48. 会議
次の日、朝食を取った後、私たち選ばれし者たちは大きなテーブルといくつかの椅子がある部屋に案内された。
今日はこれから関係者が集まり、5人目の選ばれし者についての話し合いが行われる。選ばれし者については占いでわかると聞いているけど、ある程度目星がついているのか、それとも大まかなことしかわかっていないのか、私にはどんな話し合いになるのか想像がつかない。
アル様を先頭に部屋に入っていくともう先客が来ていた。そこにいた人たちが立ち上がり会釈をした。最後尾の私が椅子に着いたところで、部屋にいる全員が座った。
ここには精霊たちも姿を現している。彼らも話し合いに参加するためだ。なかなか姿を見られない精霊たちを前に、皆さんの目が彼らを追う。特に騎士と思われる人たちの反応は精霊4人を見比べていて、彼らの目の動きが面白い。
周りを見ると、先日案内してもらったナイルスさんも同席していた。目が合ったので軽く会釈をすると微笑んで頷いてくれた。
ナイルスさんの隣にはこの部屋の中で一番年上と思われる白髪の男性が座っていた。ナイルスさんと同じ、深緑の薄手のロングコートを羽織っているところからすると彼も文官のようだ。その彼が話を始めた。
「お忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。私は結界対策庁長官のロイグ・レイデモンと申します。これから5人目の選ばれし者様の捜索について話し合いたいと思います」
「それで、占いでは5人目の選ばれし者はどの辺りにいると?」
「はい、南東の方を指しましたので、ワーズコート、タラモア、バリーキエ辺りの街かと思われます」
「そっちの方とすると…」
選ばれし者の代表はアクティオ。仕切り屋っぽいし、彼に任せておけば大丈夫でしょう。それにいつもアクティオとレイデモンさんが話をしているらしく、みんな何も言わずに2人の話に耳を傾けている。
アクティオが言葉の途中で考え込む。その辺りの街ってどんなところだろう。私には全くわからないので、なぜ考え込んでいるのかよくわからない。ウェンティアにこっそり聞いてみる。
『その辺りの街ってどんなところなの?』
『この国は南に行くほど治安があまりよくありませんわ。レイデモンが言った名前は王都よりかなり南にある街の名前ですね。ワーズコートが一番大きい街です。でもその街を中心に小さな村も点在していますから、運よく街で見つかればいいのですが』
『村となると捜索も難しくなるね』
『そうですわね。あと…』
『あと、何かあるの?』
『その辺りは獣人が多い街ですね』
「獣人!」
私の声に反応してみんながこちらを向いた。ヤバい! ついつい声に出してしまった。手で口を覆いながらその場にいた方たちに謝る。
「すみません、話を続けてください…」
隣のフランの肩が揺れている。もう! 笑わないでよ! でも、キター! 獣人。もしかして5人目の選ばれし者は獣人かもしれないってことだよね。ぜひお話してみたい。
『ルイ? 目が輝いているように見えますが…大丈夫ですか?』
『ごめん、大丈夫。5人目は獣人さんかも知れないね!』
『この国の人族と獣人族はあまり仲が良くないのです』
『え?! でもディングルの街で見かけた冒険者のパーティには獣人もいたでしょ?』
『もちろん気にしない人たちもいますわ。でも一般的に見て、住み分けされていますわね』
そうなんだ。じゃあ、みんなも気にするのかな。そんな風には思えないけど、風習や習慣の違いで、目に見えない何かがあるのかもしれない。
「その辺りって、最近魔獣の被害報告が上がっているところかしら?」
「そうです、アルフォンセ様。3カ月程前から街の近くや中にまで魔獣襲撃の報告がありましたが、ここ最近になって報告が増えています」
「じゃあ、魔獣に対応しているせいで5番目のヤツは名乗り出て来られない、という可能性もあるのか」
「はい、その通りでございます。実は、春待草の花が咲き始める頃に、最後の選ばれし者様も精霊と契約されたと占いでわかっております。ですからまだ王宮に見えられていない理由の一つには、その方も魔獣の対応に関わっているのではと、こちらでも考えております」
