84. 再会
お城の門が見えてきて、前の2台の馬車が王城の中へと帰っていく。そして私たちの馬車は、門の前を通り過ぎ、左の道沿いを進んで行った。
なぜ、王宮へ戻らないのか? それは、まだやることがあるからです。というか、ご家族たちが待つ場所へ連れて行ってくれるのです。
パレードを見に来てくれた選ばれし者の家族は、VIP対応。この時期王都の宿はどこもいっぱいで予約も取れないらしい。だから選ばれし者の家族は王宮が用意してくれたところへ特別に泊まれるようになっていると、先日スケジュールを教えてくれたベイグ宰相から聞いていた。
来賓の宿泊に使われるという別棟に私たちの馬車が入っていくと、前庭にはフランとリュカの家族が待っていた。馬車が止まると、フランとリュカは馬車から飛び降り走って家族の元へと向かう。2人ともとても嬉しそうだ。
残った私たちは、2家族に挨拶をしてから王宮に戻ると言っていたので、声がかかるまで馬車で待機だ。
と思っていたら、ジークが寄ってきて顔を近づけた。『え?!』と思った時、ジークが前を指した。
「ルイ、あそこに知った顔があるだろう」
「え?! 知った顔?」
ジークが指さす方向を見ると…なんで、ここにいるの?
「ほら、行ってこい!」
ジークが私の背中を押した。私は立ち上がって、馬車を下り、スカートをつまんで走り出した。
「テルナさ~ん、ダリルさ~ん!」
2人が私に気づき、ダリルさんが手を振る。テルナさんが両手を広げたので、私はその手の中に飛び込んだ。
「テルナさん、会いたかったです!」
テルナさんの腕に支えられて、温かさが伝わってくると途端に緊張が解けて、私は涙が出てしまった。待っていてくれる人がいるって、こんなに嬉しいものなんだ。
「ルイ、よく顔を見せて。あらあら、せっかくのお化粧が取れちゃうよ。ほら、涙を拭いて笑ってよ」
「ルイ、久しぶりだな。元気そうでなによりだ」
「ダリルさんもテルナさんもお元気そうですね。見に来てくれたんですか? 私、知らなくて。びっくりしました!」
さっき見かけたと思ったのは間違いじゃなかったんだ。2人ともパレードを見に、わざわざ来てくれたんだ。
「ルイ、とても立派だったよ。こんなにきれいになっちゃって。見違えたよ」
「ふふ、綺麗なのは衣装ですよ。2人に会えて嬉しいです。来てくれてありがとうございます」
「久しぶりの王都だからな。息抜きも兼ねて見に来たんだ。こんなルイを見れるなんて俺も自慢ができるよ」
「でも、宿屋の方は大丈夫なんですか? 馬車で来ると3,4日はかかるって聞きました」
「あれ、聞いていないのか?」
「何をですか?」
「伯爵様が、パレードを見に来るといいと転移の魔法陣を送ってくれたんだよ」
「え?! ジークが? ダリルさんたちに? それは…知らなかった」
ジークがそんなことをしてくれていたなんて全く知らなかった。だって、教えてくれなかったよ。もしかして、ジークなりのサプライズを考えてくれたのかな。
「宿屋のみんなに聞いたら『宿屋は任せてください』って言ってくれたのよ。だから王都見物も兼ねて来たの。転移の魔法陣ってすごいわね。ホント、一瞬だったわ」
とそこへ、アル様とジークが挨拶に来てくれた。ダリルさんとテルナさんはいきなり膝間着いた。
「ここでは私も選ばれし者の一人です。どうぞ、お立ちください」
アル様が2人に言う。やっぱり王族だから敬意を示さなくちゃいけないんだよね。2人は顔を見合わせながら立ち上がった。
「そうおっしゃって頂けるのでしたら、失礼いたします」
「私はアルフォンセです。一度そちらの宿にお世話になりました。今日はゆっくりしていってください」
「ありがとうございます。ダリルと妻のテルナでございます。ルイの知人としてお招きいただきました」
「久しぶりだな、宿屋の主人と女将。2人が来てくれてルイも嬉しいだろう」
「伯爵様、過分なるご配慮、ありがとうございました」
「ジークでいい。俺もルイと同じ選ばれし者だ」
「ジーク、2人を誘ってくれてありがとう。私、全然知らなくて…いろいろ気を遣ってもらって、本当にありがとう」
「気にするな。2人もルイの姿を見たいだろうと思ってな。主人が元冒険者と言っていたから、転移の魔法陣も使えるかと思って送っただけだ」
「ありがとう。転移が使えると、宿屋の仕事の方の影響も少ないもんね」
「ええ、本当に助かりました。馬車での行き来で、こちらの滞在も含めると10日前後は宿屋を空けないといけませんからね」
それにもしパレードが雨で延期されるともっと日にちがかかってしまう。ダリルさんの言う日数以上になってしまうだろう。パレードが行われるかどうかは、役所に問い合わせればわかるらしい。それを聞いてから転移すれば無駄な日にちを過ごさなくてもいいのだから、本当に便利だ。
アル様とジークは他の家族のところへ挨拶に行った。そして、王宮へ戻って行った。
私達は宿泊施設になっている別棟へと移動した。2人には部屋で少しゆっくりしてもらい、その間に私は着替え、それから2人と一緒に夕食を頂いた。
フランとリュカの家族もそれぞれ、別の部屋で家族水入らずの夕食を楽しんでいるだろう。
私も久しぶりの2人と一緒に夕食を楽しんだ。もちろん、王宮の夕ご飯は美味しかったけど、ちょっとダリルさんの料理が懐かしい。
「ルイ、いい顔をしているね。お城だから不自由はないと思うけど、嫌なことはないかい?」
「嫌なことなんてないですよ。皆さん、とても良くして頂いています。安心してください」
「なんか、ルイが遠くに行っちゃったみたいで少し寂しいね」
「テルナさん、そんなこと言わないでくださいよ。私、明日からウェールの風で働いて欲しいって言われたらすぐに働けますよ!」
「ははは、選ばれし者様に働いてもらったらどれだけ払わなくちゃいけないか、それは怖いな!」
テルナさんには “ジーク” って呼んでいると言われた。2人の仲はどうなのかと聞かれたけど、みんな名前で呼び合ってるよと言ったら、ちょっと寂しそうだった。(どうして?)
2人と話をしていると、あの頃の懐かしい思い出がよみがえってくる。いろいろな話をして、私は久しぶりの2人との再会のひと時を過ごした。
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