73. 魔力の急な放出は2回目です
昼食を頂いた後は部屋でゆっくりさせてもらった。以前竜のフィリを治した時は、もっと体のだるさが残ったけど、今回はそういう感じではない。でも急ぐことはないとみんなに言われ、お言葉に甘えさせてもらった。
次の日、陛下に呼ばれたので陛下の執務室を訪ねることになった。また宰相補佐のナイルスさんが迎えに来てくれた。廊下を2人で歩いていると階段のところに人影が…
「ジーク! おはようございます」
「ルイ! おはよう。もう大丈夫なのか」
「はい、おかげさまで大丈夫です。ジークには気を失った時に体を支えてもらったり、その後もすごく心配してくれたりとウェンティアから聞いて…ありがとうございました」
「気を失う前のことは覚えているのか」
「はい。ジークの優しさに甘えちゃいました」
「いや、それでいい」
「今から陛下に報告に行ってきます。今は話している時間がなくてすみません」
「ああ、引き留めて悪かった。昼食の時にまた会おう」
ゆっくりと話をしたいけど今はそんな時間も無く…。会話もそこそこにジークと別れた。前の時と同じように、私がここを通るまでずっと待っていてくれたのかな。
『待つなんて暇だ!』と言うアクティオの怒った顔が目に浮かぶよ。でも、すごく心配してくれたんだよね。それをとても嬉しく思う自分がいる。
「すみません、ナイルスさん。お待たせいたしました」
「大丈夫ですよ。眠っているだけだと言われても皆さん、オウカ様のご様子を心配されていましたから」
儀式の途中で倒れたらそれは心配するよね。でも倒れるというよりは寝ちゃったんだけど。あとでみんなに謝らないと。
陛下の執務室に着き、中に入ると、陛下とベイグ宰相が話をしているところだった。私が来たと気づくと、2人は話を止め、私を迎えてくれた。
「陛下のお呼びに与り参りました、ルイ・オウカでございます。儀式の途中で退場しましたこと、またご心配をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます」
「ルイ嬢、カスク長官より詳細は聞いておる。詫びることはないぞ。それより体はもう大丈夫なのか。選ばれし者はこの国の希望なのだ。大事があっては困る」
「充分に眠りにつかさせていただきました。気分も爽快です」
「ふむ、それなら結構。それにしても、素晴らしい魔力だったな。あの大きな会場にそなたの魔力が降り注ぎ、輝いていたぞ」
「ありがとうございます…精霊たちの言葉を聞いていたら体の中の魔力がそれに反応したようで、自分ではどうしていいのかわからなくなってしまって。精霊のテラティオが私に気が付いてくれて魔力を開放しました」
「今回のことで、ルイ嬢の魔力の量がもっと増えたと聞いておる」
「自分では魔力が増えたのかどうかは全くわからないのですが…。この国のためにこの力を使えますよう、尽力致します」
「ルイ嬢の魔力は底がしれぬな。そなたには期待しておるぞ。ではアンドル、後は任せる」
陛下はそうおっしゃると、ニコニコして椅子の背もたれに寄りかかった。陛下の後は、ベイグ宰相が引き継いだ。
「オウカ様、お体に支障がないようで安堵いたしました。まずは、予定していたミルズ様の陛下との謁見式は、オウカ様はいらっしゃいませんでしたが、滞りなくさせていただきました。事後報告になりますが、どうぞご理解いただけますよう」
「わかりました。リュカの謁見式が無事に行われて良かったです」
きっと陛下の前ではド緊張のリュカだっただろうな。尻尾がピンと立っているのが目に浮かぶよ。見れなかったのはちょっと残念。
「そして舞踏会ですが、予定通りあと2日後に行いますがオウカ様は大丈夫でしょうか」
「はい、大丈夫です。体調はいいのですが、踊りの方が不安しかないですけど…」
