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つまらないこと


「やっぱりいた」


「ここ、座って」


 大昔は古墳があったという小さな公園。まだ少し残っている小さなふくらみに寝転ぶ女子高生は、突如現れた私に驚く様子もなくすぐに隣の芝生をポンポンと叩いた。むしろ私に見つかって嬉しそうなように見える。


「かなり騒ぎになってたよ。ちゃぶ台返し事件」


「もう事件名までついてんの?私犯罪してないし」


 英里は目を細めた。マスクをしていても大きな瞳が英里の感情を伝えてくれる。


「英里、いろんな呼び方されてるよ。破壊神、勇者、えいみ。大見キラーとか」


 空には申し訳程度の雲が漂っている。このままでは味気ないので、画家が最後に軽く書き足した蛇足ともいえるような大きさの、なんとも居心地の悪そうな雲だった。


「えいみってなんで。深田えいみかな」


「誰それ」


「AV女優」


 ぐっ、と肩をこわばらせる私を見て英里はご満悦だ。吸い込まれそうなくらい大きな黒目も好きだけど、細くなって瞳が見えなくなってしまうこの笑顔が私は一番好きだった。私にしか見せない表情。


「明日、学校来るよね?」二人は同じ空を眺めている。真横にいるので、文字通りほとんど、まったく同じ空だ。


「どうしようかなぁ…。東北行かない?夜行バスで」


「うちもサボるの⁉」


 露骨に嫌な表情をしてみせたのだけど、英里の顔はいやに真剣だった。


「…東北はさすがに無理だよ」英里の顔が晴れる。


「じゃあ、温泉いこっか!みなみ野の」


「あれ温泉ではないけどね。いいよ、それなら」眉を下げて笑う。


 英里は心底嬉しそうに飛び跳ねた。みんなは知らないだろうけど、英里はこういう子なのだ。


 明日はみなみ野のスーパー銭湯に行くとして、来週は?


 そんなつまらないことは聞かなかった。聞けなかった。

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