第71話 新学年になったのである
はい、そういうわけで始まりました新学期!
レイヴンは無言で嫌がっていたけれど、こればっかりはしょうがないという感じでロムルスさんに寮まで送ってもらったよ。
お礼に、剣に聖属性を付与してあげた。
「魔剣があったら、預からせてもらえば聖剣にできますよ~」
そう言ったら、ロムルスさんが真面目な顔で私の肩をつかんで諭してきた。デジャヴ。
「いいかリリス嬢。君は魔力保有量が非常に多く、また魔法に関してさほど苦労していないようだからそのように軽く言っているのだろうが……。今後は君の魔法に関しては、内容を話さないようにしたほうがいい。聖属性の魔法使いは稀少で、また君の魔法はかなり独特なのでそう簡単に対策はされないはずだが、それでも君が周囲に拡散したことでその魔法の弱点を探られ対策をとられると、君にとって不利なことになる。……あと、利用される。君の後ろ盾にガレスがいるためそう易々とはされないだろうが、それでも今のような安請け合いは絶対にするな。わかったか?」
ナンパ口調は影をひそめ、ガチ説教モードだった。
「……はい。そういえば父にもそう言われてました。ただ……」
私を護衛したことで、ロムルスさんも狙われることになりそうな気がするんですよ。
「……なぜ私が狙われているのかわからないけど、巻き込んでしまって申し訳ないというか、そのお詫びもかねてというか」
ボソボソ言ったら、頭を撫でられた。
「ありがとう。でもそれはガレスから支払われるから君は気にするな。聖水も樽でもらったしな」
「それは最初から言われていたので」
当主様が、ロムルスさんへの報酬として聖水(自家製)を樽でほしいと言われていたのである。
当主様としては「払いすぎなんだけど、今後もこき使うから先行投資だ」と言っていて、いや無料じゃん、しかも樽すらロムルスさんが用意したじゃん、って思って、浄化した魔石もつけてあげた。
……説教を喰らっている間にレイヴンはスタコラと先に行ってしまったのだった。
チラ、と去るレイヴンを見つつ、
「……娘をよろしくな」
と言われた。
「こちらこそです」
あんなでも、意外と心配性だしとっても頼りになるんですよ。
食べ物が絡むと、とたんにフレンドリーになるしね!
*
今日から二年生になる。
新入生は現在入学式を行っているだろうね。
私はまず魔法学科のラウンジへ行く。
魔法学科は一クラスなのでクラス分けが存在しない。
ゆえに、わざわざクラス分けの発表を見に行かずとも、ここでどこか聞けば良いのである!
「おー、集まってる。みんな久しぶり~」
レイヴンは一足お先にラウンジに入っていた。
「「「リリスー」」」
「結局遊びに行けなくてごめんねー」
フレイヤが代表して答えてくれた。
「いいえ。レイヴン様から聞きましたが、闇ギルドに狙われたとか……」
「うん。私の父とレイヴンの父が壊滅させたらしいけど、残党がちょっかいかけてきたらゴメン。先に謝っとくわ。父様が学園にも話を通しておいたから、警備が厳重になってるはずなんだけど、内通者がいるらしくってさ。とばっちりで狙われる可能性があるんだ」
「気にしないの~。リリスが悪いわけじゃないから~」
そう言ってくれるとありがたい。
「皆にも、絶対によくわからない奴に声をかけられてもついていかず、ちょっとしたことでも……たとえば忘れ物を取りに戻るというようなことでも二人以上で行くように注意したよ」
レイヴンが言う。
……それは、私もですね。とはいえ、セラフがいるから絶対に一人にはならないけどね!
雑談しながらみんなと一緒に魔法クラスへ行った。
なんか遠くに王子がいるな。今日も元気よく騒いでる。
こっちをすごい睨んでるけど……私、アイツらが闇ギルドを雇った依頼人だとしても驚かないわあ。
レイヴンも気づいたらしい。
アイツらを一瞥すると、フッと嘲るように鼻で笑う。
「……あぁ、アイツか。当然のことながら依頼人だと疑われたようだ。君の父上が尋問したようだぞ。そうとう酷い目に遭ったらしい」
「へー。……それでもここにいるってことは、依頼人じゃないんだ?」
それは残念。
私が好きで、こじらせてるみたいなんだもん。最悪ー。
「とっとと私のことは諦めなさいよね! 私、父様より強い大人な男性じゃないと相手にしないから! アンタたちみたいなヒョロヒョロモヤシ少年はお呼びじゃないのよ!」
大声で叫んだら真っ赤になった。
レイヴンがからかうように言った。
「ヴァリアント男爵もずいぶんとリリスを溺愛していると思ったが、リリスもずいぶんと父親を溺愛しているんだな」
「父様は、知らない者はいないってくらいの女ったらしだからねー。私みたいな幼気な小娘は小指で捻る程度でしょ」
レイヴンが笑った。
「私も教授いただきたいな」
「いや、あなたのお父さんが断固阻止するでしょ。父様が言ってたじゃん、『娘が生まれたからお前には絶対に会わせない』って手紙をもらったって。私もレイヴンが父の毒牙にかかるの嫌だし」
レイヴンが顔をしかめたので、今度は私が笑った。




