第69話 突撃攻撃
カグヤ号のメグには焦りの表情が浮かんでいた。
「何か打開策を考えないと…」
戦局は自分たちに有利である。
何度も結界を破り砲弾をぶち込んでいた。今ので3発目である。一方で相手の攻撃はすべて避けており、いまのところ被弾ゼロであった。戦闘が始まって間もないとはいえ、一方的に攻撃できていると言ってもいい。
これだけ押しているのに、状況は悪い。そう感じる理由は簡単で、自分たちの攻撃の威力が足りないのだ。誘導弾では厚い装甲に歯が立たない。船体にぶち込んだ3発の砲弾も、すでに修理されてしまった。このまま戦いを続けても弾切れになってしまうのだ。
「女神装備で出るわ」
メグが艦長席から立ち上がった。
ガルドとルミナスは驚いたような声を上げた。
「あの大きな船相手に危険すぎる」
メグは大きな笑い顔を作ると二人に説明した。
「大丈夫よ。元々の女神装備はああいう戦艦相手に突撃攻撃するための装備だったのよ」
『ちょっと不安ですが… 危ないと思ったら戻ってきてくださいね』
メグの体がほのかに発光すると、女神装備への換装が終わった。銀白の美しい装備だ。
「見た目がいいだけじゃないのよ。結界も念動も何でもできる最高の装備なの。だから安心して。じゃあ、カグヤ。フルの女神装備を用意しておいて」
『メインルームの第3ロッカーに対艦用の装備一式があります』
「例の突撃用の武器ね。ありがと」
ガルドが慌てて質問した。
「俺たちは何をすればいい?」
「私に代わって下部砲塔を担当できるかしら? ブラスターを相手にぶっ放すだけでも効果が割ると思う」
「ブラスターか。前に教わったやつだな。やってみよう」
「私はなにができる?」
ルミナスも聞いてきた。魔力が少し回復してきたらしく、さっきよりずっと顔色がいい。とはいえ、まだ回復しきっていないはずだ。
『急制動用の魔力供給をお願いします。指示しますのでよろしくお願いします』
「わかった」
「では出撃してきま~す!」
メグは軽い感じで皆に告げると、艦橋後部のハッチからメインルームに入った。そのままロッカーから重機関砲と突撃ランスを取り出した。ちょっと前に空挺部隊と戦ったときに使った機関銃に比べれば、こちらは倍の口径がある。
敵の装甲版を突き破るのは無理でも、攻撃翼や監視翼を潰すことは可能なはずだ。
『カグヤ、相手の翼以外で弱点はある?』
『装甲の薄い部分を狙うのが良いかと思われます』
『なるほど。で、どこなの?』
『おそらく船体上部にある艦橋あるいは飛行ハッチ部はどうでしょう?』
『質問に疑問形で答えると嫌われるわよ』
『なるほど、善処します』
メグは上部ハッチをあけると、機体後部へと出た。
『離脱する。結界を解除して』
艦橋やハッチは、主結界とは別の小さな結界で守られている。万が一、主結界が破られた場合でも重要な機関を守るためだ。贅沢ではあるが、そこまで作りこんでいるのが戦闘艦である。
メグがカグヤ号から飛び立つのに合わせて結界が一瞬だけ解除された。本来なら結界の細かな操作は操縦席にいる人間が行うものだ。だが人工知能と憑依精霊の合わせ技で自動でできるようになったのは驚くような進歩だった。
『敵結界内に入り込む! 目標への誘導お願いね』
『お任せください』
メグが巡洋艦に近づくほど、その大きさに圧倒された。軽巡洋艦と言えども全長200メートル以上あるのだ。そこにたった一人で突撃するのだから恐怖心と戦わなければならない。はずなのだが、意外なことにメグは恐怖を感じることはなかった。
『誘導弾、発射』
メグの掛け声に合わせてカグヤ号の後部から3発の誘導弾が発射された。これと重機関砲の成形爆薬弾があれば結界を破るのは簡単なはずだ。
三発の誘導弾は白い噴煙を残しながらスルスルと敵巡洋艦へと迫っていった。ブラスター砲による迎撃が始まったが、動き回る誘導弾は上手に避けて結界を直撃した。次々と結界が破壊され、メグは悠々と敵巡洋艦のすぐ脇に飛び込むことに成功した。
そのまま巡洋艦をぐるりと一巡して艦橋などの位置を把握すると、左手に装着している銃機関砲を構えた。狙いは攻撃翼の根本だ。
巡洋艦本体からの対空砲が激しくなってきたが、問題はない。女神装備のすごさは、圧倒的な機動力にあるのだから。回避はお手の物だ。さらに対人の結界まである。ブラスター砲ぐらいなら少しは命中しても問題はない。
まぁさっきはひどい目にあったが、あれは不意打ちで結界の隙間から陽電子が入ってきたからだ。
右に左にと対空砲火を回避しながら、発射装置トリガーを引いた。直径7.6mmと小さいとはいえ、一分に500発の砲弾を撃つことができる重機関砲だ。しかも全て成形爆薬弾になっている。
雑な狙いではあったが、攻撃翼はあっという間にぐちゃぐちゃになった。特に攻撃翼の根元には自動修復装置などがあり、複雑な構造をしているので効果が高いのだ。




