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穴から落ちたソコは異世界でした  作者: 森都 めい
第3章 王宮 リーガル城で
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39. 4人で契約の儀式

ブクマ登録をありがとうございます。


「それで、式場に入る順番はどうするの?」



 アル様が聞いてきた。普通に考えるなら、アル様、ジークさん、フランさん、私、になるんじゃないかな。


「俺がルイをエスコートするから、フランはアルをエスコートしてやってくれ」

「え、えー。俺が、アルを、エスコートっすか? それはないでしょう。ジークがアルをエスコートするだろ、普通に考えれば!」

「あら、フランは私じゃ嫌なの?」

「そんな、滅相もない! 恐れ多いってことっすよ。アルフォンセ様をエスコートできるなんて光栄ですけど、俺では釣り合わないって言ってるんです」

「選ばれし者に釣り合いなんてないわよ。ジークはどうしてもルイと一緒に入りたいみたいだから、フラン、私のことよろしくね」


 ジークさんはなぜか一歩も引かない感じ。アル様はジークさんのことをよくわかっているのか、苦笑いをしていた。私としてはジークさんの方がいろいろ話したこともあるし心強いけど。でもアル様のエスコートなんて私でも恐れ多いと思うわ。フランさん、頑張って!


「そういえば精霊たちの姿が見えませんけど」

「あぁ、アクティオが『こういう時は演出が大事だ』と言って、精霊たちと打ち合わせをするそうだ」

「すごい、アクティオ、そんなところまで気を遣うんですね」

「この契約の儀式では、招待客の貴族たちにも精霊が見えるのよ。だからいかにも精霊ありき、って感じでやりたいそうよ」

「精霊たちが姿を現した時は観客の声がどよめくから、それは覚えておいた方がいいっすよ。俺の時は誰も教えてくれないから、驚いちゃって固まったっすよ」

「ありがとう、フランさん。覚えておきます」

「契約の儀式は、先日2人で行った時と同じやり方だ。人数が増えて、場所が変わっただけだから慌てることはない」

「はい、ジークさん。ありがとうございます」


 みんなが、不安に思っている私に気を遣ってくれる。本当に優しい人たち。昨日会ったばかりなのに居心地の良さをもう実感している。この人たちのためにも今日は私もちゃんとやらなくちゃね。



「準備が整いました。儀式の間への扉を開けますので並んでください」


 扉の前に立っていた護衛騎士さんが、室内に入ってきた侍従さんから連絡を受けて私たちに伝えた。アル様とフランさんが扉の前に立つ。その後ろにジークさんと私。ジークさんが右腕を差し出したので、私は左手を添えた。

 こんな状況、初めてだよ! 照れと緊張で気持ちがざわつく。心なしか震えているのがわかっちゃうかも。と思っていたらやっぱり気づかれた。


「ルイ、大丈夫だ。安心してついて来い」

 耳元でささやくジークさんの声が私の顔を赤くさせる。だからっ、耳元で言わないで欲しい…でも手の震えが止まった気がした。



 騎士さんたちが式場への扉を開けると、ラッパのファンファーレが鳴り響き、拍手が起こる。アル様とフランさんが式場に足を踏み出すと歓声が起きた。2人が3歩、歩き出したところで『行くぞ』と声がかかる。ジークさんと私も足を踏み出す。

 歓声が更に大きくなった。私たちを見守る貴族の方たちは30名ほどいた。会場の両側に立ち、皆さん笑顔で手を叩いている。その中をジークさんと歩くのは恥ずかしかったが、初めて見るものばかりでそちらに目が行ってしまう。


 お城の最上階の4階部分に当たるこの式場は天井がドーム状になっている石造りの空間だった。そのせいか少し空気がひんやりする。身が引き締まる思いがした。

 両側に立ち並ぶ観客の貴族の方々が見守る中、歩いて行くと大きな柱が4本、天井に向かって伸びていた。柱に囲まれた部分の床は中心から外に向かって円を描くように石が並べられていた。その中心でアル様たちが止まったので、後に続いて歩いていた私たちも止まる。


 前方には3段高くなったステージがあり、その奥には白い球が乗った大きな台座が備わっていて、天井に向かって球から光の筋が伸びていた。あの球がオーブなのかな。現実離れしている空間に、映画を見ているような気分になった。

