機械のような天使よりは、悪魔のような鬼がいい
滞在は5日間。
天国、名物。猿と温泉露天風呂と酒。
「ホント、ここは天国だ。温泉はあるし、草原には清楚な美女が大勢いるし若い。それに、なんといっても優しい。地獄の補佐官どもとは大違いだ」
アイツらなんて、見た目は美女揃いだが中身は悪魔だ。
まぁ、鬼だけどなぁ……。
俺は、周りに広がる広大な草原を眺めながら、風呂に浸かり日頃の疲れを癒していた。
そして、なんといっても風呂から見える美女たちの笑顔、癒しだ。
美女を見ながら温泉に浸かれる日が来るとは感激の涙が出そうだ。
グスッ……。頭に乗せていたタオルで鼻を吹いた。
「ウキッ、ウキ、ウキ」
俺の隣にいる猿も露天風呂に入っている。
こいつは、桃源郷に住む猿らしいが猿曰く毎日露天風呂に入るらしい。
「いやー、ここは天女を見るのに特等席なんですか」
「ウキッ(そうだね)」
「良いっすねぇ。毎日美女の笑顔が見れて」
「ウッ。ウキッー(そうでもない)」
「そうなんすか」
「ウキッ(まぁそのうちわかる)」
俺は、風呂を出て着物に着替えた。
俺は天女達や動物たちと騒がしく酒を飲み騒ぎ宴会を楽しむことにした。
「どうぞ、閻魔様ここの名物のお酒です。お召し上がりください」
「ありがとう。そういえば、天国に来た人間ってどうしてるんだい。さっき見たときは、農作業を黙々としていたけれどももう遅いから帰って寝るのかい」
「いえ、そんなことはしませんよ。彼らはずっと働き続けます」
「えっ」
「ここは、天国ですから疲れることもありませんし、与えられた仕事をすることが義務になっています。そして、その仕事において苦痛を感じることすら罪になります。罪を犯したら即「○○」行きになります。ですから彼らは一生休むことなく働き続けます。もちろんその間笑顔を絶やしてはなりません」
「それって………」
「ここでは、皆が平等に仕事を与えられ、笑顔のまま働き続けるのです。素晴らしいとは思いませんか? もちろん、このルールは私たち天女にも当てはまります。ですから、天女同士は今まで一度も会話をしたことがありません。会話は争いの元になります。いままで人間同士はお互いの意見をぶつけてきたからこそ悪を働いたと天国では研究されました。ですから、お互いコミュニケーションを取ることを禁止しました」
「…………」
俺は言葉を失った。改めて見るとそこにいる天女達はお互い一切会話をしていない。ただ陽気な音楽が流れているだけだった。そして、天女達をよく見ると一切目に魂のない笑顔を浮かべ続けている。俺は、異様な恐怖感に駆られた。そういえば、さっき露天風呂にいた猿がいない。俺は、天女に勇気を出して聞いてみた。
「そういえば、さっきの猿は……」
「あぁ、彼ならそこにいますよ」
天女は、俺の目の前に並べられた料理を指した。そこには、綺麗に並べられた色とりどりの料理が並んでいたが、俺は吐き気を抱えながら、その場から走って逃げ出した。
「もし、俺があの食事に手を付けていたらと思うとゾッとする」
俺は全速力で天国のゲートへ向かった。そこには、天使が居た。
「閻魔様、ようこそこちらは天国ゲートです。お帰りの際は、書類に申請をお願いします」
その天使の瞳にも光はなかった。俺は、急いで書類を書き地獄に戻った。
地獄の門前
そこには、キャサリンがいた。彼女は、眼鏡をクイッと掛け直すと若干心配そうな顔をしていた。
「閻魔様。どうでした天国の旅は」
「キャサリンー。グズッ」
俺は、キャサリンに抱きついた。
「お帰りなさい、閻魔様」
機械のような天使よりは、悪魔のような鬼がいい




