真実2
……、俺は、どうなった? 弓子ちゃんは……?
「わしじゃ、もうわかっておるようだから答えてやろう。ヒジリよ。お前は助かった。今エマがお前のアバターを癒やしておる」
なんだか俺の枕元に聖王長が立っている感じなのだが。本当に俺は助かったのか?
「ええい、細かいことは気にするな。サントノーレは、クニヒロごとアバターを失った。ブラックキャバリアのフォードはお前のおかげで生き残った。しばらくは動けないだろうが命に問題はない。今ハインリヒが全力で癒やしておるからな」
そうか。けど【現実】の弓子ちゃんは無事なんだろう?
「もちろんだ、そのためのシステムなのだからな。ただ弓子のあのアカウントはもうこの世界では使えない。まあすでに弓子は複数のアカウントを発行できるから問題はないがな」
聖王長が枕元から俺の正面へ来る。俺は霊体で浮かんでいる感じか。
「システムを利用してお前の意識内で直接接触しておるからな、自在よ。ヒジリは気づいたようだが、他のものは気づいていないようだな。臥竜岡美桜は薄々だが気づきつつあるがな。お前が教えるのなら明かしてもいいだろう。任せる」
それだ。名前のことはどういうことなんだ、知っているか?
「ある程度は察している。ID登録名は臥竜岡美桜だ。この名字は非常に限られた名字だからな、個人を特定できるのよ。だから一般的な名字を名乗っておったのだろう」
そういうことか、本人にとっては重大だろうが俺が気にすることでもなくて良かった。
そっちの気がかりは晴れたが、やっぱりあれか。この世界は実在するのか? VR世界ではなく。
「そうだな。お前が実在すると思えば実在する、というべきか。このVRシステムを通じてしか接触できない世界だからな。だからお前には実在を証明することは出来ない」
ならやっぱり弓子ちゃんでなくキャバリアを助けることを優先したのは間違ってなかったんだな。
「うむ。お前のお陰でフォードは生き残れた。そしてお前たちのおかげでエマたちも救われたのだ。装甲勇者よ」
俺達は、今後どうすれば?
「それはお前たち次第だ。しかしこの世界は今後も戦乱が続くだろう。預言者プロフィットが倒れ、しばらくは安泰だがな。出来るならお前たちには今後も、傭兵として助けてほしいがな」
ははっ。元々のゲーム設定がそうだったな。俺達は傭兵で金をもらって戦うんだ。今回の報酬は? 世界を救ったんだろう? そもそもあんたの立ち位置が分からない。
「報酬か。お前たちが【現実】とするあっちの世界で用意しておるぞ。わしは聖王長。聖王というのは聞いたよな? 聖王はお前たちの世界にもおる神みたいなものだ。わしはいうなればそれらのエリアマネージャーみたいなものじゃ。ある聖王が困っておったから、別の聖王へ援護を要請した。ということだ」
あれか? 異世界転移みたいなものか?
「そうじゃな。けどお前の世界にもMTAなんぞありゃせんだろ? わしが管轄しているどの世界にもない。しかしそれだけの戦力が必要だったのだ。だから作った、ということだ。お前たちに協力を願い出たのは、お前たちが技術人格ともに突出していたからよ。異世界転移には問題も多くてな。たいがいは戻ってこれぬし戻ってきても不幸になりやすい、本人も周りもな。それは転生であっても同様だ」
なるほど、VRシステムは架空の戦力を実現させるための装置でもある、ということか。
「そう理解してもらって構わん。わしとしては満足な結果だ。ありがとう。今後も理解したうえで付き合ってくれると嬉しい」
痛いのは勘弁なんだが、まあ状況次第かな。
「そうか。なるべく善処するよ。お、そろそろお前の体が目を覚ましそうだ。このやり取りはお前には夢を見た、と感じるだろう。ではさらばだ。また会えるといいな」
そういって聖王長は消えた。と、同時に俺は咳き込んだ。だけど痛みはあまりない。俺はパイロットスーツを半ば剥がれ毛布で包まれつつ、キャバリアを脱いだエマに膝枕されていたようだ。
「装甲勇者ヒジリ様、お気づきになられましたか?」




