フレンゼVSエドワード2
「お前、調子に乗ってるだろ。やっぱダメだ。俺はほんの少しだけ期待したんだぜ? ひょっとしたら俺と同じレベルのイカした人間に出会えるんじゃねぇかってよ。でも、お前はそんな俺の一縷の望みを断ち切った……。ここからは本気モードだあ? そいつぁ俺のセリフだぜ」
竜炎瘴!!!
「俺の魔法は攻撃一辺倒じゃあねぇ。魔力により身体能力を増強させることもできる。それだけじゃねえぞ? 俺の炎は肉体温度を極限にまで上昇させる!! 驚異的に上昇した運動能力と炎の噴出による推進力はとてつもない超速移動を可能とさせ、その超スピードから繰り出される攻撃の破壊力はまさに必殺!! この意味が理解できるか!?」
「御託はいい。とっととかかってきな」
「お前はっ!! 死ぬってことだよッ!!」
エドワードは足元から黒炎を噴出した。自身が述べた通り、その推進力によってエドワードのスピードは常人の視力では追えないレベルにまで加速していた。
「どるぁああああああああっ!!!」
推進力を応用し、エドワードは空中で二度、三度と回転した。超スピードに遠心力の上乗せされた攻撃の破壊力は計り知れない。速すぎるが故に避けることも叶わない。フレンゼはエドワードの蹴りを腹部に受け、吹き飛んだ。
「あーあ、モロに入ったわ。内臓ぐしゃぐしゃ、骨もぐちゃぐちゃだろうな。俺を相手によく頑張ったとは思うが、残念ながらこれで終わり――」
……は?
おいおいおいおい、マジに言ってんのか?
あの蹴りを受けておきながら、あいつ、どうして立ち上がれる……。
「はー、流石に効いたぜ。クソガキなことには変わりねぇがその実力だけは認めてやるよ」
「てめぇ、どうなってやがる」
「どうなってるもなにも、お前が馬鹿だっていうそれだけの話だろ」
フレンゼはエドワードが竜炎瘴を発動した際、ワザと大きな隙を作り出したのだ。エドワードはまんまと釣られ、その隙だらけの腹部に攻撃を繰り出したのであった。
「どこに攻撃が当たるかさえわかっていれば防御は難しくない。確かに目で追うのは無理だが、魔力を一点に固めて防御しちまえば大したことはねーな」
……俺が釣られただと? こんな憲兵の猿真似しかできない奴に?
……どうやらこいつはそこら辺の有象無象とは少しだけ違うみたいだな。気に喰わねぇけど、それだけは認めるしかねぇらしい。
「腹立たしいなお前。腹立たしいけど、その戦闘センスだけは認めてやるよ。まさか俺の竜炎瘴を初見で対策してくるとはな。だがこれだけで勝った気になってんじゃねえぞ。俺の魔法はまだ上の段階が――ぐっ!? う、ぬ”ァっ!?」
「お喋りが過ぎるな。マジでガキじゃねーか」
フレンゼはもはや憐みの念すら抱いていた。
どんだけ馬鹿なんだよこいつ。真剣勝負の最中にベラベラベラベラと、喋りすぎだっての。こんだけ隙だらけだったらそれはもう「攻撃してください」って言ってるようなもんだろ。
「ウ、ぐ、が……! き、貴様、いつの、間に!!!」
「お前が俺の腹に蹴りを入れた時だよ。その時にはもう、お前の背後に魔力を集中させていた。お前は渾身の一撃で勝利を確信したが、俺が立ち上がったことによって随分と狼狽してたよなぁ。あんなに俺の方に視線を釘付けにしてたら、そりゃ背後からの攻撃には気付かないわな」
いやぁ悪い悪い、とフレンゼは続ける。
「俺のことを見つめたくなっちまう理由は痛い程理解できるぜ? 俺も俺みたいな男がいたら一目惚れしちまうだろーからな」
「ぐ、う、お、き、さまぁ……!! この程度で、勝った、つもりか!! この程度の炎なんぞ俺に効いてたまるかあああ!! うおおおおおおおお!!」
エドワードは渾身の魔力でフレンゼの魔法を弾き飛ばした。
少しして煙が霧散し、視界が開ける。そしてエドワードは驚愕した。
すぐ目の前にフレンゼの姿があったからだ。フレンゼは今にも、握りしめた拳をエドワードの腹部に叩き込まんとしていた。
「炎の推進力を使った超速移動、まだまだ半人前だな。俺の魔力操作を参考にすれば少しはマシな動きが出来るようになるんじゃないか?」
「……クソが」
ドゴォッ!!!
渾身の一撃はエドワードのみぞおちを確実に捉えた。右拳に込められた炎の魔力はエドワードの肉体を貫通し、容赦なく内臓を焼き尽くした。
「い”……つか……かなら、ず……」
ドサッ
何かを言いかけたエドワードだったが、それが声になる事は無かった。膝から崩れ落ちたエドワードは白目を剥き、口から黒煙を吹き出しながらその場に倒れ、再起不能となった。
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