閻魔の逃亡
ここは地獄にある閻魔の間。
亡者が三途の川を渡ると一旦は皆ここを訪れる。
そして、閻魔の判断で地獄行きか、天国へ行けるかが決まる。
俺は閻魔。日本でも有名な地獄の審判だ。
今は次々に三途の川を渡って来てこの広間を溢れんばかりに埋め尽くす亡者に手を焼いている。
俺の仕事は、三途の川を渡って地獄に送られてくる罪人の魂を裁くことだ。
人間が誕生した時代から俺の仕事は始まった。その頃は人間なんて生き物はそんなにいなかったから、月に何回か裁けば良いだけだった。しかし、最近の現世の人口が増えた。増え過ぎだ。マジで、おっ、マジッとか今風だよな。
「閻魔様、ボーとしてないで下さいよ。ほら、次の亡者が次々と来ますよ」
俺の隣にはナース姿の補佐官が居る。名前は、キャサリンだ。眼鏡を掛けていていかにも仕事が出来そうな金髪美女だ。コイツ等補佐官は、俺を上司とも思わず休みも与えない。マジでブラックだよなぁ。あっー、服は俺の好みだ。
昼の12時過ぎ。やっと休みだ。隣にいる補佐官が表情一つ変えずに俺に向かって食事を差し出してきた。
「閻魔様、お食事の時間です。最近は百年前よりもさらに人口が増えて仕事が終わりません。なので、
カ○リーメイトです。これで早急に食事を済ましてください」
あー、出たよ。カ○リーメイト。俺は、ナイスバディーなナースの補佐官の腕からカ○リーメイトを獲って口に運んだ。粉っぽいものが口に広がる。モグモグッと俺は一本を二口で食べ終えた。
「お前、さぁーー。確かにカ○リーメイトは上手いけど。これで、百日連続だよなぁ」
「必要な栄養はそれで充分です。それに閻魔様は食べなくても死にません。ここ地獄ですし」
「いや、俺が過労死するわ」
「大丈夫です、もう死んでいます。よって、死にません。24時間働き続けても大丈夫です」
キャサリンは、顔色一つ変えずに答えた。おいっ、コイツ等補佐官は俺のことを機械か何かとでも思っているのかよ。
そして、俺が食事をしている間にも盲者は押し寄せてくる。もう、門の中には入りきれそうにない。とうとう、亡者たちが騒ぎ始めた。
「おーい、閻魔早く裁けよ。もう俺は5日もここで待ってるんだぞ」
「ホント、早くして頂戴地獄で友達と待ち合わせをしているのよ」
もう、嫌だ。この状況……。んっ、待てよ。俺は名案を思い付いたぞ。
今度は、手前にいる亡者が叫びだした。
「閻魔、さっさっと仕事しろよ。このノロマ―」
「てめぇ、誰をノロマだ。」
俺は、杓と机を前に思いっきり投げた。前にいた亡者が四方八方に散らばった。
「やめてやる。俺は閻魔をやめる」
俺は、走った。必死に走った。補佐官たちが慌てて、俺の後を追いかけてくる。
「閻魔さま、どこに行くのですか。こんなにたくさんの亡者を置き去りにされては、こまりますよ。戻ってください」
いつも、無表情のキャサリンが珍しく慌てふためいた。おー、アイツあんなに驚くのか。
俺は、一目散に地獄の門の入り口に向かい走った。後ろに補佐官の姿が見える。しかし、地獄で最強の俺には追いつけまい。やっと自由だぁー。
地獄の門を潜ると空へ羽ばたいた鳥のように空中を舞った。そして、そのまま地獄を抜け出して俺は天国へ逃げ込んだ。
天国、門の前
輪っかを頭に着けた笑顔の天使が居た。俺の目の前には、空港に良くあるゲートが設置されていた。
「こんにちは、天国へようこそ。ここの滞在にはビザの申請が義務となっております。そこの申請書に現在のご住所とお名前をお書きください」
天国にはこんなシステムがあるのか、地獄よりも現代的だなぁ。天使から、申請書とペンを受け取り記入した。天使に、住所と名前を書いた紙を渡した。
「あー、閻魔大王ですか。外交か何かでご滞在ですか。それともバカンスですか。旅行なら桃源郷がお勧めですよ。あそこは、桃が名産品ですからお土産にも困りませんよ」
「あー、そうなんだ。へぇ」
天使は、書類に持っていた大きなハンコを押すと俺に書類を返した。そして、俺に5日間の滞在許可を出した。
「では、日頃の疲れを存分に癒して来てください」
天使に、案内され俺はゲートを潜り抜けた。ゲートを貫けるとそこには、世界が広がっていた。
天国には、広い平野になっていたそこに立ち並ぶ農家も畑も桑畑もすべてが美しく輝いていた。特に桃の木があっちこっちに生えていて良い香りがした。そこに行きかう人は皆自由な服装をしていてみな微笑みを絶やさず働いていた。衣を羽織った天女が琴や笛などを吹いていた。
「おー、ここが天国かぁ。やっぱり綺麗な所だぁ」
一人の天女が、ユラユラと白い衣を揺らしながら俺の方に来た。
「まぁ、こんにちは素敵なお召し物ですねぇ。ここの、名物としては、私どもの演奏会や自慢の温泉などがありますよ。どうぞ、寛いでください」
俺は、楽しそうな雰囲気に飲まれて天女に着いて行った。
続く




