第二十九話
これでよし。
自分の布団に、枕とスクールバッグを詰めた。
これで、布団にくるまって寝ていると思ってくれたらいいんだけど。
次に、音を立てないように慎重に窓を開けて外に出た。
そろりと部屋を振り返る。叔母さんはあたしに背を向けて眠っているようだ。
ほっ。これで第一の関門は突破した。
さあ、次で気づかれないかどうか!
あたりに冷気がたちこめる。
死神さんが来た。
あたしは手を振る。一番幸せな瞬間。もうこれがないと多分生きていけない。
それが、叔母さんのせいでこんなに神経をすり減らす落ちつかないものになってしまった。
早く帰ってくれればいいのに。いつまでうちにいるんだろう?
「どうかした?」
「あっいや、なんでもない!」
あああ、背後の窓が気になる。
この瞬間にも、叔母さんがこっちを凝視してるかもしれないんだから。
死神さんがあたしの手を引っ張って、だんっと地面を蹴る。たちまち体が浮き上がった。もうだいぶ慣れたけど、手を取られたときぽーっとしてしまうのはコントロールできない。
繊細な指先だけど、ごつごつした大きな手。そこにぬくもりはないけれど、今では温かさより冷たさのほうが安心する。ひんやりした手に触れていると、心が静かになっていくのがわかる。
夜12時からのこの時間は、誰にも邪魔させない。
死神さんを独占できるんだから。
仕事が終わって、再びアパートに戻ってきた。
最後の難関だ。
体を見せないように壁に隠れて窓をそろそろと開ける。
勇気を出して部屋を覗いた。
よっしゃあ!寝てる!
叔母さんは出て行った時と同じように、背を向けて寝ていた。おそらく気づいていないだろう。
最後まで気を抜かずに、ゆっくりと窓をしめ、布団に入る。寝返りをうったような体勢で中の枕とスクールバッグを出した。
うまくいった。
安心感と疲労感。
ほんとに早く帰ってくれないかな…。




