第三十話
「母さん、叔母さんっていつ帰るの?」
叔母さんが出かけている時に聞いてみた。
明日とか明後日という答えを期待していたが、甘かったようだ。
「一週間後とか言ってた気がするな~、、。早く帰ってほしいんでしょ?」
「な、なんでそれを!?」
「真千子すぐ顔にだすじゃない♪」
う…。
しかし、一週間かぁ。
気が重すぎるよ…。
あと六回ばれずにやり過ごせるかどうか怪しい。
ばれたらどうなるんだろう。
アルマのときは勘違いしてくれたみたいで助かった。死神さんのことも幽霊の友達とでも言っておこうか?夜中に抜け出してたら怪しいか。
解決策は浮かばない。時間だけが過ぎでいく。
なんとか今日も見つからずに済んだ。
布団に滑り込んで、ちらりと叔母さんを見る。
寝てる時でも、数珠やらよくわからない飾りやらつけてるのか。
叔母さんは油断できない。
もしかしたら、何も言わないだけでもうとっくに気づいてるのかもしれない。
…もう考えるのはやめよう。
寝ないと、明日がしんどいから。
一日って早い。
あっという間に日が落ちて、あたしはまた12時を待っていた。
窓は開けた。今日も大丈夫かな…?
「毎晩毎晩、お疲れ様ねぇ」
あ………
ばれた。
背中が冷たくなってピリピリする。
間違いなく叔母さんの声が聞こえた。
「どうしてもっと早く相談してくれなかったの?悪霊に魂を吸われてるなんて!命が危険よ!!!」
「はあーっ!?悪霊!?」
何のこと?
いや、何のことって、叔母さんが壮大な勘違いをしているだけというのはわかる。
くそ、ばれてしまった上に変な勘違いまでしていて、かなり面倒くさそうだ。
「かわいそうに、変なものに憑かれそうな子だとは思っていたけれど、最悪なケースだわ!」
あと三分だ。
三分で言い訳して、納得してまた寝てもらえる?
叔母さんの様子を見るだけで、不可能に近いのがわかる。
叔母さんはさらに興奮してまくしたてる。
「あれは前に一度だけ見たことがある。取り憑いた人を夜な夜な墓場に連れていってエネルギーを吸い取っているのよ。ああまさか真千子ちゃんに憑いてるなんて…」
呆れてものが言えないとは、まさにこのことだろう。
ああー、めんどくさっ。
あたしの中で、今まで押さえ込んでいたものが爆発した。
「ほっといて、くだ、さい!いいから寝て!ほら、おとな…しく!!」
「なにす…っ、モゴッ…」
あたしは無理やり叔母さんを布団に包んで上から押さえ付け、丸め込んだ。
まだ足りない。枕もボスっと乗せた。
そのまま黙っておいて。
邪魔させないんだから。
助手の仕事をするべく、窓から飛び出した。
「真千子ちゃん、受け取りなさい」
学校から帰ってくるなり、叔母さんは玄関で待ち伏せしていたのか知らないけどあたしに数珠を突き出してそう言った。
変な数珠だ。"変"としか言えないほどわけのわからない文字や色合いの大きな数珠だった。
「いや、いらないですから。それに悪霊とかじゃないんで」
エネルギーを吸い取られるどころか分けてもらっているというのに。
拓馬のときの千倍くらい鬱陶しい。
「だぁーめよ、つけるまで付きまとうから」
「もおー分かったよ!!つけりゃいいんでしょ!」
叔母さんの手から数珠をひったくって乱暴に首にかけた。
こんなもの、何の意味があるのよ。




