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第二十三話:行儀見習い

「行儀見習い、ヌーヴェル男爵家の御令嬢をですか?」


「ええ。」


ロザリオ伯爵改め、ロザリオ侯爵邸にてアルクエイドの母であるユリア・ロザリオが領地より駆け付けた。侯爵昇進祝いもあるが別の目的があって、わざわざ王都へ訪れたのである


「名前はマリアンヌ・ヌーヴェル、ヌーヴェル男爵の次女で年は16歳よ。」


「母上、何故我が家に行儀見習いを?」


「ヌーヴェル男爵直々の懇願よ、まあ家の事情も含まれているわ。」


「あぁ~。」


何度も言うがこの国の貴族【公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵】の大半は貧乏である。先祖代々の遺産を食い潰しつつ、貴族としての家格を維持するために日夜、節約生活を送るのが当たり前である。私のように商売を成功し家を繁栄させた少数の貴族は【成金貴族】と呼ばれ、陰口を叩かれつつも縁談の相手としては持って来いの物件であると共に場合によっては第2夫人として迎えられる事がある


「母上、先方が娘を第2夫人の座を獲得するために送ってきた事を考えなかったのですか?」


「その点は心配ないわ、その御令嬢には許嫁であるエルマンド子爵の御令息、ビスカ・エルマンド子爵令息がいるわ。我が家に行儀見習いに来るのは箔を付けるためだそうよ。」


「そうですか。」


「勿論、決めるのは当主である貴方です。私としてはどちらでも構わないのだけれど。」


「要は面倒事を私に押し付けたという事ですか?」


「どう捉えようが構わないわ。私は要件を伝えただけだから。」


「はあ~。」


「それでロザリオ侯爵殿の御存念はいかに?」


「取りあえずは相手方の状況を調べない限りは返事はしません。」


「相変わらず用心深いこと。」


「用心深さと勘の鋭さだけが私の取り柄ですから。」


「可愛げのないこと。」


「その可愛げのない息子を生んだのは他ならぬ母上ですよ。」


「まぁ~、口も達者になったこと。」


アルクエイドはユリアと親子同士の微笑ましい遣り取りをしつつ、ヌーヴェル男爵家の現状を調べた。ヌーヴェル男爵家とは広大な田畑とヌーヴェル湖【面積9.10㎢、周囲長32㎞、最大水深78.2m、平均水深42m、湖高標高657m、湧き水が豊富な貯水量を誇る天然湖】と大きな町1つと複数の農村を治める地方領主であり、豊富な農作物の他に特産品【麻織物、綿織物、岩塩、山塩、黒砂糖、乳製品、寒天、湖魚料理、りんご、みかん、蜂蜜、お茶、地酒(りんご酒&みかん酒&蜂蜜酒&乳酒)、麦芽水飴、干し柿、ハム、ジャーキー、塩漬け、ヌーヴェル焼(陶磁器)、ヌーヴェル紙(モデル:和紙)】作りに精を出し、それを売って生計を立てており他の男爵家よりも裕福であるが、ヌーヴェル男爵家も家格を維持するために質素な生活を維持しており、ヌーヴェル男爵家も他の下級貴族(子爵&男爵)は独り立ちするために行儀見習いという形で衣食住と給金を確保する事ができるため、自分の娘を侍女として差し出す事も当たり前、要は口減らしである


「これも下級貴族の運命(さだめ)ね。」


次にマリアンヌ・ヌーヴェル男爵令嬢【年齢は16歳、身長163cm、青髪ロング、色白の肌、茶色の目、細身、巨乳、彫りの深い端正な顔立ちの美少女、温厚で真面目な性格】はヌーヴェル男爵家の次女である。因みに家族構成は両親のヌーヴェル男爵夫妻、長女であるマリアンヌの姉、姉の夫であり婿養子、三女であるマリアンヌの妹がいる。マリアンヌだけではなく姉も妹も美人であり、美人三姉妹と評判である


「マリアンヌの婚家のエルマンド子爵家は・・・・こっちも地方領主か。」


マリアンヌの許嫁でありビスカ・エルマンド【年齢は17歳、身長は175cm、色白の肌、茶色の短髪、碧眼、彫りの深い端正な顔立ちの美少年、一人息子】も調べた


「こっちは・・・・一人息子故に性格に難ありね。しかも両親は息子を猫可愛がりだし。」


ビスカ・エルマンドは一人息子故に両親にこれでもかというほど溺愛され、今では我儘でマイペースな子に育ってしまった


「うわぁ~、マリアンヌ嬢、とんでもない不良物件を掴まされたわね。」


元女として同情するわ、これ。確実にモラハラじゃない。こんな男と結婚したら一生、奴隷扱いされるのが目に見えてくるわ


「仕方がない、ジュード。」


「お呼びのございますか?」


「うむ、ヌーヴェル男爵とマリアンヌ嬢を屋敷へ招待せよ。」


「ははっ。」


それから1週間が経ち、我が屋敷に遠路、ヌーヴェル男爵領からヌーヴェル男爵家当主のドルトン・ヌーヴェル【年齢45歳、身長175㎝、青色の短髪、茶色の目、色白の肌、彫りの深い端整で思慮深そうな顔立ち】とマリアンヌ・ヌーヴェルが訪れた


