは反応しませんわ。そのために半年もの間一緒に寝かせたのですもの」

「祠が新しく出現するって聞いて、何を言っているのかわからなかったけど、私たちが納める祠が別の場所にできてるってこと?」

「そうなんです! その辺りっていうのはわかるんですけど、今は正確にはどこに出現しているのかわからないのです。行ってみて、微かな気配をたどりながら祠を探すということしかできないんですよね」


「祠って誰が作っているの?」

「それは…わからないのです!」

「わからないってどういうこと?!」

「多分、大地からニョキニョキと生えてくるのではないか、というのが精霊たちの意見です」

「えー! 大地から生える祠?! 新しい祠ができる瞬間って誰も見たことがないんだ」

「新しい祠ができる時期もわかりません。選ばれし者が5人そろった時か、オーブが完成した時か…結界ですから、この国と大森林の境界の辺りに祠ができます。まずそんな場所へは誰も行きませんからね。祠については本当に謎なんです」


 すごいことを聞いてしまった。そんな神秘的なことが起きているんだ! 魔法に精霊もいるこの世だから何が起きても私の想像の範疇を越えているけど、さらに不思議なことがあるんだな~。


 この国の東西南北の祠にオーブを納めたら、最後はこの王宮の契約の儀式で使った部屋にある台座に光属性のオーブを置くんだけど、ここには台座が1か所しかないので、そのオーブを入れ替える時に結界が途絶えるらしい。

 今までもずっとそのようにして結界を張って来ているんだろうから、心配はないと思うけど、これからその作業が始まり、そして私もその一員らしい。他人事のように考えているのは、全く実感がわかないから。

 始まれば気持ちがついて行くのだろうか。今はただ、みんなと旅をするのかなって気がしているだけ。



 そんな漠然としたことを思いながら、私は出発までの1ヶ月を過ごした。



読んでくださり、ありがとうございます。


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