目的
シリンダーは、自分がつけられてることに気付いていた。
(いったい誰が・・・)
シリンダーはさりげなく後ろを振り向くが、人やモンスターの姿はない。
テンビンはシリンダーに気付かれないように隠れているが、シリンダーに対する殺気がただ漏れしているのだ。
(相手が誰か分からないが、この極秘任務についてこられるのも厄介だ!)
シリンダーは再び後ろを振り向く。やはりその殺気を出してる者の姿は確認出来なかった。
「そこにいるのは誰だっ!!」
「・・・・・」
返事がないが、確かにそこから人の気配がする。
「いるのは分かっている!さっさと姿を見せよ!!」
「・・・・・」
シリンダーが言い終わってから数秒が経過していたが、隠れている人物が出てくる気配がない。
(仕方ない・・・)
シリンダーは数秒目を閉じると、決心したかのように腰につけている剣に手をやり数歩近付いた。
その瞬間、隠れていた人物が出てくる。
「なんだ・・・」
シリンダーは、その出てきた相手が顔見知りだったので、殺気を放っていた事を忘れて安心する。
「テンビンではないか。どうしてここにいるんだ?」
シリンダーは、テンビンに笑顔を見せて訪ねるが、テンビンは表情を変えずにじっとシリンダーを見つめている。
「はぁ~・・・。作戦変更ね・・・」
テンビンは、何かを諦めたかのように目を閉じて、決心したかのように呟いた。
「えっ?作戦?」
訳が分からずにシリンダーは訪ねたが返事はなかった。
「っ!!?」
シリンダーは、とっさに剣を構えて数歩下がる。テンビンから自分に対する強力な殺気を感じたからだ。
「ど、どしてだ、テンビン!何故、私に対してそんなに殺気を放つんだ?」
「決まってるわ!」
テンビンがやっと答えてくれた。しかし、彼女はシリンダーに向かって杖を向けている。
「あなたを殺して、あなたが持ってる地図を奪うためよ!」
言い終わると同時に、杖が赤く光る。
「くっ!」
シリンダーは、数歩下がったことを後悔した。
相手は魔法を得意とする相手だ。魔法を発動させるには、長い詠唱を唱えなければならない。
しかし、あまりにもの殺気に思わず数歩下がってしまったが、詠唱が終わるまでには斬りかかることはできる。
(いけるっ!!)
そう思い、シリンダーが二歩前に出た瞬間だ。
「以下略『ファイヤーバード』!!」
「!!」
テンビンの杖から、炎の鳥がシリンダーに向かって飛んでくる。
「くっ!!」
シリンダーはバランスを崩しながらもその攻撃を交わし、地面に倒れた。
「バカなっ!無詠唱だと!!」
魔法を発動させるには、詠唱が必要だ。
しかし、ごく稀に無詠唱に成功させる人物が現れるという。