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ー26ーメルの正体

やややっと更新できました。。

今回は会話多目でお送り致します。



襲撃事件が終わった後店に戻ったリトとオヤジさんは蝋燭の火が揺れる薄暗い部屋のテーブルに向かい合って座わり、今回の件の話をしていた。


「今日はご苦労だったな、リト。無事に護衛君がお嬢様を連れて来てくれたよ。お嬢様も気を失ってはいたが、怪我もなかった。屋敷に向けて出発するのを見届けてわしも戻ってきた。」


「いえ。ただ、襲撃者を一人も捕縛する事ができませんでした。申し訳ありません。」


「……気にするな。しかたないさ。使い魔が絡んでいた時点で嫌な予感はしていた。メルの件も間に合った様だし、お嬢様も無事だった。それで十分だ。」


オヤジさんはニカッと笑うとションボリするリトと頭を豪快にワシワシと撫でた。


落ち込んだリトを励ますのはいつもコレだった。

こうするとリトは『もう!やめて下さい!』っと恥ずかしそうにオヤジさんの手を払いのける………のだが、今日のリトは何も反応を示さずただただひたすら頭をワシワシされ続けている。


いつもと違うリトにアレ?と感じたオヤジさんがワシワシする手を止め下を向くリトの顔を覗きこもうとした瞬間、リトは勢いよく顔をあげた。


いきなりの事にオヤジさんがビクリと反応し背を反ると、リトはグイッとオヤジさんに近づき真剣な眼差しで口を開いた。



「オヤジさん……いえ、ギルバートさん、メルさんの事を教えてくれませんか……?」


リトの言葉に、オヤジさんーギルバートは驚きで見開いていた瞳をスッと一度閉じ、再び開くと動揺の無い真っ直ぐな視線がリトの瞳をとらえた。とらえられた側のリトの瞳が微かに揺らいだが、目を反らすことは無く同じく強い眼差しをギルバートに向けた。



「……ったく、いきなりどうしたんだよ。まぁ、なんかあったんだろうな。いいぞ、良い機会だから話してやるよ。」


少し見つめ合った後ギルバートはフッと笑い目を伏せながら言った。



ギルバート。

オヤジさんの本名。

いつの頃からかその名を呼ぶものはほぼいなくなり『オヤジさん』が定着した。まるで意図的に誰がそう仕向けたかの様に……。




「で?何が聞きたいんだ?」


ギルバートは机に片肘をつき手の甲に顎を乗せるとリトを見た。

話す準備が整った事を感じ取ったリトは、姿勢を正し両手をテーブルに乗せると真っ直ぐな瞳で答えた。


「……メルさんは何者なんですか?」


ギルバートは瞳を一瞬見開いたが、すぐ優しげに細めるとハハッと笑った。


「ははは、直球だなぁ!お前、何を見たんだ?」


「メルさんの左目が赤かったんです……。」


「……左目が?ああ、そうか。まぁ、お嬢様絡みだし仕方無いか……。リト、お前はそれを見てメルを何者だと思ったんだ?なんとなく分かってるんだろ?」



そう言われたリトは気まずそうに目を伏せるとそのままボソッと呟いた。


「メルさんは……魔女なんですか……?」


リトの答えにギルバートは満足そうにニヤリと笑った。

「半分正解だ。」


「半分……?」


リトがパッと顔をあげ首を傾げると、ギルバートはニヤリとしたまま言葉を続けた。



「ああ、半分だ。メルは人間と魔女のハーフブラッドなんだよ。」


「そんな事が起こるんですか……?」


「……ああ、まぁな。実際に起きたんだよ。メルは俺の親友のジェインと魔女のティアの子だ。そして、メルは魔女の力をほぼ持っていない。」


「え……ハーフブラッドだからですか?」


「わからない。ただ、母親のティアも魔女の能力をほぼ持っていないと言っていたからそれが関係しているかもしれないな。」


「……ティアさんは純血の魔女ではなかったんですか?」


「いや、ティアは純血の魔女だ。………だからアイツは家族に捨てられたんだ。」


「家族に……捨てられた?」


「ああ、ティアは魔女の能力の低さのせいで森に捨てられたらしい。」


「……そんな…。」


「まぁ、そのおかげでわしとジェインに会えたんだがな!そんで、ジェインが惚れて、結婚して、メルが産まれた。俺は良かったと思ってる。お前もそう思うだろ?」


「……はい。」


「メルが産まれてメルに魔女の能力がほぼ無いことが分かった時、わし達はメルを人間として育てていこうと決めた。魔女は瞳の色を自由に変えることが出来るがメルはそれが出来なかったからただのオッドアイだと教え、他人からは隠すことにした。赤目のオッドアイなんて変な噂が立つかもしんねぇからな。」


「じゃあ、メルさんは……。」


「……自分は人間だと思っている。だが、それでいいんだ。いつか自分で気づく日が来るかもしれないが、その時はその時だ。」



「メルさんの瞳が赤くなったのはどうしてですか?」



「ああ、魔女は瞳の色を変えることができると言ったが感情が高ぶった時と死ぬ直前は赤目に戻っちまうらしい。メルは自分で変えてる訳じゃないが……まぁ、そういう事だろうな。」


「あの……メルさんが、今回の事件の主犯格とみられる男の瞳が赤かったと言っていたんです。……魔女でしょうか……。」


「……そうか。法の改定で魔都との平和的条約が結ばれたからな……魔女がいてもおかしくない。……赤目が全て魔女って訳じゃないんだが、使い魔もいたし、おそらく魔女だろうな。」


「あと……実は、その男がメルさんの事を知っているような様子だったんです。メルさんは知らないと言っていましたが……。」


「なんだって……?……まさか……いや、男じゃないしな……。慎重に調べる必要があるな……。」


「ギルバートさん?」


「あ、いや、すまん。……リト、これから忙しくなりそうだ、協力してくれるか?」


「もちろんです。僕はなんでもやります。」


「ははは、ありがとな。さて、メルの話はもういいか?殺人ドール時代の話は前にしたし、お前が聞きたかった話は終わったろ?」


「は、はい!……あの、これから何かあるんですか?」



「ああ、例の貴族のお屋敷に行く。魔女絡みだとすると時間が無い。」


壁に掛けられた時計を見てそう言うと、ギルベルトは椅子から立ち上がった。



「リト、戸締まりと用意を頼む。」


「はい!」


返事をし店の方に駆けていくリトをギルバートは悲しげな表情で見送った。












「はぁ、全部話してやれなくてすまないな、リト。」


そして小さく息を吐き呟いた。






次回はシルヴィアちゃん出てきます。

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