 ステージ上の左側には、椅子に座った男女とその横に立つ青年、そして数歩下がって男性が一人。椅子に座っている人が国王陛下と皇后なのかしら。

 右側には白いローブを身に纏った男性が4人、並んで立っていた。そして、中央に立つ、同じような白いローブに白い帽子を被った、顎ひげの長いおじ様が進行役のようだ。



「ここにお集まりし皆様、お待たせいたしました。今日この日を迎えられることに感謝いたします。私は精霊守護庁長官のメイディオ・カスクと申します」


 会場から拍手が起こる。流暢に話し出したメイディオさんは話慣れている感じだ。少なくともフランの契約の時に一度行っているから、初めてではないはず。メイディオさんの話が続く。


「この国の4人目の選ばれし者様が見つかりました。風の精霊に導かれし、光属性のルイ・オウカ様でございます。ここに、他3人の選ばれし者様たちとの契約の儀式を行います」


 静かだった会場にひそひそと話し声が聞こえる。みんなの視線が私に集まっているような気がする。視線が痛い。穴でも箱でも隠れたい気分だ。

 ジークさんの腕にしがみついている私の手にそっと手が重なる。左側を見上げるとジークさんが微笑んでいた。


『お前は大丈夫だ。国一番の選ばれし者だよ』

 そう私に念話で話しかけるジークさんの言葉を胸に刻み、私は気持ちを奮い立たせた。そうだ、しっかり前を向いて、私にできることをやればいいんだ。

 私は答えるように、ジークさんの腕に添えている手に力を込めた。


「では、選ばれし者様がた、円を作ってください」


 メイディオさんの言葉で、またラッパ隊が奏でる。先ほどの登場の時の軽快なファンファーレと違い、今度は控えめな曲調だった。


 私たちは4人で手を繋いで円を作った。すると周りから歓声が起きた。みんな上を向いているので私も同じように上を向くと、ルキティアが天井から螺旋を描きながら舞い降りてきた。

 白いローブを纏った小さな妖精のようなルキティアは手を胸のところでお祈りの仕草をしながら降りてきて、アル様の頭上で止まった。

 次に降りてきたのはアクティオ。両手を広げゆっくりと円を描きながら降りてくる姿は神々しい。さすが演出を考えるだけあって、どうすれば見栄えが良くなるのかわかっているようだ。

 それからイグニティオ。羽なんてなかったけど…何か見えると思っていたら、炎を翼のようにアレンジしている。アクティオとは対照的に程よいスピードで下降してきた。

 最後に私のウェンティア。人前に出るのは実は好きなようで、舞いながら降りてきた。歓声が大きくなるとくるんと宙返りを披露。なかなか芸達者なのだ。


 それぞれの頭上に精霊たちが集まった。会場が静まると、精霊たちが手を繋いだ。そしてジークさんと2人で契約した時と同じように、その出来た輪から光が現れ、契約の言葉を発した。



「汝ら、いかなる時も我らを助け、我ら、いかなる時も汝らを助けよう。この大地の創造神イニティラウタスと精霊の始まりスピリウスに誓う ここに我ら精霊と…」


「アルフォンセ・オリゴ・ローモンド」

「ジークフロイド・ノービ・ファイネスト」

「フラン・ボウ」

「ルイ・オウカとの」


「「「「絆をここに結ばん」」」」



 言葉が終わると精霊たちの輪から光があふれた。精霊4人で作る輪は小さいけれど、とめどなくあふれる光はベールとなって私たちを覆い、光の粒は更に他の光に当たって反射しながら私たちに降り注ぐ。周りから歓声が起こる。拍手喝采だ。音が会場をこだまする。そして目の前の3人は光でキラキラと輝いてとても綺麗だ。

 アル様の笑顔は美しく眩しい。フランさんの笑顔は気持ちがにじみ出ている。ジークさんの方に顔を向けると、控えめに微笑んでいる。私と目が合うと口元が言葉を紡いだ。


『ルイ』



 それだけで私は顔が赤くなる…こんな特等席でこの3人の光景を見られるとは! 私はこの先何が起ころうともこの人たちを守ると心に誓った。



読んでくださり、ありがとうございます。


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