3.4.02
ファミレスに近づくと、ヨシヒロは入り口で待っていた。
上下が白っぽいスェット。
唇にピアスをした、どこにでも居るガキだ。
それと横に、パーカーを着た18~9の女がひとり。
「どうも。総司さん。お久しぶりです」
「ああ。タツは」
「連絡取れてないです。とりあえず、中入りましょう」
ファミレスへ入る。
まだ喫煙席が存在する、希少なファミレスだった。
オレとヨシヒロはコーヒー。女はアイスティーを注文した。
ヨシヒロが会話を始めた。
「最近、街で、ひったくりとか恐喝が多いんですけど、総司さんご存じですか?」
最近は、地元どころか、日本にいる感覚すら遠のいている。
タバコを出して火を付ける。
「3人組で、ナイフで脅かしてくるらしいです」
「知らないな」
「俺達は関係してないんですけど……毎晩のようにあるらしくて。タツさん含めて、警察にかなりマークされてるんですよ」
「そりゃそうだろうな」
達郎みたいなギャング連中。
警察と仲が良いとは言わないまでも、同じ業界の売り手と買い手のような間柄だ。
何かあれば、真っ先に疑われる。
「自分らも、犯人追ってるんですけど、独り怪しいやつがいまして」
「どんなやつだ」
「折田っていう名前で、2週間くらい前に、特少から出てきた奴です」
おりた……おりた……知らん。
店員がドリンクを運んで来る。
聞かせるような話でもないので、立ち去るまで少し間が空いた。
「タツさんとは、幼馴染らしいんですけど、ケンカのたびにナイフで刺してくる、ちょっとイっちゃってる奴なんです。で、タツさん拉致ったのが、どうやら、その折田らしくて」
「仲悪いのか」
「自分らもよく知らないんですよ。しょっちゅうパクられてて少年院を出たり入ったりしてる奴ですからね。見境ないんで、出てくる度に、うちの連中とも揉めますし」
「拉致られるところは誰か見たのか?」
「はい。それがこいつです」
と、ヨシヒロが隣りに座っていた女を指さした。
「どうも」
女が会釈する。
茶髪のボブの女だった。
前髪を長めに切りそろえているのは、太い眉を誤魔化すためだろうか。
オレ達が会話しているうちに、手元のアイスティーが半分以上なくなっていた。
「いつ、どこで、拉致られたのか、詳しく教えてくれ」
オレが言うと、女は、ぽつりぽつりと、その時の状況を話し出した。
女の話では、深夜3時ごろ。
電話を受けた達郎が、街へ行き、黒いワンボックスカーに乗って行ったと言う。
女が見たのは、クルマに乗る瞬間だったらしい。
それから、10時くらいにヨシヒロが電話を掛けたが繋がらず、いまも音信不通だという。
「達郎はその時、揉めてたのか?」
「暗くて良く分からなかったんですけど、争っている感じでは無かったです」
「行先はわかるか?」
そこから、ヨシヒロが口を挟む。
「あ、それは別の情報源なんですけど、第3ビルに入っていったらしいです」
第3ビル。今は無人のビル。
取立て屋なんかが、たまに拉致や監禁でつかう建物だ。
最初は友好的に声を掛けて、それから拉致って、第3ビルへ。
と考えても良さそうだ。
「見張りは」
「はい。3~4人が交代で、ビルの前で張ってます」
「踏み込まない理由は?」
「まぁぶっちゃけ、折田にビビってる連中が多いってのもあるんですけど、ヤクザ崩れも折田と関わっているみたいで。向こうに動きがあるまで、様子を見るようにさせてます」
あのビルは、雇用主もたまに業務で使っている。
あまり頼りたくはないが、情報を得るくらいのことはできるだろう。
試しに達郎のスマホに繋いでみる
電波が届かないと戻された。
時計を見ると、11時50分。
拉致られたとして、8時間以上か。
時間が経ち過ぎている。
「わかった。オレも行って様子を見てこよう」
「あざっす!助かります!」
「なにか新しく分かったら、連絡してくれ。電話よりもSNSがいい」
「わかりました」
変なタイミングでブーブー鳴るのは困る。
オレ達は、ファミレスを出た。
行ってみるか。




