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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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朝礼

 翌朝よくあさ

 昨日の相撲で不安が解消かいしょうされたのだろう、皆の顔は晴れ晴れとしている。


「おはようございます、カゼさん」

「今日も良い天気ですね、カゼさん」

「カゼさん、今夜の稽古けいこ、よろしくお願いします」


 だというのに何故だろう? 心が休まらないのは。

 さん付けで呼ばれるほどえらくないぞ。この時代ではまだ十二才なんだ。


「もう、皆、年相応としそうおうあつかってよ。落ち着かないんだ」

「いや、それはもう無理じゃないかな」


 背後から声をかけられ振り向くとモズとブヤ、それにセリが並んでいた。


「おはようございます、皆さん」

「うん、おはよう。昨日は良く眠れたかい?」

「お陰様かげさまで。久しぶりに体を動かしたので、丁度ちょうど良い気晴らしになりました」

「それは良かった。今朝は朝礼前にちょっと話があってね」


 挨拶あいさつもそこそこに本題に入る。


「何でしょうか」

「ほら、セリ」


 どこか不貞腐ふてくされた様子のセリが、ブヤに背中を押されて前に出る。

 セリは少しの間無言だったが、観念かんねんしたように目をそらしながら話し出す。


「き、昨日は悪かったな。その、みとめないって言ったこと」

「そのことですか。で、認めてくれますか?」

「ああ、認める。認めるしかないだろ。あんなもん見せられて」


 昨日セリと試合をした後、俺は他の皆ともやり合って、ちぎっては投げを繰り返したことを言っているようだ。

 強さを見たいって言ったから、それに答えただけだ。


「それは良かった。……ということは、僕が小隊長しょうたいちょうですか?」

「とりあえず、そこは皆を集めてから話すよ」


 朝食を終えて野営場所を引き払うと、皆が思い思いの恰好で座って集合した。彼らの前にはモズとブヤ、それに俺が立っている。

 モズが代表して挨拶する。


「えー、皆おはようございます。昨日のばんの相撲でカゼ君の実力は分かってもらえたと思う。あらためて彼を三十人からなる小隊長に臨時りんじ任命にんめいしたい。この決定に異議がある者はいないかな? ……いないようだね。次に残る二人の小隊長と十人からなる偵察ていさつ隊長を決めたい。昨日の相撲の結果を参考にするので、呼ばれた者は前に出てくるように」


 彼の言葉に皆が俄かに活気かっきづく。


「俺かな、俺かな?」

「いや、お前、投げ飛ばされてたじゃん」

「どこまで耐えられたのかが採点基準かな?」


 皆の期待を受けてモズが言う。


「まず偵察隊長にセリ、君にやってもらう。」

「え、俺?」


 まさか呼ばれるとは思っていなかったのだろう、セリが不思議そうな顔をする。


「君がいの一番にカゼ君に向かっていき、三度も挑んだ積極性せっきょくせいを考えて任命することにした。……やってくれるね?」

「お、俺で良ければ!」


 任命されたセリの顔が紅潮こうちょうしている。

 期待を受けたのがうれしいんだろう。


「残る二人は、タナソ、コウ。君たちにやってもらう。二人はブヤも含めてカゼ君の攻めに対し、長く持ちこたえたからだ」

「はい!」

「頑張ります!」

「二人とも、自己紹介を」


 モズにうながされ、二人がそれぞれ名乗る。


「タナソです! 年は二十二、ヤブイワ村出身、よろしく!」

「コウです! 年は十九、ヤマカミ村出身、よろしく!」


 二人ともブヤに負けずおとらず、立派りっぱな体格の持ち主だ。

 相撲のときは体の大きさだけじゃなく、彼らが持っていた技術でも少し手こずった。

 ちなみに、ヤブイワとヤマカミはヨシマ村から東へ行った所にある。ヤブイワの方が近くて、ヤマカミはもう一日歩いた所にある。


「で、だ。ブヤがこの四つの隊をまとめた副隊長に任命して、僕が隊長をやりたいと思っている。何か異論はあるかい?」

「あるぞ、さっきから何仕切ってんだ!」

「そうだそうだ!」

「なら、君たちが隊長になって、皆の面倒を見て、食料の管理をして、これから戻る王様への文書による報告とかしなきゃいけないんだけど、やるかい?」


 反論する者たちはいたが、モズのにこやかな質問に途端に沈黙する。


「僕は将来文官を目指しているのさ。これも、その修行の一環いっかんとしてやっているんだけど、君たちも文官を目指すかい?」

「あ、いや、俺は……」

「俺たちは戦で手柄を上げて、上に行きたいと考えてるんで……」


 皆からそれ以上、反論が出てこないのを見たモズは頷く。


「決まりだね。……それから、ここで紹介しておきたい人がいる。ノエモンさん」


 誰?

 そう思っていると、皆の中から一人進み出てきた。


「ノエモンだ。知っている人もいるかもしれないが、ミマツの知らせを持って来た伝令だ。よろしく」

「というわけで、一揆が起きた直後までの事をある程度知っているそうだ。故郷が心配な人はミマツに戻るまでの間、そうだね、休憩中きゅうけいちゅうに訊くと良いんじゃないかな」

『はいっ』

「ああ、いや、知っていることだけしか話せないからな? 当てにされても困る」


 お、皆嬉しそうだ。俺も機会を見計みはからって訊こうかな。


「それじゃあ、皆、それぞれの隊長の所に別れて出発しようか」


 モズに言われた通り、皆は俺たち小隊長の所に集まってきた。

 おい、待て、何で皆俺の所に集まる。


均等きんとうに別れろ、均等に!」


 ブヤの言葉に皆は互いに小突こづき合い、押しの弱い人が舌打ちしながら他の小隊長の下へ向かう。

 そんな光景を見て小隊長たちは苦笑した。


 ミマツの国の部隊は一路東へと向かう。

 先頭は山賊さんぞく警戒けいかいして、セリひきいる偵察隊。その次に俺がいる小隊。中央にタナソが率いる小隊。殿しんがりにコウが率いる小隊で、モズ隊長とブヤ副隊長はタナソの小隊にくっついて行動している。

 行きのときと比べて半数に減少した帰りは、山賊から見るとどううつるのだろうか。

 そもそも、計百人の部隊に襲い掛かる勇気を持った奴らなんていると思わない。

 そう考えていると、前方にいた偵察隊から一人、こちらに駆け寄ってくる。


「カゼ小隊長に報告! 左手の森の中に怪しい人影あり。我々を見て何処いずこかに立ち去った模様!」

「んー、モズ隊長に報告して。先を急ぐから手出し無用むようと言われるかもしれないから」

「分かりました」


 偵察員はそう答えると後方へ駆けていった。少しして、先ほどの隊員が戻ってくる。


「モズ隊長から『手出し無用、ただし、何か仕掛けてきたら撃退するように』、とのことです」

「ありがとう。持ち場に戻ってね」

「はい!」


 なるべく同族で殺し合いはしたくないなあ。……相手がおかした罪にもよるけど。

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