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第六十三話:かまくら

オルビア伯爵家が没落してから1週間が経過した。アンははつらつした表情で仕事をしており、やはりオルビア伯爵家の存在が彼女にとって重荷となったのだろう。まあ、そんな事はさておきガルグマク王国は冬の時代に到来した


「閣下、雪ですわね。」


「ええ、吹雪にならない事を祈るばかりだ。」


ロザリオ侯爵邸にてアルクエイドとアシュリーは空から雪がちらついてきた事に冬の到来を肌身で感じていた。ガルグマク王国王都は約30㎝の雪が積もり、足の踏み場に事欠く有様である。王都はまだ良いとして地方ともなると約100㎝もの雪が降るので雪かきが大変である。しかも冬は農作業が出来ないので食糧の確保が大変であり、事前に保存食作りは欠かせないのである。アルクエイドの場合は前世の記憶もあったため先人の知恵を借りて新しい保存食を作ったおかげで領地に暮らす領民たちは無事に冬を越す事ができたのである


「そういえば閣下は子供の頃、冬の時はどう過ごしていたのですか?」


「ん、そうですね。雪だるまやかまくらを作ったり雪合戦したりしていましたね。」


「兄と同じですね。」


「アシュリー嬢がどう過ごされていたのですか?」


「私は屋敷におりましたわ、外は寒いので。でも、かまくらができたら入りますが・・・・」


「左様か(意外と寒がりなのね)」


それから数日後、王都では大雪が観測され、地面には約10㎝ほどの雪が積もり始めた。雪が積もらないようにせっせと雪かきをしていたがそれでも雪は積もる積もる。ロザリオ侯爵邸でも侍女や執事や騎士たちが箒やスコップを使って積もらないように雪かきをしていた


「まさか100㎝も積もらないわよね。」


アルクエイドは大空から降り注ぐ大雪を見ながらそう呟いた。そして次の日の朝、空は見事なまでの快晴、王都では約50㎝ほどの雪が積もっていた


「約50㎝積もったな(これはかまくらを作るしかないわね)」


アルクエイドは約50㎝ほどに積もった雪を使ってかまくらを作る事にした。前世でもかまくらを作った事があり、こちらの世界でもやってみようと思ったらこちらの世界でもかまくらが存在していたのである意味、ラッキーである


「旦那様、雪かき用のスノーダンプをお持ちしました。」


「御苦労だ、ジュード。」


前世の記憶を使って作ったスノーダンプ、見た目は小型で軽量だが女性や子供でも簡単に雪かきの作業ができる代物である。当然の事ながらスノーダンプはロザリオ侯爵領の領民たちからの評判も良く、よく利用している。するとアルクエイドはスノーダンプを使って雪かきをし始めた


「ラクチン、ラクチン。」


「旦那様、ロザリオ侯爵家の御当主ともあろう御方が雪かき等と。」


「「「「「旦那様!」」」」」


「テストだよ、テスト。」


周囲の制止も聞かず、アルクエイドはスノーダンプを使って次々と積もった雪を1ヵ所に集め始め、ドーム状の山になった


「これくらい大きければいいでしょうね。」


「旦那様、後は我等が致しますのでどうかお食事を。」


「ああ、ついでに紅茶も運んできておくれ。勿論、アールグレイだ。」


「畏まりました。」


アルクエイドはかまくら作りを一旦、辞めて朝食を取る事にした。アルクエイドは朝食を取りつつ童心に帰った気分にかまくらの中で焚火に当たりながら飲む紅茶は格別である


「(楽しみだな♪)」


朝食を食べ終わり、気長に待つアルクエイドの下へジュードがやってきて「かまくらが完成致しました」と告げた。アルクエイドは「待ってました」と意気揚々と外へ向かうとそこには立派なかまくらが完成していた


「おおお、これは圧巻♪」


「旦那様、アールグレイ茶を御持ち致しました。」


「御苦労だ、アン。お前たちも御苦労であった。」


「「「「「ははっ(はい)」」」」」


「ジュード、組み立て用のテーブルの用意は?」


「既に済ませております。」


アルクエイドは早速、かまくらに入るとそこには焚火があり、中は広々とした空間だが暖房のように温かかく座れるように絨毯が敷かれその上に組み立て用のテーブルが置かれていた


