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第三十話:新興貴族

「御初に御目にかかります、ロザリオ侯爵閣下。」


「こちらこそ御初に御目にかかります、ボナパルド男爵殿(うわぁ、如何にも成金を絵に書いたハゲ親父じゃん、マジでキモ。)」


アルクエイドの目の前にいる派手な貴族衣装を身につけた男の名は、フロイス・ボナパルド【年齢37歳、身長170㎝、色黒の肌、小太り、碧眼、チョビ髭、バーコードハゲ、彫りの深い老け顔、絶賛婚活中】、元は地主でワイン製造販売と高利貸し業で成り上がり、とある貴族(男爵家)から爵位を買い取り、ボナパルド男爵家を創設した典型的な成金である。フロイスは下卑た笑みを浮かべ、アルクエイドは無表情(内心は嫌悪感たっぷり)で対応した


「こうしてご高名なロザリオ侯爵閣下に御会いできて感激ですな。」


「えぇ、私も仕事柄、貴殿の事は耳にしていた。かなりの遣り手と見ましたわ。」


「いやぁ、侯爵閣下にお褒めいただき光栄にございます。」


「(ただのリップサービスだよ。)」


ポナパルド家は元は地主の家系であり、広大な盆地に葡萄畑を作り、そこからワインを製造し売買、更に高利貸しを営み、巨万の富を得たのである


「(貴族出身で成金になった私と違って、金の力で貴族の地位を得たこのキモオヤジ。さぞ、これからが大変でしょうね。)」


「閣下、御近づきのお印にこれを。」


するとフロイスは高価な菓子折りの箱を差し出した。アルクエイドは瞬時に付け届けだと気付いた


「これは?」


「私の気持ちばかりの品、些少ではありますが、どうぞお納めくだされ。」


「それは忝ない(やはり、付け届けか。)」


「んでは、私はこれにて。」


「随分と急ですな。」


「他の家々にも御挨拶に伺わねばなりませんので。」


「左様か、ジュード、お見送りをするのだ。」


「ははっ」


フロイスが去った後、アルクエイドはジュードについて尋ねた


「お前の目から見てどう思う?」


「成り上がり者故に貴族としての礼儀を理解しておりませぬな。」


「であろうな。私のリップサービスを真に受けておったわ。」


「如何なさいますか?」


「まぁ、当分は様子見だ。」


「承知しました。」


「あと、この付け届けは孤児院の方へ回しなさい。」


「畏まりました。」


それからのフロイス・ポナパルドは案の定、成り上がり者故に貴族社会のルールについては知らないようで陰で【無教養な成り上がり者】と揶揄され、それとは対照的にアルクエイド・ロザリオは先祖から脈々と受け継いだ由緒正しい名家【ロザリオ伯爵家→ロザリオ侯爵家】出身で成金ではあるが教養と品格と人脈等が深い事から社交界では評価が改められたという。その事を教えてくれたのはアシュリーの父であるクリフ・ゴルテア侯爵である


「そうですか、やはり。」


「彼の御仁は喜怒哀楽が些か激しく、すぐに表情に出ます。特に年若い令嬢を前にすると鼻の下を伸ばして凝視するほどですな。」


「もしかして、アシュリー嬢も?」


「はい、アシュリーを一目見た途端に下卑た笑みを浮かべておりました。娘がロザリオ侯爵の婚約者だと伝えると気まずそうにしておりましたな。」


「アシュリー嬢もさぞ不快な思いをされた事でしょうね。」


「えぇ、彼の御仁と比べ貴殿の見方を改めるお歴々が続々と現れましてな。」


「私の?」


「えぇ、貴殿の家系は由緒正しいロザリオ伯爵・・・・失礼、今は侯爵家でしたな。歴史のある名家で教養、品格、人脈の深さにおいてポナパルド男爵と比べ遠く及ばないとの事だ。」


