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穴から落ちたソコは異世界でした  作者: 森都 めい
第5章 再び 王宮 リーガル城で
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81. 閑話 ミカヅキ

いつもお読みいただきありがとうございます。

今回のお話はミカヅキの視点のお話です。


 僕はミカヅキ。ルイとウェンティアと一緒にいるミカヅキだよ。



 小さかった時のことは、僕はよく覚えていない。なにか、周りにたくさんいたような気がする。でも気がついたら独りぼっちになっていた。


 一人だったときは、いつもお腹が空いていた。お水を飲んで、葉っぱを食べて、落ちている木の実があったらそれを食べて。木の実が一番おいしかったけど、鳥や虫に食べられちゃったあとだから、食べられるところはあまり残っていなかった。


 水や葉っぱだけだとお腹はいっぱいにならない。


 時々怪我をしたネズミや鳥を捕まえて食べた。怪我をしたウサギがいたらラッキー。ごちそうだ。僕が捕まえることができる獣なんて怪我をしたヤツぐらいだったけど、そんなに都合よく怪我をしたヤツなんていない。いつも食べ物のことを考えていた気がする。


 でも、もっと考えなくちゃいけないのは、僕が食べられないこと。僕より大きな獣は、僕を見つけるとすぐに襲って来るからいつも周りに気をつけなくちゃいけなかった。


 あの時もお腹が空いて、でもあまり食べられるものがなくて、動き回るより寝ていた方が疲れないと思って、大きな木の下で寝ていた。

 ルイとウェンティアが僕を見つけたけど、他の獣のように悪い気持ちを感じなかったから、そのまま寝ていた。お腹が空いて動けなかったっていうのが本当だけど。


 そのうち、ルイが僕の手を持って契約を始めた。手を触られるのは初めてだったからびっくりしたけど、ルイの手は温かかった。そういえば暑いと思ったことはあっても、温かいと思ったのはすごく懐かしい感じだったな。


 けいやくって何だろう。僕、わからないよ。すると、誰かが話しかけてきた。契約とはルイの従魔になることだと。じゅうまって何と聞くと、ルイのことを守ることだと言う。僕には自由がなくなるけど、食べ物には困らなくなるだろうと。勝手にどこかへ行くことはできないけれど、いつもルイが一緒にいてくれると。


 自由って何だろう。今は僕が行きたいところに行ける。でもそれは行きたいところというよりは食べ物を探しているだけだ。食べ物があるところに行きたいだけだ。それなら、食べ物がいつもあるのなら、僕は別にどこへも行かなくてもいいのかな。

 それにルイがずっと一緒にいてくれると言う。一人はいいけど、一人は寂しい。


 僕は従魔になる契約を受け入れた。

 そして、その日から僕の “いつも” が変わった。




◇◆◇




「今日は北の方に行ってみようか」

「そうですわね。確かここから少し北に行ったところに湖がありましたわ」

「へー、湖なんてあるんだ。じゃあ行ってみよう」

『こっちの方へ行くの? いつもと違う道? 僕、先に行ってもいい?』

「先に行ってもいいけど、何かあったら連絡してね」

『わかった!』


 今日は森に薬草を採りに来た。ルイが街という所に住み始めてから、僕たちは時々森に薬草を採りに来る。その間、僕は自由に動き回る。そして魔獣を狩ったりして、ルイを守るんだ。


 ルイは歩くのが遅い。走るとすぐに疲れちゃう。だけど僕はどんどん先に行きたいから、ルイたちと離れて走り回る。一人で行くけど、ルイとウェンティアがいるから一人じゃない。それがなぜか嬉しい。


 走っていくと森がぱぁーっと開けて大きな池のところに出た。これが “みずうみ” って言うのかな。近くに寄ってみると…うわっ、う、動いている! なんだ? 僕はちょっと後ろに下がって様子を見た。

 下がったりこっちに来たりするけど、襲ってくる様子はない。動いているけど、生きている感じがない。不思議だ~。僕の知らないことってまだまだあるんだな。

 みずうみを見ていると、やっとルイとウェンティアがやってきた。


『ねぇ、みずうみって動いているんだよ!』

「動いている? あー、波が立っているのね。そう言われると動いているように見えるね」

「湖は生き物ではないのよ」

『2人ともみずうみを知っているの? 僕は初めて見たよ。なぜ動いているの』

「あれは湖が自分で動いているのではなくって、風が吹いてその表面に摩擦が起こって…」

『ありがとう、もういいや。みずうみを触っても大丈夫なの?』

「あら残念。触っても大丈夫だけど、水浴びにはまだ寒すぎるね。この湖に魔獣はいるの?」

「湖にはいませんわ。周りの森には何かいそうですけど」

「湖は大丈夫なんだ。綺麗な湖だね。湖なんて久しぶりだよ。もう少し暖かくなれば花もたくさん咲いてきっと華やぐね。じゃあ魔獣に気を付けながら、ミカヅキは遊んできていいよ。私はここで薬草採りをしているね」