「これぞ、かまくら♪」


アルクエイドは早速、絨毯の上に座り用意された紅茶(アールグレイ)の入ったティーポットをテーブルに置いた。ティーカップに注ぎ、飲む至福の一杯にアルクエイドは「これぞ冬の醍醐味」と呟いた。外から覗いていたジュードは「(いくつになっても子供だな)」と童心に帰る主をなんだかんだ微笑ましくみていた。するとそこへマリアンヌが現れた


「失礼致します。旦那様、アシュリー様が参られました。」


「ん、アシュリー嬢が?まあいいや、ここへ通しなさい。」


「畏まりました。」


それから数分後、防寒具に身を包んだアシュリーがアルクエイドの下へ向かうとそこには立派なかまくらが出来ており、中からアルクエイドが出て来た


「ごきげんよう、アシュリー嬢。降り積もった雪の中の訪問、どうされましたか?」


「あ、あの閣下、これは?」


「見ての通り、かまくらですよ。」


「本当に作ったのですか!」


「ええ、中に入ってみますか?広いですよ。」


「は、はい。失礼します。」


アシュリーは恐る恐る中を入ると広々とした空間があり、中は温かく焚火があり、アルクエイドが座っている場所には絨毯が敷かれていた


「さあ、お座りください。」


「は、はい。」


アルクエイドに促されるように絨毯の敷かれた場所に座るアシュリー。アルクエイドがアシュリーの分のティーカップを持ってくるよう命じた。待っている間、アシュリーが目の前にある焚火に当たりながら昔を思い出していた


「かまくらなんて久しぶりです。」


「いつ以来ですか?」


「子供の時以来です。」


「私も童心に戻った心地ですよ。」


「閣下って意外と茶目っ気がございますのね。」


「ははは。」


「旦那様、お持ち致しました。」


マリアンヌが持ってきたのはアシュリー用のティーカップと替えのアールグレイ茶の入ったティーポットと様々な惣菜を乗せたオードブルクラッカーが運ばれた


「御苦労、ここへ運んでくれ。」


「畏まりました。」


マリアンヌが組み立て用のテーブルに続々と料理や紅茶等が置かれた後、ジュードが「ごゆっくり」とその場から立ち去り、かまくらの中にはアルクエイドとアシュリーだけとなった

「では頂きましょうか。」


「はい。」


アルクエイドとアシュリーはオードブルクラッカーをつまみながら紅茶を一緒に飲んだ


「オードブルクラッカー、美味しいですわね。小腹によく入りますわ。」


「ええ、手軽に食べれるのが良いですからね・・・・ああ、そういえば何か用事でも?」


「ああ、そうでしたわ。閣下、実は・・・・」


アシュリーが尋ねて来たのはゴルテア侯爵領より祖父母が尋ねてくるそうである。つまりクリフ・ゴルテアの両親で、ゴルテア前侯爵夫妻である


「ゴルテア前侯爵御夫妻が・・・・あの御方たちも御息災のようですね。」


アルクエイドがそう言うとアシュリーは驚き、祖父母の事を尋ねた


「お爺様とお婆様を御存じなのですか!」


「えぇ、父が御存命だった頃に何度か。」


「知りませんでしたわ。」


「それにしても、わざわざこの時期に御来訪されるとは・・・・」


「はい、元々遠出が趣味でしたが此度私とお兄様が婚約者を決まった事で急遽、王都に御来訪されます。」


「あらま、それは大変。私も言動には気を付けねば・・・・」


「閣下、私の婚約者なのですから頑張ってくださいね♪」


「肝に銘じます。」


アルクエイドはゴルテア前侯爵夫妻が王都に来訪、しかも孫息子と孫娘の婚約者を拝見をしに来るのである。アルクエイドとしても恥ずかしくないようにしなければならないと気を引き締めるのであった


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