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不倫されたので異世界でリスタートします  作者: 小春日和
色々厳しいらしい
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1

 

 「リスタート?ええ、ええ、言いましたね。言いましたよ。胸を張って、声を大にして言いましたよ。私をリスタートします!ってね。あのときはノリというか、テンションというか、やけっぱちというか…嘘ではないですよ?本当に。色々あったんだから、また新しくスタートを切れるなら良いことじゃない。まあ、不本意だったけど私も異世界に来たんだし、色々厳しいところもあるけど、またここでやり直せたらなって思うじゃない?…でも、でもさぁ…!」


 凛は両手で顔を覆うと「いや~~!!」と叫びながらバタバタと暴れだした。



 「じっとしてください。リン様…やはり、裾をもう二センチほど上げましょう」

 「わわ!動かないでくださいぃ!…う~ん、ウエストももう少し絞ったほうが良さそうですねぇ」


 凛はただ今服の試着中である。…それも制服の。


 「“じゃあ高校生になってみない?”じゃないわよ!あのバカーっ!!何歳だと思ってるのよ?!アラサーよ?!犯罪!犯罪だわ!!」

 「コ、コウコウセイ?」

 「確か…リン様の世界の学院に通う子供たちの事を指す言葉であったと記憶していますよ。メアリ」

 「あぁ~こちらの学院生の事をコウコウセイと呼ぶのですねぇ…ありがとうございます、ルナ!覚えましたっ!」


 凛の叫びも虚しく、メイド二人は談笑しながらもテキパキと調整を進めていく。



 この世界で新しく生きてみようと決めてから数日。凛の待遇は少し変わった。

 セシルがなんと説明したのか、凛は“精霊の愛し子”ということになった。

 というのもあの湖を訪れてからというもの、不思議なことが度々起こるようになったから。

 例えば、この世界では魔力がなければ明かりをつける事もできなかったのが、凛が「明かりがほしいな」と言えば独りでにパッと明かりが灯る。

他にも、紅茶を淹れるためのお湯も凛がポットに触れるだけでお湯がコポコポと沸く、花を飾るために切り揃えようとするがハサミが無く困惑していると勝手に、しかも丁度良い具合でスパッと切れる、城の移動が面倒で「エレベーターでもあればいいのに」と呟くと一瞬で行きたい階に瞬間移動していたり、凛の悪口をコソコソ言っている人の近くを通るとその人がふっ飛ぶ…などなど。


 もしや魔法の力に目覚めたのか?!という凛の淡い期待も虚しく、やはり魔力はゼロのままだが、この不可解な現象は湖から着いてきた精霊たちの仕業だとセシルは言った。


 下位の妖精は今もそこら中にフワフワと漂っているらしいが、上位である精霊は本来はあの湖周辺からは出ないものらしい。

 だが、凛とセシルがあの湖を出ようとしたとき、精霊達はどうしても着いていきたいとセシルに懇願した。

 「凛を困らせるようなことはしないからって、守りたいからって言ってるけど、どうする?」

 どしゃ降りの雨の中、セシルは困り顔で凛に聞いてきた。

 精霊達は泣きながら、必死に頼み込んでいるらしくこの雨もその精霊たちの心情なんだとか。

 そんなことを言われたら、只でさえ味方がほぼ居ない凛にとっては願ってもない申し出だし、それに何より嬉しかった。

二つ返事で了承し、着いてきた精霊達のお陰?なのか、凛は恐れられたり怯えられることが減った。

 どうやらこの世界では、魔法は“精霊”達のお陰で使えているらしい。


 セシル曰く、人が酸素を吸って生きているのと同じで、魔法も魔素を体に取り込んで魔力として放出し魔法を発動しているが、その魔素を発生させているのが精霊、なんだとか。

 下位の妖精も勿論魔素を発生できるが、やはり精霊の方が放出量が多いらしく、彼らが元気で楽しく生活しているだけで魔素の量が増え、少量の魔力で魔法が使えたりと燃費が良いのだが、彼らが機嫌を損ねたり弱っていたりすると魔素が減り、魔法の質が落ちたり生活魔法が使いにくくなったりと不便になるらしい。


 そんなわけで、姿は見えないが昔から大事にされてきた精霊の、しかも“愛し子”と言われている凛を蔑ろには出来ないわけで…相変わらず冷たくされることもあるが、この世界に来た当初のように殺されかけたり、ということは起きていない。


 ようやく安心して暮らせるようになる、と思ったのもつかの間で、セシルから突然の“ちょっと高校生になってみない?”である。


 


 凛は鏡に写る自分を見て項垂れた。

 制服は全体が深緑色で白いブラウスに学年のカラーである紺色の細いリボンが結んであり、ショート丈のジャケットは細身だが動きやすく、膝下までのスカートはAラインで上品な膨らみがある。それに黒いタイツと焦げ茶色のローファー。

 日本だったらとんでもなく可愛い高校の制服で有名になりそうだな、と思うくらいには可愛らしい。デザインは。

 

 「やっぱり、お似合いですよっリン様!ソルーナ学院の制服!とっても可愛らしいですぅ!」

 「じゃあ、メアリどうぞ。代わってください」

 「いけませんよぉ!私には資格がありませんし…それにもう、そんなに若くないですからっ!」

 「いやいやいやいや…私より全然若いでしょ?十は下でしょう?」


 メアリはきょとんと凛を見つめた。


 「…いいえ?リン様の方がお若いですよね?」

 「ないないない!メアリの方が若いに決まってるでしょー?!私なんて二十九だよ?!」

 「リン様。リン様の御年齢は我らが主から伺っておりますが…それでも、リン様の方がお若いんですよ」


 はい?と、今度は凛がキョトンとした。


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