「ははは、踊りがうまくできないからと言われてもそれは待てません。女性の場合は、半分は男性のリードにより踊りの良し悪しが決まってきますから、うまく踊れなかったときは男性のせいにしてしまえばいいでしょう」
「そ、そんなことは言えませんけど…」
ベイグ宰相ってやっぱり腹黒なんじゃないかな! そんなことを言っていたら誰も一緒に踊ってくれなくなっちゃうよ。ベイグ宰相に踊りを誘われても(多分、そんなことにはならないと思うけど)絶対お断りしよう。
「では、この後の催しは予定通りに行わさせていただきます。お時間を頂き、ありがとうございました。まずはオウカ様のご様子の確認でしたので、大事がなくほっと致しました」
「ご心配おかけいたしました。この後もよろしくお願いします」
陛下と宰相とのお話が終わった後は、時間まで部屋でゆっくりして、今度はイアナさんに送ってもらってみんなとの昼食会だ。食堂にはみんなもう集まっていた。
「ルイ! 元気そうで良かったわ。病気じゃないとわかっていても心配だったの」
「アル様。ありがとうございます。みんなもご心配をおかけしてすみません」
アル様は私の手を取り喜んでくれた。こんなに素敵なアル様に心配してもらえるなんて私は果報者です!
「さぁ、いつものようにまた食事を始めるのが遅くなってしまう。先に乾杯しよう」
「そうね。前置きが長くなってしまうのが私たちの悪いところだわ。食事をしながら話しましょう」
5人で乾杯をする。私の回復と、滞りなく契約の儀式ができたことに感謝だ。
お料理を取ってもらったら、給仕をしてくれた人たちはほとんどが退室し、護衛騎士さん2人と執事長、侍女長さんの4人と私たちだけとなった。
「それで、ルイはあの時どんな状態だったの?」
「儀式のときは、精霊たちの言葉で体の中の魔力がすごい速さで巡って渦巻くっていう感じですかね。モヤモヤしてきて、どうしようと思っていたらテラティオが『開放するのだ』と言ってくれたのでその言葉に従ったら魔力が放出されていた、みたいな?」
「気分はどうだったの?」
「めまいがして立っていられなくて、そのあとは眠気が襲ってきました」
「それなら本当に魔力放出のやりすぎと同じっすね」
「ええ、前の時と同じ気分だったからそうだと思う。でも前ほど体のだるさはないかな」
「そうか、魔力不足とはまた少し違うようだな」
「皆さんも魔力不足の経験はあるんですか?」
『それはみんな行うだろう。自分の限界を知ることは大切だからな』
アクティオが言った。どのくらい魔法を使うとどうなるのかは一度は試しておくらしい。自分の一番威力のある魔法を何回使えるかを知っておくと、戦う時にここまで行ける、これ以上はダメだ、とわかるからだ。
『じゃが、戦いのときは連続で何発も使うことは稀じゃろうから、そうそう気分が悪くなることも少ないのぅ』
『そうよね。実際の戦いでは連続発射なんてないもの』
ルキティアもそう言うぐらいだから、そういう場面は少ないんだろうな。
「回復魔法で魔力不足なんて、お前何をやらかしたんだ?」
「リュカ、そんな変なことはしていないよ。でも私の場合は偶然にそういう状態になっちゃったんだよね。あの時は竜の子供を治療したの。ふふ、懐かしいな。竜なんて初めて見るでしょ。興奮したけど、傷が酷くて可愛そうで。必至だったし、魔力をすごい持ってかれたんだよね~」
「「「「ちょっーと待った~」」」」
『『『『今、何て言った!』』』』
び、びっくり。精霊たちもみんなも、全員の顔がこっちに向いている…
「え、だから魔力をすごく持っていかれて…」
「そこじゃないわ。何を治したって?」
「その、えーと、竜の子供です。子供と言ってもめちゃくちゃ大きくて、でも全身傷だらけだったので治してあげたんです」
『『『『その話』』』』
「「「「詳しく!」」」」
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