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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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新入り

遅くなり申し訳ございません。次もいつになるか分かりませんが、一応投稿します。

 国から支給された武器と鎧が行き渡るまで一か月近くかかった。

 その間は都の外でもう訓練だ。脱落者が出るかもしれないと心配したが杞憂きゆうだった。

 合格者たちの行く当てはこの部隊しかなかったのである。

 今日も訓練が終わり、夕飯をとった後、俺たち小隊長以上で焚き火を囲み、明日の予定を話し合いながら雑談する。

 その最中さなか、タナソがこう切り出した。


「どうするんですかね、彼ら」

「と言うと?」

「西の国へ行って、賊どもを退治たいじした後ですよ。もうこの国へは戻れないかもしれないじゃないですか。そうなった場合、何をして生きて行けば良いのか分からないでしょう」


 コウが続きをうながすと、彼は新たに加わった彼らのすえを案じた。


「そうだな、兵の中にも半ば追い出された奴も結構いるようだが、戻って来て欲しいと言われた奴もいるから、一概いちがいには言えないだろう。しかし……」

「戻れない人たちが増えすぎた。彼らの処遇をどうするかが問題になるね」


 ブヤは兵たち一人一人の事情をある程度聞いていたので、内情を良く知っていた。だからこそ今回の大幅な増員に頭を痛めていた。

 ブヤの言葉を引き継いだモズが事態解決後の対応を議題にする。


「西の国の問題が片付いたら、本当ならこの国に戻って来て解散するんだっけ? 先に行ってる百人も合わせれば三百人かあ。解散しなかったら、行き場のない、これほどの人数を国が雇い続けられる力があるのか疑問なんだよね」

「どういうことだ?」


 モミが確認を取りながら問題点を上げ、ブヤが首をかしげた。

 合格者たちをきたえ始めてから、モミも女性代表として俺たちの話にじることが多くなった。


「今訓練をしてる間の食糧しょくりょうを国が出してるんだけど、管理してる役人が倉庫からどんどん減っていくのを見て悲鳴を上げてるの」

「あー……」

「それは、のぞうすだな」


 モミが現状を語るとモズがひたいに手を当ててうめき、ブヤの顔が珍しく引きつった。


「兄貴もどうするのやら」

「兄貴? ……もしかして、西の国へ行ってるナガル王子のこと?」


 彼女はひざの上にひじを乗せ頬杖を突くと、実の兄を心配したので、俺が訊き返す。


「そう。あいつ五男だから戻って来ても、将来は良くて兵隊の隊長くらいしかなれないのよ。上を目指すなら、どっかの国の有力な一族の娘と結びつかないといけないんだけど……」

「もうどこかの国の娘と婚姻してるんじゃなかったんですか? ……というか、あの人既に結婚してたはずでは……」

「子供もいるはず……」


 とっくに結婚を済ませているはずなのに、これ以上嫁さんを迎え入れるつもりかとコウとタナソが驚いた。

 カダの町での一件以来、親交が深まったナガルは兵たちと会話するようになり、世間話が増えてナガルの身の上もある程度兵に知られるようになった。その上でこの話だ。驚くのも無理はない。


「跡継ぎと言うのはね、跡目あとめ争いさえなければ、王族では多い方が良いの。想像してみて? 国を任せる後継者が馬鹿しかいなかったら民が不幸になるし、最悪国がほろぶわよ。話を戻すけど、さすがに五男になるとね、立場が低くなるから相手も下に見てくるんで、兄貴は嫁にめぐまれず、少し家柄の良い娘と結婚したの」

「……王族も大変なんですね」


 モミの言葉にコウが同じ男として同情する。

 本人にそんな気は無くても、下に見られるというのはきつい。


「だからこそ、今回の騒動で功績こうせきを上げれば、お高くまってる女どもが振り向いてくれるんじゃないかって奮起ふんきしたのよ。間違いないわ」


 間違いないわって、直接本人から聞いたんじゃないのか?

 そう感じた俺は彼女に尋ねる。


「ナガル王子本人に確認を取らないでそう思ったの?」

「あたしの勘を信じなさい」

「勘……」

「事実の確認、大事。いつか痛い目見るぞ」


 タナソが呆れ、セリの忠告ちゅうこくを彼女は聞こえないふりをしてそっぽを向いた。

 俺がナガルと行動しているときに訊いた言葉を思い返す。

 うん、ナガルが結婚してるという話だけで、男女の関係云々を聞いた事が無い。

 ただ、彼の将来を妹としてひどく心配しているのが分かった。


「それよりも、新入りたちの将来なんだが、まずは生き残れるかどうかが先なんじゃねえの?」

「まあ、そのための訓練をしてるんだけど、どう? 彼らの上達具合は? こっちで担当してる人たちはまずまずだと思う」


 セリが話を戻したので、俺は気持ちを切り替えて現状を語り、セリに問い返した。


「俺のところは狩人かりうどをやってた奴らをもらったから、覚えが良いぞ。ぐんぐんびてる」


 セリの偵察隊は単独行動に慣れてる者たちを回したから、特に問題はないようだ。


「槍もなんとか使えるようにはなってきたかな、というところかな」

「まだ複雑な動作はできないけどな」


 槍を教えているコウとタナソは、新入りにしてはまあまあという感想だ。


「あたしの方も徐々にだけど上手くなってはいるかな。もっと時間が欲しいのが本音だけど」

「俺のところは一対一が不安だから、二人がかりで対処するしかないのが残念だな」


 モミがこの地を離れるまでの時間の足りなさを訴え、ブヤは現状の評価をする。


「僕は読み書きができる人が一人だけ見つかったから、報告書などの書き方を教えてる。まだまだつたないところがあるけど、すじは良いから役立つはずだ」


 モズのところに手伝いができる人材が見つかったのは朗報だ。

 これで夜遅くまで書き物をする手間がかからなくなるかもしれない。


「モズ隊長、時間があったら僕も手伝います」

「ありがとう。でも、今は新人の育成と戦力化に力を入れて」

「分かりました」


 俺はモズに手伝いを申し出たが、彼に優先事項を言われてしまう。

 事実だから承諾しょうだくした。

 出発までの準備が整ってきた。そして、一日中訓練している時間は無くなりつつあった。

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