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ナーシャとクチナシ  作者: 舞華
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ナーシャと夕焼け


ナーシャにはユーモアのセンスがないらしい。


そう分かったのはつい先日の学校でのことである。


ナーシャがしゃべると、みんな固まってしまうのだ。


いじめられているのだろうか。


いや違う。そんなことをする友達はだれ一人いない。


みんな一応反応はしているのだ。ナーシャを見ないふりをしているわけではない。


ただ、ナーシャの言葉に困ったように、苦笑いをするのだ。


ゼッティが話をしているときは、食いつくように、我先にと話すのに。


ナーシャと話すときだけ。


ナーシャの話に興味がないのかもしれないと思ったが、ゼッティとナーシャの違いがナーシャには分からなかった。


きっと、ナーシャにはユーモアのセンスがないのだろう。


「つまらない人間」という言葉が頭の中で響き渡る。


つまり、お前は、こんなに、歩むべき道から外れていて、こんなにも醜いと、悪魔がささやいているようであった。



息が苦しい。


夕暮れ時に、他のみんなと同じようにこれから家でご飯を食べて、お風呂に入って、寝て、明日になったら学校に行くだけなのに、どうしてこんなに他者との違いを突き付けられなければならないのか。


ナーシャの家までは平地なのに上り坂を登っているように、足が重く、息が整わない。


ナーシャは本当に、天性のつまらない人間で、生まれながらに悪魔に狙われていて、悪魔がママを殺したのだとしたら?悪魔にとってはナーシャも、意味のある人間なのだろうか。


悪魔は、ナーシャがこうやっている間にも実は近くにいて、ナーシャのことを見て笑っているのかもしれない。


悪魔が本当にいるのなら、ママの次はパパしかいない。


僕はパパのことを大切に思ってはいけないのだ。そう思うと、涙が出てきた。


パパ、パパごめんね。ナーシャはパパのことを棄ててしまおうかと悩んでる。


でも、きっと、パパには関係のない話だよね。パパはナーシャのこと、以前ほど大切に思っていないでしょう。「この家とこの家族が宝物なんだ。」ってあの時の言葉、忘れていないよ。


パパは今でもそう思っているの?ナーシャには、パパが今でもナーシャのことを想っているとは思えなかった。


ジャークおじさんの話を聞いて気が付いてしまったのだ。ママを失ったナーシャに価値はないと。ナーシャが生まれながらにしてつまらない人間だから。


パパからも、友達からも愛されなかったら、ナーシャは誰に愛してもらったらいいんだろう。


太陽はほとんど沈んでいた。


すっかり沈んでしまう前に家に帰らなければと、ナーシャは大きく息を吸って、走り出した。頭上で明るく光る橙色が痛くて、うつむいて走った。



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