ED(現実)
「メアドの交換もOK。これでまたPCメールや通信アプリの招待状送るよ」
「ああ、そうしてくれるとありがたい。あとすまんが俺は仕事が急に忙しくなって数週間連絡できない場合がある。なるべく返事はするが、保証できない。もし何の返信もない場合はデスマーチにおしこまれている、と思ってくれ」
「そうか、まあ僕等も来年から就職活動だから、思ったように活動はできないかもだしな」
かみさーもうんうんとうなずいている。
「だいじょーぶ、きっとみんなうまくいく。聖王長がそう言ってた」
「ん? おい、サントノーレ、じゃない、弓子ちゃん。聖王長とやらにまた会ったのか? なんか意味ありげに出てきたくせにそのあと出てこずで、俺にはさっぱりだぜ?」
「僕もだ。彼女はいったいなんだったんだ? なんかあっちのコラボ世界に関係している登場人物っぽいけど」
「私にはよくわからなかったけど、あのコラボイベントにはいろいろと裏があるみたいよ」
「なんか小難しいこと言いそうだものね。私はこのままヒジリさんと大阪観光に行くけど、三人はどうする?」
「大阪観光か? 案内してやろうか? 京都人だが近いから通り一遍なら案内できるぞ?」
「む、むむむむむ。楽しそうだな。一日ぐらい休んでも、いいか」
「武田、今晩だけ、皆と一緒に……」
「旦那さまはそうなると予想されておりましたから任せる、と言われております。皆様も、今晩のホテルはご用意さしあげますので、どうか大滝もお付き合いさせてくださいませ。私も同行しますが」
「へっ、こりゃ心強い。まだ日が沈むのに時間はあるだろうから、急ぐか。やっぱ大阪なら新世界かね?」
「え? 新世界って怖いところじゃなかったっけ?」
「昔はな。今は深夜とかじゃなければ問題ないはずだ。武田さんもいるしな」
「分かりました。どこか一軒串カツ屋を抑えましょう」
「よっし、とりあえず弓子ちゃんと一緒に通天閣登ろうぜ。それから串カツパーティーだ!」
それから一週間、遊び倒してやった。当初の予定通り、大阪観光を強行したのだ。
月曜には上左近くんにも付き合ってもらったり、水曜の夜にはまた大滝家にお呼ばれしたり、土曜には再び弓子ちゃんと武田さんと合流したり、大阪、というか近畿の有名な場所で行っておきたいところは行き倒してやった。
幸い臥竜岡美桜、いや田中美桜さんも同行してくれているからカップル限定みたいな雰囲気なところも問題なく行けた。展望台とかな。
途中暑い日に約束通り、あずきバーを奢ってもらったし、満足だ。
……少しだけ話は聞いた。コスプレをやっているが、その際あの目立つ本名だとどこの誰かすぐにバレてしまうらしいから、田中と名乗っているそうだ。……そして驚いたのが年齢も偽っていた。24だと聞いていたのだが20だった。あはははは、流石に干支が一周分離れているのは、なぁ。
これらは今後も秘匿しておきたいらしいので、今後も田中さんで24才、ということになった。大滝家にはバレているらしいが。大学生ズに、まさか年上のお姉さんだと思っていた人が実は年下とかバレたら確かにやばそうだしな。
土曜はそのまま大滝家に再び泊らせてもらい、日曜。弓子ちゃんの友人だという子とも一緒に自宅でミッションブレイク2を遊んだ。アバターはぜんぜん違う見た目だったけど、リアルのその友人の姿が、あの聖王長そっくりだった気がしたのは、なんだったんだろう。
俺のパーソナルフォートレスは修理不可能と判断され廃棄処分となってしまった。また買い直さねば。弓子ちゃんのアカウントは新しくなったらしい。見た目はわからないし、普段IDとか気にしないからなぁ。
一週間遊び倒して、東京に戻り、みおさんとも連絡手段の交換を改めてし、別れた次の日。憂鬱な気分で出社すると、いきなり社長から呼び出しだと上司から怒鳴られて、慌てて社長室へ行く羽目になった。
「郡山くん、突然のことだが君には出向していただきたい」
ん? そんなこと社長自らが言わなくてもいつものことなのでは? と?を頭の上に飛ばしていると、社長が丁寧に説明してくれた。
俺は火消し役として優秀なので手放したくないと言ってくれたらしいが、代わりになりそうな人材を三人出向として送るし、俺の分の給料はあっちが用意してくれるとの超好条件を出され、相手は逆らわないほうがいい相手でもあったので受けることになった、と。
その企業名は聞いたことがあるところだった。何故ならミッションブレイク2の運営開発会社だったから。それに俺の待遇も給料も跳ね上がるようだ。少なくとも火消しとしてデスマーチとかはほぼないと言ってくれているそうだ。
……これか?! 現実での報酬って?! そして俺は一年後に出向先の会社でかみさーと呉くんとも出会うことになった。