「ふむ…それが理由なら、5人目の選ばれし者はもう見つかったも同然だな。となると、問題は魔獣退治だな」
「はい、そのために我らも同席しております」
そう答えたのは、白髪交じりの赤い髪を後ろで一つにまとめている男性。前線からは退いているようだけど騎士服から感じる体躯はまだまだ鍛えていそうだ。
「申し遅れました、王宮騎士団統括のコンロット・キルオーウェンです。今回、選ばれし者様の捜索と合わせて、南東の魔獣退治も一緒に行う予定です。日程等は第2騎士団団長のチャナル・ノーゲンより説明いたします」
「第2騎士団団長のノーゲンです。よろしくお願いします。魔獣討伐には私と副団長も含め12名で向かいます。2日後にワーズコートへ先行して出発します。騎馬隊6名と後は馬車3台を使用します。皆様の荷物もこの馬車に乗せますので、荷造りは明日までに行っておいてください」
「第3騎士団団長のレンジ―・リンバレです。皆様の護衛を務めさせていただきます。私とあと5名、合わせて騎馬隊6名で3日後に皆様と一緒に出発の予定です」
すごいな。結構大勢で出向くんだ。ジークとフランとミカヅキがいれば、私たちの護衛はいなくてもいい感じだけど、そうもいかないんだろうな。治安もあまりよくないって言ってたし、護衛してもらった方が安心だね。
「魔獣、報告」
「なんだ、イグニティオ」
「あぁ、イグニティオは、どんな魔獣が報告に上がっているのかを知りたいみたいっす」
すごっ、フラン! アクティオでもよくわからなかったイグニティオの会話を通訳している。あの二言からその意を汲み取ることは、普通はできないよ。さすがだね。
「魔獣の種類はいろいろです。バレットアントのような小さなものからハーディングハイエナやブラックカイマンなどそれほど大型ではないものの凶暴な魔獣まで様々です。特徴としては南に生息している魔獣のようです」
「そんなヤツまで来るのか。大きさより数が悪そうだな」
「ただ、鳥ではコカトリスのような地上を走るものは現れていますが、ロック鳥のような飛ぶ鳥は目撃すらされていません。また、ハーディングハイエナなど群れで行動する魔獣は5頭前後ほどですので、群れの一部が襲撃してくるようでして、どういうことなのかそれも動向がつかめない一因となっています」
「それなら、実際行ってみないとわからないってことだな」
アクティオはやる気満々みたい。ジークたちも頷いているし、何もできない私からすると頼もしいの一言だよ。そういえば移動ってどうするんだろう。
「フラン、私たちの移動はどうやってするの?」
「オウカ様、何かご不明な点がありますか」
ひょえ~、小声で言ったつもりだったけど、聞こえてしまったらしい。フランにちょこっと教えてもらえばいいことなんだけど。
「あの、私は捜索とか討伐とか初めてなので…その街までの私たちの移動はどうなりますか? それとかかる日数も知りたいです」
「そうでしたね。オウカ様は今回からのご一緒ですね。移動は、選ばれし者様たちは馬車でお送りします。先行隊が皆様の宿も確保しておきますので、皆様のお手を煩わせることはありません。ワーズコートの街まではおおよそ3日ほどかかると思われます」
「わかりました。ありがとうございます」
丁寧にリンバレさんが教えてくれた。馬車で移動かぁ。どんな馬車で行くんだろう。ディングルの街で乗せてもらった時は主に農業用に使う馬車だったから荷台に乗せてもらっていたんだよね。振動がかなりすごかったけど、1時間くらいだから我慢できたし、足を伸ばしたり寝転がったりと自由な体勢で乗っていた。今度は王宮の馬車だから、優雅な道のりになるかも。ちょっと楽しみじゃない?
会議は、荷物は明日の夕方に部屋まで取りに来てくれること、私たちの出発は3日後の朝食の後に、ということで終わった。
今回のお話に『春待草』という名前が出てきましたが、梅の異称だそうです。
ですが『梅の花が咲く頃』というよりは、読んだ時のイメージをぼかしたかったので『春待草』にしました。
梅の花が咲く頃の季節…とイメージしながらお読みください。
読んでくださり、ありがとうございます。
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