第2話 ひよこ鑑定士
さて、どうしたものか。パルクールをしながらガラケーを開き電話帳から助けてくれそうな人脈をあたる。
十字キーを連打しながら、建物の壁をリズミカルに登攀していく。
世界的に名の知れたパルクール集団「ヒューマンエゴフォックス」の依頼で欠けた人員の代わりに全身クロタイツで代わりに動画配信デビュー飾った時から見てもさらに磨きがかかったテクで駆けていくがやはり後方から迫り来るターミネーター系女子高生との距離は保つどころか縮まっていっている。
そんな所で電話帳にてかつての同僚を発見する。
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・・・
⬜︎都庁のAndrew
た
⬜︎只野 太郎(ひよこ鑑定士)
・・・
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「只野さんなら・・・!」
発信を選択し、1コール、2コールそして3コール直前に声が聞こえる。
「只野です。お久しぶりです。田中さん」
「田中です。依頼がありまして、標的と場所は今から伝えます。可能ですか?」
只野 太郎。田中が以前ひよこ鑑定士のアルバイトを行っていた時であった際の同僚であった。
しかし、彼には前職が存在する。それは暗殺者である。それも世界中のあらゆる組織の依頼を受ける仕事人であり、12年の活動中受けた傷は1回であり、それも切り傷一回。さらに規格外なのはその素顔はどの組織にも割れる事はなく、ただただある日見た動物バラエティーでひよこの魅力に気づいてしまったことが彼の仕事人生に終止符をうったのだ。それから勉強を重ね初生雛鑑別師の資格を獲得して晴れてひよこ鑑定士となった。
「もう看板を下ろして長いですからね、ただ田中さんのお願いですからね...」
鋭い衝撃波が先ほど頭があった場所を通り抜ける。咄嗟に耳を折り畳み塞がなければ聴覚にダメージを負っていたことだろう。
「田中さん。逃げ足速いですね。ただその程度では逃げきれないですよ?」
「場所をメールで送りました。いつでもシフト開けれますので。では」
「遺言は届けられたようで、良かったです。それでは死んでくださいね♪」
0.5秒、心臓の1ノックよりも早くその端正な顔立ちが自身の視界を3割支配する。
女子高生の左足が右足を軸に地面から離れ――
――だが、それはフェイントだ。一歩すり足で距離を詰めて右フック。
距離を開けてかわしたいところだが、間に合わない。相手の身体能力は軽く人間のそれを越えている。
右フックが捕らえた顔面は女子高生側にやや傾く。頭から背筋通してつま先までの一筋を保つその力を除き脱力したことによってやや前方に傾いた重心に従い体は倒れ込もうとする。
「止まれ」
その言葉に女子高生の体は一瞬強張り、そのまま宙を舞う。
「安心したよ、これは対策されていないみたいだ」
「な、に...を......」
そのまま崩れ落ちるかと思われたが落下寸前体制を整え三転着地のようにして地面にて顔を上げる。
視界にあるのは標的の男ではなかった。
広がる砂粒。目つぶしだった。
それと同時に感覚を支配したのは、横から急な衝撃だった。
肺の空気を全て吐き出し、今度こそ地面を転がる。
「戦車より頑丈みたいだ、一体何製なんだい? その体は」
「...…っ」
深呼吸で体の緊張を解き、呼吸を整える。
「対戦車ライフルを受けて地面を転がるだけだなんてすごいよね。ただ銃弾が消えたように見えたよ。ちなみに何回でも耐えられるのかい?」
状況を理解したらしい表情に一瞬同様の色が浮かんだのを見て、そのまま踵を返した。
「どこにっ!」
「いやー、まだ業務中なんだよね。君はその状態で次弾を避けられるの?
君が今何人を相手にしているか考えた方がいいよ。君は強いみたいだけど
この世の範疇を越えているわけではないみたいだし」
「あ、でも」一瞬振り返り言葉を続ける。
「逃げたいっていうんだったらしがらみを捨てて私と一緒にアルバイターにならない?
断るんだったらそこまでなんじゃないかな。彼に依頼しちゃったから」
「もちろん、着いてきてくれるなら依頼は打ち切りだよ。どうする?」
その表情は葛藤と絶望の入り乱れたもののまま頷き、再度電話を手にして、左ポケットのボタンを押す。
それと同時にアルバイター田中の姿の謎の女子高生の姿は完全に消えてしまった。