「ロザリオ侯爵閣下、本日は娘共々、お招きいただき感謝致します。」


「招いたのは私の方です。さて今日招待したのは他でもない。君がマリアンヌ嬢か。」


「お、御初に御目にかかります。マリアンヌ・ヌーヴェルと申します。」


「うむ、君の御父上が当家の行儀見習いにとの所望だ。」


「はい。」


「いずれは我が家の侍女として召し抱えようとは考えているのだが、どうだろうか。」


アルクエイドの提案にドルトンは気まずそうな表情を浮かべた


「如何されましたか、ヌーヴェル男爵殿?」


「は、はい。大変有難い申し出なのですが娘には既に許嫁がおります。」


「えぇ、存じております。随分と独特な個性をお持ちの子爵令息だと聞いています。」


「は、はい。エルマンド子爵家からたっての願いにございます。」


「だったら婚約を解消すれば良いではありませんか。」


アルクエイドの口から婚約解消という言葉が出た途端、ドルトンとマリアンヌの表情が曇った。やはり爵位が上の相手からの婚約話は断りづらいだろうな


「もし宜しければ私が婚約解消の仲裁をするが如何かな?」


仲裁と聞いたドルトンとマリアンヌな驚き、アルクエイドを注視した。更にアルクエイドは続けて「なんなら私が直接、エルマンド子爵家に話をつけよう。」と提案をした。ドルトンとマリアンヌは互いに顔を見合わせつつも再びアルクエイドに目線を変え、ドルトンは恐る恐る尋ねた


「仮に婚約を解消したとして次の御相手を探さねばなりませぬが。」


「それだったら私がマリアンヌ嬢に相応しい婚約者を探そう。なんなら他の御令嬢の御相手も紹介するがどうだろうか?」


「・・・・それは本当ですか。」


「ま、マリアンヌ!」


アルクエイドの提案に真っ先に食いつくマリアンヌと娘の行動に驚くドルトン、アルクエイドは「勿論」と答えた


「マリアンヌ嬢、君の婚約者は個性の強い令息だということは耳にしている。君のような令嬢をそのような者と一緒にいるよりも君の事を大切にする殿方が必ずやいる、どうだろうか?」


マリアンヌはというと昔を思い出していた。初めて会った婚約者に振り回された事を。両親に訴えても身分が上だから断りづらい事から忍従の日々だった。その日々から解放されるならとマリアンヌは意を決して答えた


「・・・・よろしくお願い致します。」


「うむ、ヌーヴェル男爵殿。貴殿はどうか?」


「ははっ、ロザリオ侯爵閣下に従います。」


「うむ、決まりですな。」


こうしてマリアンヌは行儀見習いという形でロザリオ侯爵邸に雇われた。その後、マリアンヌの婚約者であるビスカ・エルマンドの父親であるオルタ・エルマンド子爵【年齢45歳、身長176cm、色白の肌、肩まで伸びた茶色の髪、碧眼、彫りの深い端正で柔和な顔立ち、婿養子、恐妻家】を屋敷に招き、マリアンヌを行儀見習い(後に侍女)として雇い、マリアンヌとビスカの婚約解消等を伝えた


「どうだろうか、エルマンド子爵殿。」


「は、はぁ。」


「私としては悪い話ではないと思いますよ。それにマリアンヌ嬢よりも相応しい御令嬢がごまんといると私は思うぞ。」


「し、しかし、ヌーヴェル男爵家にも相談しませぬと。」


「その点は心配は御無用、既に話をつけた。」


「は、はぁ。」


「どうだろうか、エルマンド子爵殿?勿論、手切れ金に糸目はつけませんよ・・・・それとも何か不都合でもおありかな?」


「・・・・いいえ、婚約解消をお受け致します。」


「そうかそうか、流石はエルマンド子爵殿、良きご英断ですな。」


こうしてマリアンヌ・ヌーヴェル男爵令嬢とビスカ・エルマンド子爵令息の婚約は正式に解消されたのである。そしてマリアンヌは行儀見習いとしてロザリオ侯爵邸に雇われた。侍女の服装に身を改めたマリアンヌはアルクエイドに挨拶を述べた


「旦那様、右も左も分からない未熟者ではございますが、何卒よろしくお願いいたします。」


「うむ、こちらこそよろしくな。」


こうしてマリアンヌの行儀見習いの生活が始まるのであった










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