「御世辞でも褒め言葉でも嬉しゅうございます。」


「それだけではない、彼の御仁は未だ独り身だとか。」


「・・・・つまり貴族の御令嬢を妻に迎えると?」


「えぇ、資金繰りに困っている貴族のお歴々、特に妙齢で見目麗しい御令嬢を探しておるそうで。」


「それはそれは狙われた御家にとっては金のある厄介者が突然、押し掛けたような同然ですな。」


「えぇ、全く。」


クリフとの会談を終わられた次の日に今度はアシュリーがやってきた


「閣下、ポナパルド男爵の事は御存じですか?」


「えぇ、御父上とその御仁の事で話を致しました。私も御会いしたが、如何にも成り上がり者を絵に書いたような御方でした。」


「私も御会いした時は2度と御近づきなりたいと心から思いました。」


「アシュリー嬢は知っておられるか、彼の御仁が婚活をしている事を。」


「勿論、私たち令嬢の間でもその話で持ち切りにございました。」


「因みにどのような?」


「大きな声では申せませんが懐事情があまりよくなく、かつ妙齢で見目麗しい年頃の御令嬢を狙っていると耳に致しました。それとは別に見目麗しくない御令嬢には一切見向きもしないとか、淑女を馬鹿にするにも程がございます。」


「仰る通りですね。それで好みの御相手は見つかったのですか?」


「幸い、これといった御相手はいらっしゃいませんわ。いくら金を持っていようとも下心丸出しの男爵を相手にするほどお歴々は落ちぶれておりません。もし御受けする家があればそれこそ物笑いの種になりますわ。」


「でしょうね。」


どうやら相手が見つかっていないようだ。フロイスがいくら金を積まれてもプライドの高い貴族たちはそう簡単には折れない。そこを見誤ったのか、婚活は悪戦苦闘しているとか。まぁ、御令嬢からすればそんな相手と結婚するくらいなら修道院に行った方がマシだと主張しているのだとか・・・・


「だとしたら私は幸運だな。」


「幸運とは?」


「ふっ、私にはアシュリー嬢という素晴らしい婚約者ができた事ですよ。」


「か、閣下(照)」


アシュリーは顔を真っ赤にしてはにかんだ。そんなアシュリーを愛おしそうに眺めつつ、ある事を頼んだ


「アシュリー嬢。」


「は、はい。」


「キスしても構いませんか?」


アルクエイドからキスをしたいと所望されたアシュリーは「ひ、人が来ますよ!」とはにかんだ


「心配いりませんよ、私の許可が入るまで人を入れるなとジュードに命じていますから。」


「よ、用意がよろしいですね。」


「構いませんか?」


「・・・・はい♡」


アシュリーの許可を下りた途端、アルクエイドとアシュリーは近付き、キスを交わした。2人はフレンチキスをしつつ、ディープキスへと移った。互いの唇を貪り合い、徐々に舌を絡ませ、唾液を交換しあった。アシュリーは「んっ!」と小さなうめき声を出しながら、アルクエイドとのキスをしあった。アルクエイドはアシュリーをソファーに優しく寝かせ、そのままキスを続けた。やがて2人は唇を離し・・・・


「アシュリー嬢。」


「アシュリーとお呼びください、私もアルクエイド様とお呼びしますから・・・・」


アシュリーがそう言うと、一瞬だけ間があったが互いに見つめ合い、意を決して言った


「・・・・アシュリー、好きだ♡」


「私もです、アルクエイド様♡」


2人は愛する人の名を呼びあい、互いにキスを交わし続けたが時間はあっという間に終わった。扉からコンコンとノック音がしたのだ。ノック音に気付いた2人は互いに照れ臭そうに距離を取った。互いに乱れた髪と服装を整えた後、何事もなかったように入るよう告げた。すると「失礼します」とジュードが入って来た


「どうした、ジュード。」


「は、はあ。」


何やら困った表情を浮かべたジュードにアルクエイドは尋ねた


「来客か?」


「はい。」


「誰が来たんだ?」


「フロイス・ボナパルド男爵です。」


その名を聞いた途端、アルクエイドとアシュリーは殺気立った。ジュードは殺気立つ2人に申し訳なさそうに頭を下げた


「ジュード、今は来客中だから日を改めろと伝えろ、良いな。」


「畏まりました。」


「全く、無粋な輩だ。」


「そうですわね。」


ジュードがそのまま部屋を退出した。アルクエイドとアシュリーはフロイス・ボナパルドという男に嫌悪感を通り越して憎悪に近い感情を抱いたのである








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