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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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後追い

今日は珍しく早く帰宅できたので投稿します。

 武器と鎧が全員に行き渡ってから五日後、俺たちは西の国へ向け、都を発った。

 どちらかと言えば、国の食糧(しょくりょう)庫の圧迫(あっぱく)に耐えかねた役人の訴えが王の耳に入り、出発するよう急(せ)かされたのである。

 川沿いを下流に向けて進み、ヤウミの町にたどり着いたら、南へ向かう。

 ミマツの国境を越える頃、ちょっとした騒ぎが起きた。

 偵察隊を前にして、彼らの後ろを小隊が縦に三つ並んで歩くといういつもの隊列なのだが、後方が騒がしい。

 山賊の類(たぐい)ではなさそうだが。

 モズの指示で部隊の動きが停止し、後方の様子を確認してくるよう兵をやった。

 少しして兵が戻って来た。


「報告。都から兵が一人やって来ました」

「何か問題でも起きたのかい?」

「いえ、私にも良く分からないのですが、『モミ様に会わせろ』などと言っておりまして」


 モズが尋ねると、兵が首を傾げながら言った。

 その場にいた俺とセリ、モズとブヤの四人が顔を見合わせる。


「おいおい、あいつ、何をやらかしたんだ?」

「モミ様(・)?」

「彼女の事を良く知ってる立場の人のようだね」


 セリが困惑し、ブヤが様付けに顔をしかめ、モズが冷静に分析する。

 モミを様付けで呼ぶ程(ほど)慕(した)う兵に俺は思い至(いた)る。


「……まさか」

「カゼ?」


 呟(つぶや)いた俺の言葉を聞いたモズがどうしたんだと顔を向けてくる。


「僕、そいつの事を知ってるかもしれません。ちょっと行ってきます」

「俺も行く」

「モズ隊長はモミ、タナソ、コウを呼んで集めておいて下さい。そいつを連れてきます」

「ああ、分かった」


 俺が騒ぎの下へ行こうとすると、セリが同行を宣言した。

 部隊全体に騒ぎを大きくするわけにはいかないと判断して、小隊長以上を集めるよう、俺はモズに頼み込んでから走り出す。

 騒ぎの下へ駆けつけると、どこかで見たような顔の人物が喚(わめ)いており、対応していた兵たちが困り果てていた。


「様子を見に来たぞ。……やっぱりお前か」

「カゼさん、こいつです、さっきからモミ様に会わせろと言ってて……」


 兵たちに話しかけながら、部隊を追いかけてきた人物を見て呆れた。

 都の中で俺に剣で斬りかかってきた奴だ。

 兵が弱った様子で俺に事情を説明しかけたところで、奴が俺に気付いた。


「ん? 誰だ、お前は。……ああ! 貴様はいつぞやの!」

「はい、ちょっと黙ろうか。話がややこしくなるから、こっちへ来てくれないか?」


 騒ぎが大きくなると困った事態になりかねないので、奴を誘導しようとする。


「貴様、誰がお前なんかに従うと……!」

「会わせてやらないぞ?」


 奴は抵抗しようとするが、俺が嫌がらせのために言うと、彼は歯ぎしりする。


「くっ、卑怯(ひきょう)な!」

「……はあ。とりあえずついてこい」

「対応、ご苦労さん。後は俺たちがやるから」

「お願いします」


 セリが対応した兵たちを労(ねぎら)い、俺たちは奴を連れてモズたちの所へ戻る。

 モズたちは兵たちに聞かれないよう、離れた位置に集まっていた。

 その中にいたモミの姿を見つけた奴は、いきなり駆け出そうとしたので、咄嗟(とっさ)に奴の右腕を掴(つか)む。


「モミ様、って、何をする!?」

「走るな、歩け! モミが逃げ腰じゃないか!」


 俺の言葉通り、モミが嫌そうな顔で腰を落とし、逃げる態勢に入っていた。


「何を馬鹿な!?」

「お前、嫌がられてんだよ、自覚しろ!」

「いいや、そんなはずはない!」

「ああ、なんとなく分かってきたぞ、こいつとあの女の関係」


 その騒ぎを間近(まぢか)で見ていたセリが呆れた顔で呟(つぶや)く。


「セリ、見てないでこいつを押さえろ、結構力あるぞ!」

「へいへい」

「くそ、折角(せっかく)の再会に水を差しやがって。離せ!」


 奴は左右から俺とセリに取り押さえられ振りほどこうとするが、二人がかりのためか無理だった。


「だったら都の外で訓練してたときに会いに来いよ」

「そのときはこっちだって色々忙(いそが)しかったんだ。それに夜に会いに行くのは無粋(ぶすい)だろう!」


 一番会いやすかった時期に来ないで何をしていたんだと思いながら言うと、意外な答えが返ってきた。

 何が忙しかったのか知らないが、こいつ、たまには良い事言うな。


「とりあえず歩けよ。そうすればモミだって逃げないだろう」

「ぬう」


 奴は俺の言葉に不承(ふしょう)不承(ぶしょう)従い、ゆっくりと歩き出す。先ほどまでの奴の態度にびびっていたモミはそれを見て落ち着きを取り戻したようで、姿勢を正した。

 俺たちは歩きながら、念のため奴に注意する。


「言っておくが、兵たちにはモミの正体は秘密(ひみつ)にしている。うっかりばらしたりするなよ?」

「それは私としても理解している」


 その返答にセリが困惑する。


「じゃあ何で様付けなんだよ。あれだけで兵たちから身分の高い人だと疑(うたが)われるだろうが」

「む。……だが、私がお慕(した)いするお方だ。呼び捨てなどできはしない」

「……こいつは」


 セリが呆れてため息をついた。

 そんな会話をしているうちにモズたちの下に辿(たど)り着く。


「モズ隊長、お待たせしました」

「ご苦労様。それで、そちらの方は何者なのかな? 目的も言って欲しい」


 モズに短く伝えると、彼は俺への労いもそこそこに奴を問いただした。

 奴は今のやり取りでモズがこの部隊の中で一番偉い人物だと理解したのだろう、居ずまいを正して言う。


「はっ。私はトウヤと申す者。モミ様が西の国へと向かうと聞き、居ても立っても居られずに追いかけてきた次第。是非、私も同行させていただきたく願います!」

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