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第十六話

リストがなくては仕事が出来ない。

「今日は休みだよ、今まで一回も休んだことないんだから、ちょうどいい」

「ごめんなさい…あたしがもっとしっかりしてれば」

情けなくて唇をかんだ。

「盗むのが一番悪いよ。そんな落ち込まないで」

死神さんはあたしの横に座ると、話しはじめた。

置いている手が触れそうでどきどきする。

「死神が見える人間は、リストを悪用しないと判断された人間なんだ」

そんなの初耳だ。

でもあたし、そんな立派な人なのかな?

とてもそうは思えない。

「大抵の人間は、リストに親しいものの名前が載っていると破ろうとする。リストにも魂みたいなのがあって、自分に牙を剥くかどうかは分かるんだ」

あたしは真剣に聞いていた。

死神さんの声は直接心に入ってくるような不思議な感じがある。

「たまにリストも選び間違えるみたいでね。だから今回のことが起こってる」

「悪用…されてるのかな、今ごろ」

「うーん、そうするために盗ったんだしね」

「……取り返す方法は?」

「他の死神をあたってみるよ。任せておいて」




と言ってくれたんだけど。

なんか死神さんにまかせちゃって悪いなぁ……。

何も出来ないの?あたし…

いろいろ考えてみる。

でも何も出来そうにない。

だいいちどうやって自分から死神さんに会いに行くのかさえわからない。

一番身近な死神の居所も分からないのに、リストを盗んだ死神が探し出せるとは到底思えない。




夜。

頭をすっきりさせようと思って散歩していた。

もうだいぶ涼しい。冷たい風と虫の声でだいぶリラックスした。

死神さんといるときは、寒いから長袖を着ているくらいだ。

「さむっ!」

いきなり冷たい風が吹いた。

って、これは…

「死神さん?」

振り返ると、黒いローブの人影があった。

こんな時間にくると思っていなかったので焦る。

あ、あれ?

死神さん縮んだ?

「…ちがう…」

死神さんじゃない。

女のーーー死神。

死神だと直感でわかる。

フードから豊かな赤い巻き毛がこぼれている。

女の死神があたしをじっと見て、ニコッとした。

妖艶な表情にどきりとする。

濃くて長いまつ毛に目が離せない。

死神ってみんなこんな綺麗なのか…。

真っ赤な唇が動いて、あたしに話しかけた。

「あなたね?この地区の助手は」

これ、やばいよ。

本能的に危険を感じて迷わず走り出した。

逃げろ!逃げろ。逃げないとーーー殺されそう。

やだ追ってきてる!

誰か来てーーー、死神さん。

助けて。このままじゃあたしやばい。



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