44. 契約書にサインをしました
「ルイ様、おはようございます。お支度は…できていらっしゃいますね」
昨日は目まぐるしい一日だった。挨拶会は早めに終わったとはいえ、初めて体験することばかりで私には過酷だった。
終わった後はお風呂でゆっくりコリをほぐし、部屋に戻ってきてから簡単なストレッチで筋肉をほぐし、寝る前には自分に回復魔法をかけて寝たら、朝の目覚めは、あらスッキリ。栄養ドリンクはもういらないわってくらい疲れが残っていない。魔法って本当に使えるね。
「はい、もう朝食に行けます」
「あと、宰相よりご伝言を承っております。契約について書類にサインを欲しいので朝食の後にお迎えに伺います、とのことです」
「書類関係もあるんだ。ちゃんとしてるね~。はいわかりました。よろしくお願いします」
今日の朝食はジークさんも一緒だ。昨夜は彼もお城に泊まったみたい。朝から爽やかなジークさんと神々しいアル様、そしてなぜかテンション高めなフラン。4人で頂く朝食はいつもより美味しく感じた。
今日は一日お休み。各々過ごしたいようにして良いそうだ。と言われても、何をして過ごそうか、ちょっと悩み中。
朝食が終わって部屋から出ると私は呼び止められた。
「オウカ様」 「ルイ!」
「はい。え? ジークさんも? すみません、少しお待ちください」
私は迎えに来てくれた人に声をかけて、ジークさんに近づいた。
「ジークさん、何か急ぎの用ですか? もしそうでなければ、今から契約の書類関係の手続きに行かなくちゃならないので、そのあとでもいいですか?」
「あ、そうだったな。儀式の後は書類があったな。いや、俺の方は急ぎではないからそのあとで大丈夫だ」
「ごめんなさい。終わったら声をかけますね」
「気にするな」
ジークさんはそう言って廊下を歩いて行った。
「お待たせいたしました。お願いします」
「いえ、大丈夫です。私は宰相補佐のナイルスと申します。お部屋へご案内します」
階段を上り、大きな扉の前で止まった。ナイルスさんがノックして声をかけてから中に入る。中には陛下と男性が待っていた。男性の方は昨日も陛下の横に控えていた人だった。
「おはようございます。お時間をいただきありがとうございます。私はこの国の宰相を務めておりますアンドル・ベイグと申します。ここは陛下の執務室になります。」
この人、宰相だったんだ。陛下の頭脳役というところかな。
「ルイ・オウカです。おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「城の生活はいかがですか。何か不都合なところがあればおっしゃってください」
「不都合もなにも、良くして頂いています。ありがとうございます」
「それは良かった。では本題に入らせていただきます。私から国との契約についてご説明させていただきます」
ベイグ宰相にソファーを勧められ、座って書類の説明を受けた。とても丁寧に説明してくれたし、ウェンティアもこっそり補足してくれたので、時間はかかったけど内容もよくわかり私は書類にサインをした。
要は、これからは国のために働くことになるので、お給料をもらえるらしい。それと5番目の選ばれし者を探しているときにかかる費用などは全部国が出してくれる。当たり前と言えばそうなんだけど。そういうことを書面にしてくれたということだ。
「これで書類は終わりです。お疲れ様でした。また選ばれし者様たちがそろった時と、結界を張り終えた後に書類を作成いたしますので、その時は声をかけさせていただきます」
「わかりました。いろいろご説明していただきありがとうございました」
契約書って言うと、細かい文字がつらつらと綴られていて、後で読んでくださいと言われても多分読まないな~で終わっちゃうものだったから、ちゃんと説明してくれたことに感謝です。
「ルイ嬢、そちらは終わったか」
「陛下、おはようございます。昨日はありがとうございました」
宰相が立ち上がったのを見て、今度は机に向かって書き物をしていた陛下に声をかけられた。
「うむ、まぁ楽にしてくれ。そなたに少し聞きたいことがあってな」
「何でございましょう。私にわかることならば何なりと」
「そなたはレベル5の光属性を持つ者であり、また他の属性も使えると報告が上がってきているがそれは本当のことであるか」
そうだよね~、そういこともちゃんと報告されているよね。
『ウェンティア、ここはちゃんと言っておいた方がいいよね』
『そうですわ。ジークが伝えてあることは事実であることをルイからも言った方がいいですわね』
「はい、他の4属性はレベル2ではありますが、使えます」
「やはり本当のことであったのか。今までそのようなことは聞いたことがなくてな」
「しかし、他の属性は生活魔法程度のことしかできませんが。あ、私の精霊の属性、風魔法は精霊と一緒に使うとレベル2以上の効果があり、魔獣を倒すこともできます」
「なるほど。ジークフロイドやフランのように精霊と同じ属性の魔法は威力が増すのだな」
「そうですね。でもレベル2でも普段の生活がすごく楽になりました」
「ははは、昨日と言い、ルイ嬢は欲がないな。生活が楽になるか。そういうそなただから、魔力も多く、他の属性も使えるのかもしれないな」
「そのことについては精霊たちとも話をしたのですが、魔力が多いゆえに他の属性も使えてしまうのではないか、ということです」
「なに…魔力が多いから、であるか…では普通は魔力が少ないから1属性しか使えない…」
前にウェンティアと私の魔力については話をしたんだけど、魔力が多いゆえにっていうこの説は結構当たっているんじゃないかと思う。でも私個人としては、異世界人のチートじゃないかと思っている。でもそんなことは言えないけど!
「魅入られし者様たちも魔力が多いから2属性を使えるのか。そなたは特化した1属性と分配した4属性ということになるのかな」
「そうですね。そういうことになるのでしょうか」
なぜ他の属性も使えてしまうのか、と怪しまれるより、あり得そうな説明を言っておくと結構それで納得しちゃうものなのよ、とウェンティアが言っていたけど、確かに陛下はその説で疑問が晴れた顔をしている。これであまり追及されないといいんだけど。
書類も陛下とのお話も終わり、部屋を後にした。帰りもまたナイルスさんに送ってもらう。階段を下りて行くと下から声をかけられた。
「ルイ!」
なんと、そこにはジークさんが待っていてくれた。
「オウカ様、お時間を頂きありがとうございました。ここからはもう道案内は必要なさそうですね。私はこれで失礼いたします」
「はい、こちらこそありがとうございました」
ナイルスさんはまた階段を上がって行った。私はジークさんに歩み寄った。
「ジークさん、ずっと待っていてくれたんですか?」
「いや、用をして…少し前にここに来た」
「おい、ジーク。ちゃんと言えよ! かなり前から待っていたんだって。俺は待ちくたびれたぞ」
「アクティオ、余計なことは言わなくていい」
「うわー、そうなんですか。すみません。陛下と話をしていたら少し遅くなってしまったみたいで」
「気にするな。ところで、この後は時間は空いているか?」
「はい、特にすることはないので、部屋に戻ろうかと思っていたところです」
「では、庭に行ってみないか? 王城の庭というだけあって、なかなかきれいな庭なんだ」
「ホントですか! 行きたいです。少し外の空気を吸いたいなと思っていたところです」
「よかったわね、ルイ。ヒマだからまた寝ちゃうところだったわね」
「ウェンティアもそんなこと、言わなくていいから!」
いつも一緒にいる精霊たちは、話さなくていいことまでバラしちゃう。悪気がないのはわかっているけど、恥ずかし過ぎる!
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