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妹が消えたあと、世界の数が合わなくなった話  作者: 渡しログ
1章ワールドカウント23
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2.1 - ワールドカウント23


 途方に暮れた。


 未希はどこだ。帰るにはどうしたらいい。

 そういえば、あの電子機器はどこだ。


 手には最初から何も持っていない。

 足元を探すが、落ちてもいない。


 未希に外出した形跡がなく、部屋の窓も施錠されていた。

 そして、今、置かれているオレの状況。


 ダメだ。考えるのはヤメだ。

 ひとまず歩こう。


 山の見えない方へ行こう。

 理由はとくにない。その方がいいと思っただけだ。


 だが一歩踏み出すと、靴を履いていないことに気が付いた。


 チープな服に、裸足で手ぶら。

 なんだか、薄笑いがこみあげてくる。

 いったいどういう仕打ちだ。


 歩き始めると、無意識にタバコを探した手が空を切る。

 そもそも、この服にはポケットが無い。


 とにかく歩き続ける。

 それしか、することがない。


 遠くに見えた森が近づき、視界の主役が木々に変わっていく。

 ゆるい斜面を下ると、その先に背丈ほどある葦が茂っていた。


 葦の向こうから、チロチロと水の流れる音。

 音を頼りに葦をかき分けて進む。


 川だ。


 ごつごつと、丸く切り取られた岩を縫うように流れる川。

 川幅は20メートルほどだろうか。対岸の先には、鬱蒼とした森が続いている。


 喉の渇きを覚えたが、やめておく。

 そのまま飲むなと。

 幼いころ、家族とキャンプに連れていかれたときに父から教わった。


 川の上流から下流へと視線を流す。

 緩やかに蛇行する川の対岸は、見渡す限りの森。


 そこからさらに下流へと歩いた。


 すると、川の音に混じって、鈴の音色のような音が聞こえた。


 リンリン、リンリンと、

 腰に鈴を付けた子供が近くで遊びまわっているような音がする。

 誰かいるのか。


 オレは足を止めて、腰を落とした。

 音のする方へゆっくりと近づき、目を凝らす。


 川辺でなにかが3つ、いや4つ飛び回っていた。

 それは小さな鈴虫かと思えば、よく見るとカラダはヒトそのもの。

 背中から複数の羽が生えた小さな人形達が、ころころと笑顔を作り、舞い踊り、じゃれ合っていた。


 あまりにも、妖艶で不可思議な光景。

 オレは、未希の夢の中にでも迷い込んでしまったのだろうか。


 捕まえてみようかと、音を立てないように、ゆっくりと近づいた。

 あと数メートルのところに近づくと、こちらに気が付いたのか、葦の茂みに消えてしまった。

 まるで、エサをついばんでいた小鳥たちが霧散するように。

 鈴の音も茂みの奥へと消えていった。


 人形が飛んでいた場所まで近寄るが、丸っこい石ころと流れる水があるだけ。

 水に触れてみると、刺すように冷たいが、手触りは水だ。

 夢を見ているとは思えなかった。

 その証拠に足の裏が痛い。


 見ると、ところどころに小石が食い込み、血が滲み出ている。


 適当な岩に腰を下ろして、足の裏の小石を払う。


 靴が欲しい。

 足の裏が直接地面にあたらなければ、なんでもいい。

 なにか無いかと、周囲を見渡すが、あるのは、石ころ、川の水。その流れに翻弄されている水草。

 それと葦。


 これで代用できないかと、葦を数本引っこ抜いた。

 それを足に巻き付けて、くるぶしのあたりで結ぶ。


 ためしに、地面を踏みしめてみる。

 充分だ。

 足裏の皮膚も安心したのか、痛みも少し引いている。


 腰を下ろしたまま、空を見上げた。

 時間は分からないが、陽はまだ高い。


 オレは、立ち上がり、再び下流へと歩き始めた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

お星さま、1個でも2個でも、ポチッと頂けると、作者は泣いて喜びます。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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