3.4.05
オレは近くの駅へと歩く。
駅前についてから、未希にメッセージを送る。
『いま家か?』
しばらく待ったが、返信は無い。
まだ家には、戻っていないのか。
まゆにメッセージしようかと思ったが、学校が終わるのって何時だ?
そういや、今日は何曜日だ。
6月16日(水)14時50分
さて、どうする。何処へ向かう。
考えていたら、まゆからメッセージが入った。
『みきさんの家でも、ひとりでいくのムリ』
なんでだよ。
『学校は?』
『いまおわった』
『未希がどこにいるかわからない。今日は帰れ』
『わかった』
オレはどうするか。アパートに戻るか。
ポケットに戻そうとしたスマホがまた震える。
『昨日、ログインした?』
『どうしてだ』
『電波。ログで』
……ちょっとまて。
『これから会って話せるか?』
『うん。駅でいい?』
『わかった。30分後に駅まで行く』
『りょ』
りょってなんだ。
オレは、改札を抜けた。
電車に乗り、考えをまとめる。
まゆは、ログインを探知できるのか?
だとしたら、オレ達以外のデバイス保有者の存在がわかるんじゃないのか?
逆に考えると、オレ達のデバイスの存在も、誰かに探知される可能性がある。
ログインデバイスには数百万円の価値があると言っていた。
見知らぬダレかに探知されたらどうなるか。
考えることは、みんな同じだろう。
いろいろと、慎重になる必要がでてくる。
未希の話ぶりでは、もう何度もニフィル・ロードにログインしているのだろう。
それまで、探知されることはなかったのか。
運がよかっただけなのか?
わからない。
目的の駅につく。少し早いがいいだろう。
電車を降りて階段を登る。
改札の方を見るとすでに、まゆがその先で待っていた。
学校帰りだ。今日も青いリボンを付けた制服を着ている。
しかし、ジップパーカーを羽織り、頭からフードを被っていた。
目が隠れていて表情は分からないが、その下の皮膚は相変わらず青白い。
改札を抜けて声を掛ける。
「また、そこのコーヒー屋でいいか?」
「……うん」
あいかわらず、声が小さくて良く聞こえない。
メッセージのやり取りだけで、良かったかも知れない。
店に入り、カウンターに並ぶ。
「塩キャラメルラテのホット」
まゆが言い捨てると、離れていく。
注文すると、店員が背中を向けてドリンクを作り始める。
……またこれか。
オレはなにをやっているんだ。
店員がトレーにホットコーヒーと、格子状に琥珀色のソースがのったカップを載せる。
甘ったるいキャラメルの匂いが、カップから立ち昇る。
トレーを持って、まゆのいる席に着く。
「電波のログについて、教えてくれ」
「……このあいだソウジがログインしたときの電波。
特徴があるところだけ抜き出して……数日間のログと照合した」
「どこで?」
「……わたしの部屋」
「他にログインを探知できたことはあるか?」
「ない」
まゆの家の場所は知らないが、駅の位置で考えても、オレのアパートまで5キロはあるだろう。
それだけの広さでも探知できるというのか。
フードを被ったままのまゆが、カップを両手で抱えて、ゆっくりとすする。
「……ねぇ? ログインした?」
「ああ。昨日の夜」
「……やった。あたりだった。わたしすごい」
「ああ、すごいぞ、まゆ。今後も探知を続けてくれ。カネは必要か?」
「だいじょうぶ」
先に幾らか渡そうと思ったが、いいだろう。
まゆは、カネじゃ動かない。そういうヤツも稀に居る。
「必要になったら言え」
「わかった」
スマホが震える。
未希からのメッセージだった。
『みきです。いま部屋。お母さんにチョー怒られた』
まゆに伝える。
「未希が部屋に戻った。今から行くか?」
「うん」
未希にメッセージを入れる。
『今からまゆと行く。いいか?』
『うん。まってる。やっぱり、おにいちゃんの彼女?』
無視してスマホを戻す。
オレ達は、ホットドリンクを飲み終えてから店を出た。
まゆと2人で、改札を抜けて電車に乗り、実家の最寄り駅へと向かう。
なんだか、慣れてしまったな。
「実家に帰る」というオレ自身に。




