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第九十話:手配書

「殿下、あと少しでロザリオ侯爵領にございます。」


「おぉ、ようやくか。」


ギリアス・ガルグマク大公「今は謀反人」はロザリオ侯爵領近くまで来ていた。ギリアス一行は馬車を走らせつつ、今後の事について側近のムファサがギリアスに進言をした


「殿下、万が一ロザリオ侯爵が我等の謀反に気付いた時の事を考えねばなりません。」


「またその話か。」


「あの男は油断が出来ません。必ずや我等を捕らえます!」


「心配ない、仮に余の謀反を知っていたのであれば領境に兵を差し向けるであろう。だが侯爵領には兵がおらぬ。」


「し、しかし!」


「くどいぞ、ムファサ!これ以上、余計な事を言えば・・・・」


ギリアスは懐からナイフをチラつかせるとムファサはそれ以上は何も言わなかった


「余はまだまだ諦めぬぞ。」


殺伐とした雰囲気の中でギリアス一行はロザリオ侯爵領に入部したのである






「そうか、大公が領境に到着したか。」


謀反人ギリアス・ガルグマク元大公がロザリオ侯爵領近くに現れたという知らせがアルクエイド、アシュリー、ユリアの下へもたらされた


「御苦労だ、引き続き監視しろ。」


「ははっ!」


隠密が下がった途端、3人は気を引き締めた思いで臨んでいた


「とうとうやってきたか、謀反人め。」


「兵を差し向けるのですか!」


「落ち着きなさい、アシュリー嬢。向こうもそれを覚悟してロザリオ侯爵領へ参ったのですから。」


アルクエイドがそう呟いた途端、アシュリーは兵を差し向けるのかと気になって話し掛けるとユリアから落ち着くよう宥めた。我に返ったアシュリーは顔を真っ赤にさせ恥ずかしそうに「とんだ粗相を致しました」と謝罪した


「まぁ、アシュリー嬢の気持ちも分かる。私とて奴等をどう料理するか考えているのですから。」


「どのように考えてるのかしら、アルクエイド?」


「そうですね。まずは様子見ですな。」


「あら、すぐにはやらないのね。」


「ええ、ですが手を打ちます。まずは手配書を領内に配ります。」


「手配書とは・・・・既にできているのですか。」


「ええ。」


アルクエイドが鈴を鳴らすとジュリアと侍女たちが手配書を持って現れた。テーブルに手配書を置くとアルクエイドは手配書を確認した


「如何にございますか、旦那様。」


「うむ、上出来だ。」


「閣下、拝見しても宜しいでしょうか?」


「どうぞ。」


「はい、では。」


アシュリーは手配書を拝見するとそこにはギリアス・ガルグマク本人の似顔絵・特徴・馬車の種類・生死問わず等が記載されており、懸賞金も付いていた


「いつの間にこのようなものを・・・・」


「母上から大公が謀反を聞いた時に念のために作ったのですよ。」


「領民に捕えさせるのですか?」


「ええ、それだけではなく騎士や役人にも命じて街道に検問所を設けます。奴がロザリオ侯爵領に入った事を知らせてね。奥深くまで誘い込み、捕縛します。」


「貴方も随分、狡猾になったわね。」


「褒め言葉として受け取っておきます。」


アルクエイドはジュリアたちに手配書を領内に配るよう命じた。命を受けたジュリアたちは手配書を持ち「失礼します」と返答し退出した


「さてと我等は獲物がかかるのを待ちますか。」


アルクエイド等が作成した手配書は警備にあたっていた騎士&役人とロザリオ侯爵領の領民たちに配られた。領民たちは早速、自警団を組織し山狩りを開始、騎士たちは街道に検問所も設けられ警備にあたっていた。手配書の効果は良くも悪くも広く知れ渡り、ラーニャとラフィットの耳にも入ったのである


「ラフィット、これはチャンスよ!」


「ちゃ、チャンスって?」


「決まってるでしょ!手配書の男を捕まえるのよ!」


それを聞いたラフィットは呆気に取られたが、すぐに我に返りラーニャを諫めた


「お姉ちゃん、僕たちは子供だよ!」


「それが狙いよ!向こうもまさか子供だから狙われないと思っているわ!」


ラーニャは自身が子供である事を武器に大公ギリアスに近付き、ナイフを突き立て捕らえようと考えていた。ラフィットは浅知恵を巡らす姉の姿を見て背筋が凍りついた。子供ながらに失敗すると悟ったのである


「お姉ちゃん、辞めようよ。」


「止めないで、ラフィ!」


「ばれたら、怒られるよ。」


「弱虫なあんたは留守番でもしてなさい!」


「お姉ちゃん。」


「貴族になるチャンスよ!」


根拠のない自信を持つ8歳の(ラーニャ)を止められなかったラフィットはすぐにアルクエイドに知らせようアルクエイドの下へ向かった。それよりも先に2人を監視していた隠密が先に到着しアルクエイド等に報告した。報告を受けたアルクエイドはうんざりとした気持ちであった


「あの小娘が・・・・」


「本当に手のかかる娘ね。」


「閣下、今すぐにでも止めましょう!」


「待ちなさい、アシュリー嬢。あの娘を放っておきなさい。」


「で、ですが御母堂様!」


ラーニャを止めようとするアシュリーに放置するようユリアは止めにかかった


「あの娘は貴族になりたいという願望を優先してアルクエイドの忠告を無視した。ラーナには悪いけどもうあの娘の自業自得よ。」


「か、閣下。」


「お待ちを、母上。」


アルクエイドがユリアを制すると同時に慌てた様子でラフィットが駆け付けた


「お、お姉ちゃんを助けてください!」


開口一番にラフィットは姉を助けてほしいと嘆願をしたのである


「また何か粗相でもしたのか?」


アルクエイドが淡々と尋ねるとラフィットは例の手配書を見て自分も参加すると言い出したらしく止めようとしたが止められなかったという


「なるほど。」


「お願いします!お姉ちゃんを助けてください!」


涙ながらに平伏する7歳の子供の姿にアルクエイドが「はあ~」と溜め息をつくと次のように述べた


「今回だけだ。三度目はないぞ。」


「ありがとうございます!」


何度も頭を下げるラフィットにアルクエイドは「後は私に任せろ」とラフィットを下がらせた。傍から聞いていたユリアは「御人が宜しいわね」と嫌味をいわれたが無視した


「アシュリー、聞いた通りだ。今回だけは命を助ける、これは最後通牒だ。」


「アルクエイド様・・・・ありがとうございます。」


「(私がいるのに無視とはいい度胸ね、バカ息子)」


こうして謀反人ギリアス・ガルグマクと問題児ラーニャの捕縛が始まるのであった



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