第六十二話:因果応報
ここは王宮の広場、今日も王族・貴族たちの夜会が行われていた。勿論の事だがアルクエイドや周囲のお歴々から絶縁されたオルビア伯爵家は病を理由に欠席していたのは言うまでもない
「やはりというか何というか結局、来ませんでしたね。」
「そうですわね。」
夜会を欠席したオルビア伯爵家にアルクエイドとアシュリーの他、参加したお歴々も内心、来なくて良かったとホッとしていた
「やあ、アルクエイド殿、アシュリー嬢。」
「ごきげんよう。」
「ん、あぁ、ウルスラ殿、ナビエ夫人。」
「ごきげんよう、モンテネグロ侯爵閣下、御夫人。」
そこへウルスラ&ナビエ・モンテネグロ侯爵夫妻が訪れた
「いやあ君は本当に話題が尽きない男だね♪」
「ウルスラ殿、皮肉を言いにわざわざ参られたのですか?」
「いいえ、此度ばかりはオルビア伯爵の自業自得というべきものだ。君が絶縁状をオルビア伯爵家に送ったのを機に親戚筋たちがこぞって絶縁状を叩き付けたんだ。親戚筋のお歴々もオルビア伯爵家の事を快く思っていなかったからね。」
「その点については同感だ。」
ウルスラの言う通り、アルクエイドがオルビア伯爵家に絶縁状を叩きつけた事がきっかけでオルビア伯爵家の親戚筋の家々がこぞって絶縁状を送り付けた事にオルビア伯爵家の評判は芳しくない事を世間に公表する形となった。ウルスラに続いてナビエも続けて意見を述べた
「改めて人は見た目にはよりませんわね。オルビア伯爵は愛想だけは良かったから何も知らない方々からは未だに信じられないという声がありましたわね。」
「そうなのですか、御夫人?」
「えぇ、愛想の良さに騙されて交流を深めたのが失敗だったと後悔している方々がおりますわ、アシュリー嬢。」
ナビエの言う通り、オルビア伯爵家と交流を深めていた家々も此度のロザリオ侯爵家と親戚筋から絶縁されたオルビア伯爵家と付き合うのは得策ではないと考え、距離を取る家々が現れ始めたのである
「ロザリオ侯爵殿、モンテネグロ侯爵殿、アシュリー嬢、モンテネグロ夫人。」
「あら、これは宰相閣下、アルグレン侯爵令息、ごきげん・・・・」
「閣下!是非とも私を弟子・・・・」
「喧しい!(げんこつ)」
「あべし!」
そこへガルグマク王国宰相のレスター・アルグレンとその息子でレスターのげんこつを食らったセルジュ・アルグレンであった。セルジュは父親からのげんこつをモロに食らって頭を押さえていた。その姿を眺めていたアルクエイドたちは苦笑いを浮かべつつ、レスターの方へ視線を向けた
「愚息がすまなかった。」
「いいえ、お気になさらずに・・・・」
「アルクエイド殿は本当にモテモテですな(笑)」
「男にモテても嬉しくありませんな。」
「それよりもロザリオ侯爵殿、貴殿が絶縁状を出すのはナミリヤ伯爵家以来だな。」
レスターは冷徹な視線でアルクエイドを見据えた。アルクエイドはというとケロッとした表情で「そうですね」と平然と答えた。アシュリーを始め周囲の者たちも固唾を飲んで成り行きを見守っていた
「まあ、さほどの事ではありませんよ、宰相閣下。」
「はあ~、貴殿のいうさほどの事が社交界では話題になっているというのに・・・・」
「褒めても何も出ませぬよ、宰相閣下。」
「褒めてないっての。」
レスターは此度の出来事によるアルクエイドの認識ぶりに思わず突っ込んだ。アシュリーを始め周囲にいたお歴々も思わず苦笑いを浮かべ、セルジュは「流石は閣下!」と興奮しっぱなしなところ、再びレスターのげんこつで鎮められた。そんな夜会も終了しアルクエイドは屋敷へ戻るとジュードからオルビア伯爵家が放った隠密を捕縛したと報告を受けた
「それで何か分かったか?」
「ははっ、どうやらオルビア伯爵の命で動いたのではなく御令嬢の命で動いた事が分かりました。」
「どういう事だ?」
ジュード曰く、アン暗殺(未遂に終わる)の下手人はオルビア伯爵の娘であるマリとモニカの独断だという事が分かった。どうやら此度の絶縁によってオルビア伯爵家が追い詰められたのは全てアンの仕業だと決めつけ、刺客を送ったのだという
「何というかどこまでもおめでたい頭を持っているようだな。」
「して如何なさいますか?」
「当家の者に危害を加えようとしたのだ。それは私に対する敵対と同じだ。すぐに警備隊にこの事を知らせよ。」
「畏まりました。」
