第67話 庇ったらキレられたのである……
無事、襲ってきた闇ギルドの連中を殺処分した私たち。
逃げられたと思った残党すら、セラフが全部片づけたよ!
私とレイヴンが話しているところへ、ギークリーさんが疲れた顔をしてやってきた。
正確にはレイヴンに質問があったみたい。
「辺境伯様はどこだ?」
レイヴンは眉根を寄せた後、ギークリーさんの質問に答える。
「……私たちも襲われた。私はなんとか逃げきってこちらに向かったが、奴は……どうなったか知らんが、生きているんじゃないか? 死んでも自業自得、奴の責任だ」
レイヴン、思いっきり突き放した声で他人事のように言ってのけたし。
うーむ……。話し合いはできなかった様子だね。
これ以上はどうすることもできないので、自力で頑張ってくださいロムルスさん。
ギークリーさんが厳しい顔をして言う。
「辺境伯様が離れたのを好機と襲ってきたんだろうな……。なんとかなったが、死んでもおかしくなかった。……確かにリリスの言うとおり、護衛の中で抜きん出て強い辺境伯様が離れたから一網打尽にできた、と思えば結果的にいいが、あくまで結果論だ。俺は、ガレスにこのことを伝える」
レイヴンはうなずいた。
「もちろん伝えてくれ。私もまさか、このようなことをしでかすとは思わなかった」
二人の会話を聞いていた私は、困って頭をかく。
「……うん、ごめん。なんかさ、私はレイヴンとロムルスさんの二人の話を聞いているから、どうも互いに食い違いが発生してるんじゃないかなーって思ってお節介をやいちゃった。ぶっちゃけ、敵がここまで勝負を賭けてくるとは思わなかったけど……。でも、誘い出して一網打尽にしたかったのは本当。それは一応ロムルスさんにも伝えておいたし、ギークリーさんたちも賛成してくれたじゃん?」
ギークリーさんが、即ツッコむ。
「おい、賛成なんてしてないぞ」
すると、ドーバーさん、エイツさん、パーズさんがバツの悪そうに顔を見合わせている。
「……後からついてくる、って話だから賛成した、かな?」
「そうだな。まさかここまで遅くなるとは思わなかったというか」
「あと、敵さんがまさかこれだけの人数を投入してくるとも思わなかったし……。依頼者、いくら積んだんだ? ガレスの娘を暗殺するってのがまず依頼料の跳ね上がる案件だし、さらにこの人数、尋常じゃないぜ? そうとうの金が動いている」
ドーバーさんとエイツさんはモゴモゴ弁解したけど、パーズさんは早口で見解を発した。
……などと話していたらロムルスさんが走ってやってきた。
青くなってるね。返り血で真っ赤だけど。
「無事か!?」
「そりゃあ、もちろん!」
元気よく言ったのは私だけ。
他の人たちは微妙な反応だ。
「いやいや、大丈夫じゃん。怪我をしているはずもないでしょーが」
顔を見合わせて、手を広げて肩をすくめたし。
何その外人の、「ヤレヤレ」的なオーバーアクションは。
ロムルスさん、私たちのそばまできて謝った。
「すまない、足止めが思いのほか多かった。……こちらもひどいな。奴ら、内戦でも起こす気だったのか?」
周りを見渡し、後半は独り言のように言う。
わりと軽い反応だわ。
さすが辺境伯当主様ともなると、この程度の人数では動じないのかー。
……っていうのを感じとったらしいギークリーさんがた、顔を引き締めてロムルスさんに言った。
「俺たちは冒険者で、傭兵ではない。対人戦……しかもこれほどの大人数との戦いは慣れていないんだ。そのことをガレスには伝えて、だからこそあなたが支援にきたと考えた。……なぜ、足止めごときで駆けつけるのが遅くなったんだ?」
ロムルスさんはそれを聞いて、素直に頭を下げる。
「申し訳ない」
私は慌ててギークリーさんをなだめる。
「まあまあ。……足止めの人数もすごかったんですよ。ギークリーさんは父様を知ってるから〝ごとき〟なんでしょうけど、父様ほどの人はそういないんで、無茶ぶりはやめましょうよ」
――私の発言を聞いて、全員が固まった。
なぜかギークリーさんたちは笑いだしそうだ。あ、レイヴンは忍び笑いしてる!
ロムルスさんも笑顔なんだけど、なんか怖いんですけど?
庇ったのになんでー!?
「いや、本当に申し訳なかったと反省したよ。隣国との小競り合いもなく、大人数の対人戦は久しぶり……という弁解もしない。今後、闇ギルドは、私が責任をもって潰そう」
え? なんで? 怒ってる?
「……えと、鈍ってたなら、しょーがないですよ。父様はそういうのないから、私よく知らなくて」
親指同士を弾きつつモゴモゴ言ったら、
「いや、そんな弁解はしないさ」
と、ロムルスさんが怖い笑顔で私に言った。
そして付け足す。
「リリス嬢がそこまで父親を慕っているとは思わなかったな」
「なんでそうなるの!?」
全然関係ないよ!




