前編
「ハァ……。日本ニ働キニ来タケド給料安イヨ。騙サレタネ」
「ソウダナ。コノママジャ故郷ニ仕送リドコロカアノ世送リダゼ……」
日本に出稼ぎに来ていた2人は飢えていた。
「……コウナッタラアレヲヤルカ?」
「……フフッ。私タチヲ騙シタ日本ガ悪イネ」
収穫を控えた夜のリンゴ園。
「急ゲヨ……」
「誰ニ言ッテル。慣レテルカラ余裕ネ」
軽トラックを横付けしてカゴにリンゴを入れていく。
「アハハッ! コレヲ外国人コミュニティーデ売レバ足モツカズ大儲ケネ!」
「そこまでですわ!」
「誰ダ!」
照らされたライトをバックにドレスを着た女が現れた。
「私の名前は京香。日本を守る女子プロレスラーですわ!」
「フンッ! 女ナンテ怖クナイネ!」
「返リ討チヨ!」
「セバスチャン。あれを」
「かしこまりました。お嬢さま」
執事が用意したのはロケットランチャーだった。
「エ? ソレハプロレスト関係ナイ……」
「これが私のプロレスですわ!」
放たれたロケットランチャーを受けた2人は母国まで飛んでいった。
「みねうちだから死にはしないわ……」
「お嬢さま。お父上がお待ちです」
「あらいけない!」
屋敷で父と夕食をとる京香。
「京香。また外国人窃盗犯を退治したそうだな」
「はいお父さま。でも彼らも弱者です。悪いのは日本人の数を減らしておきながら外国人を騙して連れてきた国と企業ですわ」
「ふむ……。ところでお前に頼みたいことがある。タイムマシンが完成したから例の任務をお前に任せたい」
「まあ! それは光栄ですわ!」
「おめでとうございます。お嬢さま」
タイムマシンを開発している研究室。
「この携帯端末が過去にタイムトラベルできる凄いやつ、略してKTSだ。現在から先の未来には行けないというだけで過去から現在の時間までなら好きな時間に戻ることもできる。ただし数時間単位でしか調整できないから現在の時間から数分前に飛んだりはできないぞ」
「持ち運びできるなんて素晴らしいですわ。セバスチャンが持っていて」
「かしこまりました。お嬢さま」
「過去に行って日本が戦争に負けた理由を調べるのだ。それがわかれば戦争の脅威にさらされている日本を守るヒントになるだろう。だが我々の研究を何度も妨害してきた敵がいるということを忘れるな」
ドンドンドン!
「ここを開けろ!」
「くっ! 奴らか! セバスチャン! 京香を頼んだぞ!」
「お父さま!」
KTSが光を放って京香と執事を過去へと導く。研究室から戦時中の日本へと移動した。
「……あら? なぜ犬小屋がこんなに並んでいるのかしら?」
「お嬢さま。戦時中の日本の家はこんなものです」
「そうなの? てっきり犬の展示販売所だと勘違いしましたわ。よくこんな貧乏人たちが戦争をしようと思いましたわね。……日本が負けた理由がわかったのでもう帰りますわよ」
「お気持ちはわかりますがもう少し調査しましょう」
通行人を観察する。
「この人たちは自分たちの着ている服を見て負けると気づかなかったのかしら?」
「貴様! その服装はなんだ! 決められた質素な服を着ろ!」
京香の前に憲兵の男が現れた。
「このドレスのこと? お気に入りですのよ。素敵でしょう?」
「反抗的な女め……。教育してやる!」
京香に男が襲いかかった。
「自分は戦わないくせに弱い者イジメなんてカッコ悪い人ね……」
京香が体重を乗せて突進する。
「ぶっ飛びあそばせ!」
「ぐはっ!」
京香の鉄山靠をくらった男は地平線の彼方へ消えていった。
「あなたの行き先は北アメリカ大陸よ。せいぜい勇敢に戦ってきなさい。まあ、あのタイプは自国の情報を売ってでも助かろうとするわね。憲兵になるのは死ぬリスクを避けつつ権力を振りかざすためでしょうから」
憲兵を倒した京香は子供が通学するところを見かける。
「授業が始まるようですな」
「そうね。戦時中の教育を調べてみましょう」
学校に入ると子供たちが竹槍を振り回していた。
「えい! やあ!」
「そうだ! そうやって敵兵を倒して爆撃機を落とすんだ!」
「……あなたたちはなにをしているの?」
「見てわからんか!? 子供たちを訓練して兵士にするのだ!」
「授業は?」
「授業なんぞやっとる場合か! 訓練と労働をさせたほうが国のためになるだろうが!」
「先生……。空腹で力が出ません……」
「貴様……。空腹ごときで音を上げるとは立派な兵士になるつもりがあるのか!」
殴られる子供。
「うぐっ!」
「これでもか! これでもか! これでもか! はぁはぁ……。この非国民め……」
「斬新な自己紹介ですこと」
学校を出た京香。するとKTSから警告音が鳴った。
ピピッ! ピピッ!
