フレンゼVSエドワード1
「あ”ー、どいつもこいつも邪魔くせえったらありゃしねえ。ゾイド・ペンターク以外は全員焼き殺していいよなあ? そもそも俺らに逆らうってことは王に逆らうってことなんだぜ? そんなことも理解できねぇ低能はよォ……」
「いたぞ! 憲兵の野郎だ!! 戦力差なんて考えるな!! ヴェルウォークさんの意志に殉ずると決めた以上刺し違えてでも奴を戦闘不能にするんだ!!!」
極光の騎士団の兵士が叫んだ。
相手は憲兵の中でも名を馳せている実力者。正面からやりあったって勝算はない。それでもと、彼らは心を奮い立たせるのだ。全てはヴェルウォークの正義のために!!
「うぅおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!」
そんな彼らに容赦のない黒炎が襲い掛かる。響き渡る轟音は龍の咆哮を思わせた。極度に熱せられた空気は蜃気楼を生じさせ、迫りくる炎に晒された騎士団員たちはまるで世界が揺らいでいるかのような錯覚に見舞われた。
「焼け死んでこそ罪を滅ぼせるってなもんだよなァ!!!!!」
ゴアアアアアアァァァアアアアアァァアアアッ!!!!!
「ぐわああああああああああああ!!!」
「ぎゃあああああああああああっ!!!」
一瞬で無数の火達磨が完成した。黒い炎に包まれながらのたうち回る彼らの姿は、まるで不器用な舞踏会がごとく有り様と化していた。
「あひゃひゃひゃひゃ!! 踊れ踊れ!! 下民は下民らしく、下手くそながらも王を喜ばせるために踊り狂ってりゃぁいいんだよぉッ!! 燃えろ! 焼けろ!! 灰と化せ!!! ……王はそれをお望みだ」
「おー、こんなところにホラ吹きがいるなあ。お前、嘘つきは泥棒の始まりって言葉知ってるか?」
傷だらけの騎士団員たちにとって、その声は希望そのものだった。彼の強さは身近にいた自分たちだからこそ知っている。
「うぅ……フ、フレンゼ様!!」
「お前ら、とっとと避難しろ。戦力は少しでも残ってた方がいい。この男の相手は俺一人で事足りる」
フレンゼの指示に従い、満身創痍の騎士団員たちは撤退した。去り際「御武運をッ!!」と残した兵士に、フレンゼは「俺を誰だと思ってやがる」と余裕の笑みで応じた。
「……王に仕えるこの俺を嘘つき呼ばわりするとは。お仕置きが必要みてぇだなァ~~~?」
「エドワード・ペトリツィアだな?」
「ははっ、呼び捨てかよ! 随分と偉そうじゃねえか気に喰わねえ! 焼き尽くしてやんよ、オラァッ!!!」
黒い炎は渦を巻き、大地を抉りながらフレンゼへと牙を剥く。
「黒炎、ねぇ。……楽しめそうじゃねえか!!!」
フレンゼは負けじと炎魔法で応じた。巨大な炎の玉は渦巻く黒炎と衝突し、しばしの拮抗の後、対消滅した。
ズァアアアッ!!!
「ほう、俺の炎を相殺するか! フレンゼとかいったな。隊長格ってのは飾りじゃねーんだな」
フレンゼは指をパチンッ! と鳴らし嬉しそうに言った。
「まさか憲兵のお偉いさんにお褒め頂けるとは、光栄光栄」
「褒めてねぇよ。その舐め腐った態度、王への不敬とみなす。よってギルティ。テメェのちんけな炎もろとも焼き尽くしてやるよ!」
「やってみな! そんな今にも死に絶えそうな軟弱な炎で何が出来るのか、この俺に見せてくれ!!」
「連続轟焔弾!!!」
フレンゼの放った連続轟焔弾は、八つの炎弾を放つ魔法である。炎弾の大きさは水晶玉くらいなので見かけ上はそれほど威力があるようには思えない。
しかし、見た目に騙されて防御を怠ると大ダメージを負うことになる。魔法というのは大きければ大きいほど攻撃範囲は広がるが、その大きさと威力は必ずしもイコールとは限らないのだ。
フレンゼの連続轟焔弾は一発一発が分厚い鉄板を容易く貫通する程の破壊力を有している。極限にまで圧縮された魔力は高密度のエネルギー弾となり敵を一掃するのである!!
「ははっ! なかなかにイカした魔力量じゃねぇかッ!!!」
黒渦焼!!!
連続轟焔弾に応対するは、エドワードの必殺技の一つ、黒渦焼だ。黒渦焼に焼かれた物体は灰に還ることはない。かつてあった姿は完全に消失し、そのまま黒渦焼のエネルギーに変換されるのである!
言うなれば、黒渦焼は破壊と魔力強化を一度に両立した魔法なのだ!
「骨の髄まで溶けちまいな!! 王への反逆を地獄で後悔しやがれッ!!!」
「この程度の炎でなにを溶かせるってんだよ、夢見すぎだぜ坊ちゃんよお!!!」
ドゴォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!
極大魔力の二つの魔法が衝突する。甚大すぎる破壊力は、衝突時の風圧だけで周囲一帯の建造物を消し飛ばした。突風によって生じた竜巻は木々や瓦礫を天高くへと巻き上げ、瞬く間に街中を地獄絵図へと変貌させたのであった!!
拮抗する二つの魔法は衰えることを知らず、それどころかますますその苛烈さを増加させてゆく……。
「引けぇッ!!」フレンゼが叫ぶ。「ここら一帯、更地になるぞ!! 憲兵が住民を巻き込むってのかっ!?」
対するエドワードは邪悪な笑みを浮かべていた。
「関係ねえ!! 王が望むならそれもまたやむなしだ!! おおおおおおおおおおおおお!!! 消・え・ち・ま・えぇぇぇぇええええええええええええええええええッッ!!!!!!」
二つの魔法は複雑に絡み合い、癒着し、ついぞ結合した。圧縮された魔力は限界点を迎え、そして――。
ドガァァァアアアアアアアァアアアアアアアッッッッ!!!!!!
「ぐ、ぐあっ!?」
「う、おおお!?」
魔力は周囲に散開し、大爆発を引き起こしたのであった。立ち込める土煙の中、エドワードとフレンゼの両者はほぼ無傷の状態で立ち尽くしていた。
「……はは、すっげえなこれ!」
エドワードは興奮した様子で下品な笑いを零している。そんなエドワードの態度に、フレンゼの我慢が限界を迎えた。
「この、クズが。テメェみてえな奴でも生きてるからって手加減してやれば……。てめぇは憲兵でもなんでもねぇ。ただ単に破壊欲求の抑えられないクソガキだ。俺はな、熱くないやつが嫌いだ。やる気のない奴を見るとイライラして仕方がない。けどな、そんな奴よりも数億倍、貴様のようなクズが一番腹立つんだよッ!!!」
「ははは、雑魚がお気持ち表明してら――ぁ……?」
弾丸のようななにかがエドワードの頬を掠めた。
「言っただろ、手加減してやってたって。こっからは本気モードだ。お前は民間人への被害も考えず火力を抑えることもしなかった。その挙句ヘラヘラヘラヘラゴミみてぇに笑ってやがった。はっきり言う。貴様のその態度は万死に値する!!! 楽に死ねると思うんじゃねぇぞ? クソガキが」
「…………あ”~~~~~???」
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