『うん、行って来る』


 ルイもウェンティアも僕が知らないことをいろいろ知っているんだ。ウェンティアはたくさんのことを教えてくれる。ルイも知らないことを教えてもらっているみたい。

 ルイも物知りだけど時々よくわからないことを話しだす。僕にはちょっと難しい。


 僕はみずうみを触ってみる。動いているから、僕が止まっていてもやって来る。ひゃあ、冷たい! 尻尾がビリビリっと震えた。でも水がやって来てまた戻っていく様子は面白いな。


 足が濡れちゃったから、今度は草の中を走る。走っていれば乾くかな。あ、リスだ。リスは木の上に行っちゃうからつまらない。今度はウサギだ。巣穴から出てきたウサギはすぐにまた潜っちゃう。こっちもつまらないや。僕はどんどん強くなっている。自分でもわかるよ。今はウサギだってキツネだって、僕は負けない。でも今は食べ物のことは考えなくていいから襲ったりしないよ。


 僕がやっつけるのはルイに襲いかかる魔獣だ。小さいヤツはみんな僕から逃げる。大きいヤツは僕から向かっていくよ。前は食べられないように気にしなくちゃいけなかった。でも今は僕も強くなったからどんどん戦うんだ。


 あれ? 僕は走るのを止めて、気配を探る。


 向こうに大きな魔獣がいるみたい。どうしよう。あんなに大きなヤツは一人ではやっつけたことがないなぁ。でもルイのところに戻るとあいつがルイに気がついちゃう。


 僕は一人で行くことにした。僕も強くなったんだ。一人で戦える!

 走っていくと、うわっ、めちゃでかい! 普通より一回り大きなブラックベアがいた。こんなにでかいヤツ、一人でやっつけられるかな。いや、やっつけるんだ。


 僕は、まだ気が付かれていないブラックベアに突進した。





『ルイ、こっちですわ。もうすぐです』

『ミカヅキ~、聞こえる? 今行くから』

『今はもうミカヅキの気配しかありませんわ』

『じゃあ、ミカヅキが一人でやっつけちゃったってこと?』

『ルイ、ウェンティア! ここだよ~』



 2人が僕を探しに来てくれた。よかった~。僕、疲れてちょっと動けない…。僕もまだまだだなぁ。でもやっつけたからよかった! 2人が来てくれた時にまだ魔獣がいたらルイが襲われちゃうもん。


「ミカヅキ~、きゃー、ひどい傷じゃない! 早く治さないと」

『ルイ、来てくれてありがとう。僕、頑張ったけど動くと痛いの…ごめんなさい』

「ほら、ちょっと待ってて、今魔法を送るから」


 ルイが僕に魔法をかけてくれて、僕の傷が治っていく。じわじわと感じる温かさにすごく安心する。


「あら、この魔核、ミカヅキが倒した魔獣のものなの?」

『そうだよ。いつもと色が違うけど、それも魔核なの?』

「そうですわ。また、すごい魔獣を倒したのね。大きな白い魔核よ。これなら1年は遊んで暮らせますわよ!」

「そんなに大きな魔獣を一人で倒すなんて! ミカヅキ、無茶はしないでね。強くなっているけど、こんなに傷だらけになっちゃって…」

『ルイ、悲しくならないで! ごめんなさい。これからはもっと気を付けるよ』

「そうしてね。でもありがとう。私たちを守ってくれたのね」


 ルイは僕に魔法をかけてくれて傷を治すと、わしゃわしゃと頭を撫でてくれた。今日はちょっと無理をしちゃったかも。でもすぐに2人が来てくれると思ったから、頑張れたんだよ。


「すご~い! 初めて見たね、光属性の魔核。今日の夕ご飯はミカヅキに御馳走しなくちゃね!」



 御馳走もうれしいけど、僕はルイとウェンティアと一緒にいられることが一番うれしいんだ。

 僕はルイのほっぺをペロンとなめた。くすぐったがるルイ。ルイも僕のほっぺにキスをくれた。そして僕の頭に乗って撫でてくれるウェンティア。

 僕は2人が大好きだよ!



読んでくださり、ありがとうございます。


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