極光の騎士団VS憲兵6
極光の騎士団と憲兵の戦いは熾烈を極めた。
ヴェルウォークの策略が見事に成功したとはいえ、戦況は依然として憲兵側が有利である。ヴェルウォークはすかさず、次の策を実行に移す。
「憲兵には六人の精鋭がいる。ホロスと呼ばれる男を筆頭に、それぞれが単体でSランク以上のモンスターを打ち滅ぼせるほどの強さを有している。ホロスを除けば、最も危険なのはヒナ・エルドールという魔法使いだ。彼女の魔法は呪いの域に片足を踏み込んでいるからね」
呪いという言葉に、ルルの目つきが険しくなる。ルルは鞘から剣を引き抜くと、きっぱりとした表情で宣言した。
「彼女は私が無力化します。たとえ命に代えても!!」
「君ならそう言うと思ってたよ」
「俺ァエドワードって奴を叩き潰してやるぜ」フレンゼが言った。「同じ炎の使い手同士、どっちが上か白黒つけねえと気分が悪いからなあ」
「君の火力ならエドワードとも対等かそれ以上にやりあえるだろうね。期待してるよ」
会議の結果、ルルVSヒナ、エドワードVSフレンゼ、リネットVSザグラス、ラウスVSカルメラ、ソキルVSスノウス、そしてヴェルウォークVSホロスというのが最も勝率が高いだろうと結論付けられた。
「もちろんこっちが想定している通りになるとは限らない。それに、相手は複数で一人を叩きに来る可能性だってある。そうなった時に対応できるよう、みんなにはこれを渡しておく」
ヴェルウォークは五人の隊長に筒状の魔道具を手渡した。
「その魔道具を使えば、たった一度だけだが術式を暴走させることが出来る。身体にかかる負荷は計り知れないが、一時的に本来の数十倍ものポテンシャルを発揮できるだろう。本当に危なくなった時だけ使用を許可する」
ヴェルウォーク・スカイハイム。
ルル・メリー。
ギルフォードレイ・ザグラス。
フューゲル・スノウス。
フレンゼ・ヴェルファイア。
ホイト・カルメラ。
各自、互いの勝利を信じ、散開した。
目標の相手を無力化し、捕縛。クエストを利用した大量殺人の関与とその目的を吐き出させることが勝利条件だ。
☆ ☆ ☆
ホロス一行は大爆発を目に、敵の目的を理解した。
「なるほど。これで雑兵の戦力はほぼ互角というわけか。そして極光の騎士団が誇る六隊長を以てして、我らと対峙する、と。随分と舐められたものだな。たかが憲兵の物真似集団が我らを一個人で相手取れるつもりでいるとは――笑止千万!!」
ホロスには絶対の自信があった。かつて一人でSSランクモンスター十体以上を相手取り勝利を収めたという経験があるからだ。ホロスの活躍は伝説として語り継がれた。必然、この場にいる五人もホロスと肩を並べる程の強者なのだ。
それに比べ極光の騎士団の連中はどうか。
近隣国との戦闘を避け、数多くの人材と物資を差し出すことで表面上の友好関係を築き上げただけ。目立った戦績を有するのはヴェルウォーク・スカイハイムとルル・メリーだけではないか。
「私たちを、愚弄している?」
ヒナが疑問を呈した。
「……どうやら奴らは身の程を知らぬらしい」ラウスが言った。「王の身に仕える者がいかほどか、その身に直接叩き込んでやる必要がありそうだな」
「ははは! 愚弄だの馬鹿にしてるだのそんな被害妄想はどうだっていいんだよ! 漢なら真っ向勝負!! 俺ァただ、全てを焼き尽くすだけだ」
「あんたはいつだって過激すぎるんだよ」ソキルが窘めた。「ま、そういうところが男前でイカしてるんだけどねぇ」
「ははっ、俺が男前なんじゃねぇ。俺以外の全員が男前じゃねえのさ」
「意味分からないから」
呆れた様子でヒナが言った。抱きしめた熊のぬいぐるみを撫でながら、「じゃあ、タイマンでやりあうってことでいいのね?」と確認を取る。
総員、異論はないようだった。
憲兵の人間は王宮に仕えているという点からプライドの高い人間が多い。ヴェルウォークはそれを理解したうえで、「こっちはタイマンの準備が出来ているぞ」とでもいうような布陣を展開したのである。神視点で見るならば、ホロス一行はまんまとヴェルウォークの挑発に乗ったということになる。
「一番の敵は慢心だ」
ホロスの頭にその言葉はしっかりと残っていた。だが、ホロスは心の中でこう言い聞かせていた。「これは慢心ではなく自信の表れだ!」と。
ゼロス様、今しばらくお待ちくだされ。
あなた様の悲願は我らの手によって必ずや果たされることでしょう!!
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