「お嬢さま。敵でございます」
京香の前に覆面をした女プロレスラーが現れた。
「どなたかしら?」
「フフフ……。あなたに余計なことを知られたくない者の部下よ。死んでもらうわ」
「面白いですわ……。セバスチャン。あれを」
「かしこまりました。お嬢さま」
KTSが光ってリングが転送されてきた。そして執事がゴングを鳴らす。
カーン!
「先手必勝!」
敵は2丁のマシンガンで京香を攻撃する。
「お生憎様!」
京香は放たれた弾丸を華麗なステップで躱した。
「チッ!」
敵が銃を捨てて京香に殴りかかってくる。京香はその勢いを利用してjネックブリーカーで敵をマットに叩きつけた。
「ぐはっ!」
「まさかもう終わりではないでしょうね?」
「……その綺麗な顔をグチャグチャにしてやるわ」
立ち上がった敵は京香の顔にハイキックをしたがドラゴンスクリューからの4の字固めで返される。
「うぐぐっ……」
「フィニッシュですわ!」
KTSが光って出てきた2足歩行型ロボットに京香が乗り込む。
「ターゲットロック! 全弾発射!」
両腕部のガトリングと両肩部のミサイルランチャーが敵に発射された。
「ほ、本部! 転送を!」
爆音の中でリングごと粉々になる直前に逃走する敵。
カン! カン! カン!
「勝負あり。でございます」
「お父さまの言っていた連中ね。日本の安全に関わる調査なのに妨害するなんてどういうつもりかしら? ……まあいいわ。調査を続けましょう」
「次はどちらへ?」
「日本軍を調べたいわ。どこか適当な戦場に転送して」
執事がKTSを操作して周囲がジャングルへと変わった。
「ここは?」
「日本軍がインパール作戦に失敗して撤退しているところですな」
「……ヒョロガリの病人しかいないけど彼らは本当に軍人ですの? ちょっとあなた。食事をしないと健康に悪くてよ?」
「……食料を現地調達する計画が失敗したのだ。そのせいで多くの餓死者がでている」
「そう……。セバスチャン。ティータイムにするからお茶とお菓子を用意してくださる?」
兵士たちに軽食が振る舞われた。
「あ、ありがとうお嬢ちゃん……。助かったよ」
「随分と無茶な作戦のようですけど?」
「俺たちもなんでこんな無謀な作戦をやらされたのかわからない……。お嬢ちゃんも病気に感染する前に帰ったほうがいい」
「……セバスチャン。司令官に会って話をしたいからヘリを出してちょうだい」
「はい。お嬢さま」
前線から離れた司令部の宴会場。
「プファアッ! 酒をもっと持ってこい!」
「……仲間が飢えているのにこんなことをしていていいのでしょうか?」
「お前はバカか? 日本が負けたときのために安全策として自軍に損害を出しておくのだ。そうすれば戦後に戦勝国の功労者として処罰されん。こうやって自堕落にしておるのもその証拠となるからだ。だからお前も裁判で処刑されたくなかったら飲め!」
「は、はい!」
「なるほど……。話は聞かせてもらいましたわ!」
「何奴!」
「私は京香! 悪を裁く正義の女子プロレスラーですわ!」
「聞かれてしまっては仕方がない……。殺せ!」
司令官の部下が京香に銃を向けた。しかし京香は発砲させる間を与えずジャンピングニーで顔を破壊した。
「ぐはっ!」
ふらついて隙だらけのところにフランケンシュタイナーでトドメを刺す。
「次はあなたの番でしてよ?」
「フフフ……。お前はなにもわかっていない。わしを倒しても意味がないぞ?」
「……どういうことですの?」
「霞ヶ関に行けばわかるんじゃないか? わしはこれからイギリス軍の将校を接待するから忙しいのだ」
「くっ! セバスチャン!」
「かしこまりました」
KTSを使って終戦直前の霞ヶ関に行く。
「こ、これはどういうことですの?」




