71話 この世界の生き物はみんな大食漢
「ふぅ、これで準備完了だな。タイラー、ずっと手伝ってもらって悪かったな」
『いや、今日は特に何もなかったからな。それにこの量を、1人で全て用意するのは不可能だろう。が、あそこからチラチラではなく、堂々と覗いているあやつらには、これでも足りんかもしれんがな』
「まぁ、クッキーにお菓子だけじゃなく、父さんの料理もあるから。お昼だってあんなに食べていたし。大丈夫は大丈夫だろう」
『どうだろうな? ……きちんと隠してあるな?』
「ああ、言われた通り、予備にマジックバックにしまっておいた」
『その話は絶対にするんじゃないぞ。ギリギリまで隠し持っておくんだ』
「分かった。何かそこまで言われると、心配になってくるな。確かにみんな、どこにそんなに入るんだってほど食べるけどさ」
『リョウが食べなさすぎるんだ。お前より小さな子の方が、よほど食べるからな。よくそれで成長できている。どこか具合が悪いということはないのか? 今度治癒師に診てもらった方が』
「いやいや、俺はこれが普通だから大丈夫だよ」
『本当か?』
「ああ、大丈夫だって。でも心配してくれてありがとう。さぁ、このままだと、堂々と覗くだけじゃなく突撃してきて、せっかく準備した物が破壊されるといけないからな。みんなを呼ぼう」
『そうだな』
午後のおやつの時間。俺とタイラーは今、庭に用意した大きなテーブルの前にいる。そしてそのテーブルの上には、俺特製のフルーツジュースハーチー入りと、朝早くから作りまくっていたクッキーや他のお菓子が、隙間なく並んでいる。
お菓子を作り終わったのは今から2時間ほど前。朝早い時間から、お昼を食べずに準備していたから、なんとか13時までに、全てのお菓子を作り終えた。
が、お菓子を作り終わったからと言って、全てが終了したわけではない。次はパーティーの準備という事で。作ったお菓子を綺麗にお皿に並べて、紙で包む物は包み。そういった準備が終わったのが、ちょうどおやつの時間だった。
俺的には、こんな8人掛けくらいの大きなテーブルに、隙間なくお菓子とジュースを並べたんだから、余裕でみんな楽しめるだろう、と思っていたんだけど。タイラーの話しを聞いているうちに不安になってきたよ。
最初は魔獣だからとか、父さんが特別なのかと思っていた。父さんは俺からすると3人前とと思われる量の食事をし、タイラーは4倍。ミルフィーとトールに至っては、自分の体の5倍はある量を、普通に食べていたんだ。
明らかに体の大きさとご飯の量が違うのに、食べた物は一体どこへ消えたのか? 初めて見た時は本当に驚いたよ。
が、それは何も、父さん達が特別ってわけじゃなかったんだ。街へ行って他の人を観察してみると、全員が大食漢だった。俺より小さい子でも2人前はぺろりと食べてしまい、男性女性関係なく、みんなが最低でも2人前強のご飯を食べるっていう。
それが1日1食じゃないんだ。3食、朝昼晩と、多少の量の変化はあるけれど。それでも毎回、平均して2人前強は食べるんだ。それなのにみんな、体型は平均的な人が多くて。
そんなに食べて大丈夫なのか? と心配した俺。が、俺にとっては地球では平均的な1人前の食事をしていたら、逆に心配されるっていう。
それからは俺がさらに少ししか食べない時は、毎回家族に心配されるようになってしまった。
そのため、今回のお菓子。タイラーの助言で、足りないと暴動を起こされるといけないから。大きめのゴミ袋と同じくらいの袋2つに、予備のお菓子を入れて、マジックバックにしまっておいた。父さんに借りたんだ。
「あ、そうそう。手伝ってもらったお礼にさ、タイラーに別にお菓子を用意してあるから、後で落ち着いたら渡すよ」
『本当か!?』
「特別製だから、楽しみにしていてくれ」
『それは楽しみだ!! しかし、いつの間に作ったんだ?』
「タイラーが手伝いで、台所にいなかった時にな」
『お前のお菓子は美味しいからな。本当に楽しみだ』
「よし、じゃあ今度こそ。みんな!! 来ていいぞ!!」
『『『わあぁぁぁ!!』』』
お菓子作りの時は、台所の窓から。庭での準備になってからは、最初は木の影に隠れながらこちらを伺っていたが。1時間くらい前からは、堂々とこちらを見てきていたみんなが。一斉にこっちまで走ってきた。
『やっと準備終わり!?』
『もう食べていいのか!?』
『い、いっぱい並んでる!!』
『完璧です!!』
『わあぁぁぁ、凄いねぇ』
『ボル君、嬉しいなの!!』
『クッキー!! クッキーのおやまは?』
『うむ、山はどこだ?』
「それじゃあ、みんな召し上がれ」
『『『わあぁぁぁ!!』』』
みんながお菓子に飛びついた。
『う~ん、ハーチーの良い匂い』
『おっ! ハーチーの甘い感じはするのに、しょっぱい感じもするぞ!!』
『え? 何それ!? どれ!!』
『このお煎餅だよ』
『ふ、ふんわりふわふわ、美味しい』
『ボル君、これ美味しいよ!!』
『わぁ、本当なの!! でも全部美味しいなの!!』
『このクッキーのおやまが、あればいいのに。そうしたらうもれられるよ』
『うむ、その通り』
「ああ、みんな。物凄い勢いで食べてるところ悪いんだけど、ちょっと俺の話しを聞いてくれるか?」
『えー、今食べ始めたばかりなのに』
『もしかしてもう終わりなのか!?』
「違う違う、まさか終わりじゃないさ。ただ、面白いお菓子も作ってあるから、それを見てもらおうと思って。それとミルフィーとトール。お前達にも別のクッキーが用意してあるぞ」
『面白い?』
『ん?』
『別?』