アルクエイドは警備隊に此度の事を警備隊に通達すると警備隊はすぐさまオルビア伯爵邸に乗り込んだ。エドワードとニカは「「何事だ(なの)」」と驚くと警備隊は「ロザリオ侯爵家の者に危害を加えようとした伯爵の御令嬢を捕縛する」と伝えるとエドワードが驚愕した
「む、娘を捕縛だと!」
「む、娘が何をしたというの!」
「ええ、オルビア伯爵閣下の御令嬢2人が刺客を送ったのですよ。勿論、刺客は捕らえております。」
「し、刺客だと・・・・」
「そ、そんなまさか・・・・」
「「お父様、お母様、助けて!」」
警備隊によって捕縛されたマリとモニカは必死に両親に助けを求めたがエドワードとニカはというと身内から犯罪者が出た事に愕然として2人の声が耳に届かなかった。そんな両親にマリとモニカは茫然とした顔で見つめた後、そのまま警備隊に御用された。その後、マリとモニカは自白薬によって罪状を認める事によりオルビア伯爵家は犯罪者を生み出した家と社交界から後ろ指を指される結果となった。当然の事ながら国王グレゴリーの耳にも届き、爵位と領地の剥奪を通達されたのである。そのショックからかニカは毒を飲んで自害したのである
「な、何故、こ、こんな事に・・・・」
貴族でなくなったエドワードは帰る屋敷と領地と家族を失い、途方に暮れていたがふとある事を思い出した
「そうだ・・・・アンのところへ行けば・・・・」
そう決めたエドワードは絶縁した娘の下へ向かうのであった
「何?アンに会いたいだと?」
「左様にございます。」
「どの面下げて会いに来たんだ。」
アルクエイドはジュードの知らせを聞き、呆れかえった。オルビア伯爵家が没落し途方に暮れたエドワードがよりにもよって絶縁した娘の下に助けを求めるとは・・・・
「ところでアンはどうした?」
「実は・・・・」
ジュード曰く偶然、庭を掃除していたアンがロザリオ侯爵邸門扉にてエドワードが姿を現したのである
「何故、それを先に言わなかった!」
「申し訳ございません。」
「門前だな、くそ!」
アルクエイドはすぐさま、門前へと向かった。その頃、門前ではロザリオ侯爵家の行儀見習いとなったアンとオルビア伯爵家が没落し今では路頭に迷っているエドワード、その周囲には他の執事や侍女や騎士たちが固唾を見守る中、門扉(フェンス越し)にて対面した
「・・・・何しに参ったのですか?」
「家が没落して行くところがないんだ。」
「・・・・因果応報ではございませんか。」
アンの口から因果応報という言葉を聞いた途端、エドワードは呆気に取られたがすぐに我に返り、怒鳴り付けた
「親に対してその口の聞き方はなんだ!育ててやった恩を忘れたのか!」
「私を育ててくれたのは母だけです。それに母と私を邪険に扱った貴方に父親面してほしくありません。」
アンから反論されるとエドワードは今度は泣き落としにかかった
「す、すまなかった。今度はちゃんとした親子の絆を深めよう!」
「・・・・結構です。もう私と貴方は赤の他人なのですから。」
「血を分けた肉親が必死で頼んでいるのにか!」
「・・・・死んだ母は貴方の事を死ぬまで恨んでいました。そのような御方を助ける道理がございますか?」
「ぐっ、この小娘が!!」
激怒したエドワードはフェンス越しをよじ登ろうとした。そこへアルクエイドが現れ、懐から投擲用の投げナイフをエドワードに目掛けて投げるとエドワードの右腕に直撃した
「ぐっ!」
エドワードはその場で倒れ、右腕に刺さった投げナイフが深く突き刺さった。その事で腕に激痛が走り、エドワードが苦しみ出したのである
「何をしておる!早くこやつを捕まえろ!」
アルクエイドが命じるとそこへ隠密が現れ、エドワードを捕縛した。エドワードはそのまま隠密たちに連れていかれた
「アン。」
「旦那様。」
アンを始め、執事や侍女や騎士たちが臣下の礼を取ろうとしたがアルクエイドは「そのままでよい」と止め、アンの方へ視線を向けた
「はぁ~、アンよ。フェンス越しとはいえ流石にあれは軽率だぞ。」
「・・・・申し訳ございません。」
「・・・・それで今の気分はどうだ、スカッとしたか?」
「・・・・はい。」
「そうか、それは良かったな。あの世にいる母御の無念も晴れたであろうな。」
「・・・・はい。」
「うむ、さてお前たち、それぞれ持ち場へ戻れ。」
「「「「「ははっ(はい)。」」」」」
その後、エドワードは警備隊に引き渡され、犯罪奴隷として死ぬまで鉱山行きとなったのであった




