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第20話 お前は僕を怒らせた

「スネイプの魔法輪リングがカナデの動きを封じたぁ!」


 立会人のカーライルが、場を盛り上げるための演出的解説を入れてくる。


 なんて白々しいヤツだ。


 スネイプに弱みを握られているのか。はたまた買収でもされたのかは知らないが、決闘において立会人が片方の味方をするなど言語道断ごんごどうだん


 だがさっきも言ったが、こういう不利な状況を打破できるだけの力があるかどうかは見極めたいところだ。


 僕の破滅を回避するために、特に信頼する仲間には強くあってもらいたい。


「カナデちゃん、大丈夫なの?」


 隣のメアが心配そうに戦況を見守っている。

 最初は敵意がき出しだったが、今はしっかり応援してくれている。


「さぁ、どうかな」


「どうかなって……」


 実質2:1だからね。

 手を貸しているカーライルの情報がまったくない以上、今の段階で勝ち負けを予測することは非常に難しい。


 ただ、魔法輪リングというのは至ってシンプルな初級魔法。

 それでカナデの動きを封じられているのだから、協力者がそれなりの実力を有していることは想像に難くない。


「あの魔法輪リング、なかなかやっかいですね。アーク様」


「ああ。切り払うにしても時間がかかりそうだ」


 ゲッティも同感のようだ。

 この勝負、どうなるかわからない。


「命乞いをすれば、これまでの非礼だけは水に流してやるが?」


「まだ、両腕は使える……っ!?」


「いいや」


 至近距離までゆっくり迫っていたスネイプに対し、上半身だけで構えを取ろうとしたカナデだったが、何故か急に力が抜けたかのように木剣を地に落としてしまった。


 状態異常の魔法を魔法輪リングの接触面から流し込まれているのか。


 おそらく、麻痺まひ系の仕込みだな。


 攻撃面では著しい成長を見せていたカナデ・アオイ。だが、防御力や状態異常耐性に関しては大きな改善がなかったようだ。


 これはいよいよ、マズいかもしれない。


「くっ……身体が……」


「もう一度言う。土下座して非礼を詫びると言うなら、この勝負はここまでにしといてやる。だが、断ると言うのであれば……」


 間近まで迫ったスネイプにあごクイされるカナデ。

 もう完全に、身体に力が入っていない様がここからでもわかる。


 カナデには、自身の耐久性能を上げる鍛錬を課す必要があるようだ。《《コレ》》が終わったら、一緒にメニューを考えてやらなきゃだな。


 ここまで、だな。


 さて……



 やるか。


 

「おおっと! ここでスネイプがカナデのあごに手をかけて……ん? あれ?」


 意気揚々《いきようよう》と解説を続けていたカーライルが足元の違和感に気付く。


「どうした? 立会人」


魔法輪リングが、私の足元にも……ぎぃやぁぁぁぁ!!」


 その程度の初級魔法、この僕が扱えないとでも?


 そしてその魔法輪リングは今、少々機嫌が悪い。


「カーライル!」


「やはりその男と面識があるようだな、スネイプ」


「し、白豚!?」


 皆がカーライルの絶叫に気を取られている隙に、僕は観客席から決闘場へと飛び降り、そのままスネイプとの距離を一気に詰めていた。


「証拠は出揃っている。貴様の負けだ、スネイプ」


「な、なにを言っている?」


 僕の威圧感にたじろぐスネイプ。


「カナデから離れろ、愚物が」


「くっ! くそが!!」


 一瞬、力の抜けたカナデを人質に捕ろうとしたが、それは無意味と理解したのだろう。スネイプはすぐに後方へ飛び、僕とカナデから大きく離れた。


「メア。降りて来い」


「はっ? 私??」


「二度言わせるな」


 混乱しているのは見て取れたが、なんだかんだ言いながらもちゃんと僕の指示どおり、観客席から降りて来てくれたメア。

 

 僕は回復系統の魔法が使えない。

 だから、カナデの状態異常を回復するにはの能力ちからが必要だ。


治癒光ライトヒール


 メアの施した淡い緑の光がカナデを包んだ。

 カナデの麻痺状態はすぐに回復した。


「あ、ありがとう……えっと……」


「私はメア。べ、別にアンタのために回復してあげたワケじゃないから、か、勘違いしないでよねっ!」


 異常回復とツンデレは同時発動しなくてもいいぞ、メア。


 だが、よくやった。


「敵は二人いた。一人は僕が制圧しておいたから、もう一度仕切り直せ」


「あの、立会人が?」


「そうだ。決闘とは言え、常に相手がひとりとは限らん。よく覚えておけ」


 本来はそんなことあってはならないはずなんだけどね。まぁ実践だとそうも言ってられないし、ひとまずこれで再試合の格好もつくだろう。


 防御がペラペラ問題はあとでキッチリ指導してあげないとな。


 とりあえず、先にヤツとの決着を着けてもらって……



 ……はぁ?



「よくわかってるじゃないか、白豚。だが勘違いするな。決闘は相手が《《二人》》とも限らんということをな!」


 ヤツの背後の出入り口から、次々と排出されてくる学園の生徒たち。その数、約二十人。いずれも知らない方々だが、ソコソコ実力者なのはなんとなくわかる。


「はーはっはっは! お前らがどれだけ俺より強かろうがなぁ! 数こそ力なんだよっ! そして最後に勝ったヤツが、すべてにおいて正義だっ!」


 わかりやすい小悪党だな。

 だが、ありがとう。これで完全に僕の大義名分は確約されたワケだ。


「人を動かせる奴が結局のところ最強なんだよっ! そういう意味で、俺は……」


「その考え方に異論はない。だが」


「!!」


「戦局の見えない愚物に、かしらは務まらん」


「な、なな……なん……だ」


「お前は僕を怒らせた。それが貴様の敗因だ」


「ひぃぃぃぃ」


 僕がこの場を完全制圧するのに、1分もあれば十分だった。

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