〜真実〜
「あーーーあ……私本当に死んじゃったんだね……」
白い靄がかかったとある空間に心音はいた。
するとその心音の眼の前にあの鳥の置物が現れた。
心音がその状況に驚いていると鳥の置物は、心音の心に語りかけて来た。
【心音……お前はアタシにとても素晴らしいものを見せてくれた……】
【だからアタシからご褒美をあげようと思っている……】
「えっ!? ご褒美って何?」
心音のその言葉を聞いた鳥の置物は、急に眼を光らせた。
そして次の瞬間、心音の手元に見覚えのある小包が現れた。
それは、心音があの日あの時あのホテルで見た小包そのものだった。
「えっ? えっ? どういうこと?」
【……アンタにもう一度チャンスをあげようと思ってねぇ……】
鳥の置物はそう語り出したかと思うと、急に怪しい光を放ち出した。
【今からアンタをアタシと出会う前の状況に戻してあげる】
【そして選ばしてあげるよ】
【アンタが人間の人生を取るか、化け物としての人生を取るか】
【アンタがその小包を開けて中の液体を飲まなけりゃ、アンタは今の記憶のままで人間らしい復讐が出来るし、アンタは人間として生き続けれるだろう】
【ただアンタの喉は壊れたままで一生元の通りには歌うことは出来ない】
【だがもしアンタがその小包を開けて中の液体を飲んだなら、アンタはまた元通り歌うことが出来るようになる】
【しかしアンタの記憶はその瞬間リセットされて、また同じ人生を歩むことになるだろう】
【さて、アンタはどっちを選ぶんだい?】
【真っ当な人間として生きる道かい? それとも歌を歌う化け物として生きる道かい?】
【さあ、アンタの選択をアタシに見せてごらんよ……】
その鳥の置物が語り終わった瞬間、心音は光に包まれた。
そして次に心音が目を開けると、心音はあの日あの時間のあのホテルにいた。
そして手には小包を持っていた。
「この小包を開けたら……またあの化け物の人生か……」
心音はそう呟いた。
だが次の瞬間、心音は一切ためらう事もなく、小包を開けて中の液体の入った小瓶を取り出した。
「私は化け物と呼ばれても……短い命になったとしても……辛いことがいっぱい待っているとしても……それでも歌を歌うことを諦めることは出来ない! だから……」
心音はその小瓶の蓋を開けて、勢いよくその液体を飲み出した。
そしてその場に気絶した。
その直後、鳥の置物が現れた。
【クックック……まったく人間ってのはどうしてこうも業の深い生き物なんだろうねぇ……】
その鳥の置物は急に怪しい光を放ち出した。
そして次の瞬間、その鳥の置物にヒビが入り出したかと思うと、その中から怪しげな煙が発生し、その煙の中から、悍ましい魔物の姿をしたものが現れた……。
都内某病院。
ここに一人の少女が意識不明のまま運び込まれてから、もう幾日も経過していた。
その少女は、自宅で大量の睡眠薬を飲んだことで意識不明の重体となり、この病院に運ばれて来た。
そして今もまだ意識を取り戻してはいない。
ただ担当している医者によると、既に意識を取り戻してもおかしくはない状態だと言う。
そして更に奇妙なことに、その少女は意識が無いのに、時折微笑んだり、笑い出したり、怒った顔になったり、涙を流したりするらしい。
そして、たまに寝言の様に誰かの名前を呼ぶこともあるらしいと言う。
その少女は、若くして人気者になり過ぎて、精神的に疲れ果てていた。
そしていつしか歌うことが、苦痛になっていたのだった。
また同じ頃、三人の若いアイドルを事務所が売り出したことで、彼女が信頼していたマネージャーはそのアイドルのマネージメントに集中することになり、彼女は精神的に孤立していくのだった。
そしてそんな中で、徐々に歌うことが嫌いになっていく自分に嫌気がさしていた。
そんな自分を見つめ直す為に、彼女は事務所に休暇を申し出たのだったが、事務所はこれを認めなかった。
そして……
精神的にボロボロになった彼女は……
ある選択をすることにした……
彼女は……
現実を捨てた……
そして……
夢の中で生きることを選んだ……
……その少女の名は
……浅井心音
彼女は、夢の中で今も自由に歌い続けているのだった……
このお話は、人智を超えた能力を現代に使用するとどうなるのかというところから考え出したお話の1つです。
そして、全て違う能力で他に後3つの話の種を持っています。
それぞれ登場人物も背景も異なっていますが、その能力が最も生きるだろうと思うところを考えて、話しの構成は考えています。
まだ他に別の題材で書きたい話もあるので、今すぐに書くことはしませんが、いずれ書こうと思っているので、それまで待っていて下さい。




