表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/46

第十四話

幸せとはこのことをいうんだろう。

最近のあたしはまさにこんな感じ。

もう心配することはなくて、かつ毎日大好きな人に会える。おまけに運もいい。今日は五百円を拾った。


「名塚どうしたのー?」

「体育館シューズ忘れた!取りに行ってくる」

ふう。いくら運が良くても不注意はカバーしきれないな。

シューズを取って教室を出ると、拓馬が鍵を持って待っていた。拓馬は委員長だから。

「あ、ごめん」

「いやいいよ」

後ろの方で他のクラスの子が拓馬くんと話してる、いいなー、無造作ヘア最高などと言っているのが聞こえる。

「最近寝てんの?」

う、また死神関連のことか。

拓馬には死神の仕事についてひととおり話してある。

ちゃんと信じてくれたから、やっぱすごいやつなんだと思う。

「寝てるよ!楽だから!30分くらいで終わるし」

「ふーん、ならいいけど」

「保護者みたいな言い方じゃん!」

こうして笑って話すこともできるようになった。

なりゆきで体育館まで一緒に行った。幼馴染だし、別に特別なことじゃない。でもすれ違う人に、カップルだと思われてるようだ。やめてほしい。

拓馬と歩いてると騒がれるんだな。有名人だから。

死神さんと歩いてても、騒いでくれるのは拓馬くらいだ。

やだ、拓馬と死神さんを比べるなんて、どうかしてるよあたし…。

格が違うから!




今日も仕事を終えて上機嫌でアパートに戻った。

出入りはいつも部屋の窓からする。一階でよかった。

音を立てないようにそーっと開ける。これがなかなか時間がかかるんだ。

通れるくらいにまで開けて、後ろを向いてブロック塀に置いたリストを取ろうとする。

「!?ないっ!リストどこにいったの!?」

下を見てもない。

誰かが取って行ったなんて…そんなわけない。

リストは死神とその助手にしか見えない。拓馬みたいに死神が見える人間でも見えないのに。

でも、いくら探しても見つからない。

「どうしよう~」

泣けてきた。泣きながらアパートのまわりや近所をリストを探して何周もした。

けれども一向に見つからない。

ふとある考えが浮かんだ。

他の死神か死神助手が取って行ったということはないだろうか?

それなら納得できる。

そこにあったものが消えるなんてことはないのだ。必ず何かが手を加えたから消えたのだ。

あんな重いものは風で飛んだりしない。

猫やカラスも興味を示さないに違いない。

もうそうとしか考えられない。

盗まれたとしか。

でもあたしの不注意だ。慣れてきて油断が出ていたんだ。

なんで塀の上に置いたんだろう!!脇に挟むとかしておけば気づけただろうに。

最初のころは、リストに対して恐れを抱いていた。

この小さな本に人の運命が詰まっているんだ。そう思っていたから、仕事で持ち歩いているときは一秒たりとも体からはなしたことはなかった。

バカ。くっっそアホ。あたしのアホ!!!

信じられない。

あんな大事なものをなくすなんて。

死神さんになんていったらいいの。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